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有元美津世のGet Global!

アメリカの就労ビザ(4)─ 正しく怖がろう2017.05.23


H-1Bビザ改革案
が浮上し、激震が走ったのは、当然ながらインドです。インドIT業界の売上の6割がアメリカからのアウトソースによるものといい、アウトソーシング企業のビジネスモデルに同ビザが組み込まれているわけです。インドでは業界団体だけでなく、国を挙げて米議会に働きかけ、米印(電話)首脳会談でもH-1Bビザが話題にのぼったくらいです。

ただし、インドでも「同ビザが技能に基づいて発給されるようになれば、高技能のインド人は高収入を得られ、よりよい条件で働けるようになる」という声もあります。

日本人も同じです。現制度では、企業が喉から手が出るほどほしいという優秀な人材でも、抽選に当たらなければ先に進めないのですから。実際に、何度も申請したものの抽選に通らず、あきらめて自国に帰って起業したという人も珍しくありません。

前回、法律改正にはIT企業の反発があると書きましたが、マイクロソフトやグーグルなどIT企業でもアウトソーシング企業による乱用を問題視しています。アウトソーシング企業の数撃ちゃ当たる式申請で、他の企業は必要なだけH-1Bビザを入手できないわけですから、いい迷惑です。アウトソーシング企業が何万件もの申請をしなければ、これらのIT企業に雇われたかもしれない人材も同様です。(なお、大手IT企業はビザの発給枠を増やすように訴えています。)

正しい情報を


日本人を含みH-1Bビザ取得者には「トランプによる厳格化で、最低収入が上がったらビザが更新できないかも」と狼狽えている人もいますが、具体的な収入を挙げた法案を出しているのは、トランプ政権ではなく(立法府の)3人の議員で、13万ドルと言っているのはシリコンバレー地区の民主党議員です。(現政権は共和党。)

そもそも提出されている法案には「新たにH1-Bを取得する場合」という条件付きなので、ビザ更新には適応されませんし、「H-1B社員の割合が全体の15%以上に達している企業」に限定されています。

今後、法案が審議され(各利益団体がロビー活動し)、どんどん骨抜きになるので、法案が通るころには条件が緩んでいる可能性が高いです。(最終的に改革効果はほぼなくなるという専門家もいるくらい。)

今のところ、同ビザに対して発行されている大統領令は関係省に改革案を求めるだけのものですが、議会で満足のいく改革案が通らなければ(骨抜きになりすぎたら?)、さらに大統領が発行される可能性はあります。

ビザに限りませんが、やみくもに騒ぐのではなく、まずは正しい情報を入手し(米法制度も理解し)、それに基づいて対策を練ることです。

文系はかなり厳しい


なお、文系の場合、もう何年も前からH-1Bビザを取得するのは非常に難しくなっています。本来、専門職向けビザですから、弁護士やCPAなどでないとなかなか取れないのです。(私も何人か知っていますが、ビザ取得のためにCPAの資格を取る人も珍しくありません。)

ですから、将来、アメリカで働きたいという人は、こうした背景を念頭に、大学での専攻、キャリアプランを描く必要があるでしょう。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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