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アメリカの就労ビザ(3)─ H-1Bビザ改革なるか2017.05.16


前回、書いたように
、2012年くらいからH1-Bビザの申請が急増したのですが、その背景にはITアウトソーシング企業による申請増があります。

アウトソーシング企業は、抽選に当たる確率を上げるため、毎年、社員一人に対し複数応募するのです。一番多い企業では、一社で7000以上も同ビザを取得しています。

なお、同ビザ取得数上位10社のうち6社がインド本社の会社であり、H1-Bビザの7割近くをインド出身者が取得しています。

派遣社員に置き換えられる米IT社員


IT企業だけでなく、電力会社から州立大学まで米大手雇用主が、こうしたアウトソーシング企業から技術要員を受け入れているのですが、近年、インドからの派遣社員を雇うためにアメリカ人社員(主に中年社員)をクビにする企業が後を絶たず、米国内ではH1-Bビザ制度に対する批判が増しています。

H1-Bビザは、元々、アメリカ人で埋められない職に限って外国人を雇うために発行されるものなのですが、年収が6万ドル以上であれば「アメリカ人の職を奪っていない」という証拠を雇用主は提出しなくてもいいことになっています。(給料が丸々インド人社員に渡るわけではなく、そのうちの3割ほどをアウトソーシング企業が抜くらしい。)

米労働省によるとH1-Bの4割がエントリーレベルの就労者に発給されているということで、簡単なコーディングもできない人たちも珍しくないようです。  

インド系アウトソーシング企業ではH1-Bビザ取得後、インドから社員を派遣して仕事を学ばせながら、徐々にインドに作業を移行。結局、60~95%の作業がインドの本社にアウトソースされるといいます。(インドIT業界の売上の6割がアメリカからのアウトソース。) 

それも派遣社員に仕事を教えるのはクビを通告されたアメリカ人社員で、それが退職金給付の条件(教えないと退職金がもらえない)とされているというのです。

なおインド系アウトソーシング企業には、アメリカ人社員に雇用差別で、インド人社員には所得税還付金搾取で集団訴訟を受けたり、ビザ乱用で米政府に提訴されたところもあります。

H-1Bビザ改革案


こうしたビザ制度の乱用はもう何年もの間、問題視されており、米議会でも改革を求める動きがありましたが、IT業界の反発(ロビー活動)に押され、* これまで実現しませんでした。トランプ大統領はH-1Bビザ制度の改革を大統領選の公約に入れおり、先月、大統領令に署名しました。(といっても、関係4省に見直しを求めるだけのもの。)

それ以前から米議会には議員らによって改革法案が提出されており、4月末までに提出されている4案の概要は下記の通りです。

・4案のうち2案が、H-1B社員の割合が15%以上の企業に対し、新規H-1Bビザ申請が可能な最低年収を10万ドルまたは13万ドルに。

・H-1BビザまたはL1ビザ社員が50%に達している企業はH-1Bビザ申請不可。社員50人未満の企業は適用外。

・抽選制廃止。米大卒者、院卒者、高収入者、高技能者などを優先。

・ビザの2割を社員50人未満のスタートアップ企業向けに割当。

・Lビザにも最低年収設定。

 

* 米IT企業だけでなく、インド系アウトソーシング企業も米国内でロビー活動。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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