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有元美津世のGet Global!

和製英語に気をつけよう(28) ─ ハード/ソフトレガシー2016.12.27


今年の流行語大賞にもノミネートされた「レガシー」。小池知事就任後、東京オリンピック関連で頻繁に耳にするようになった言葉ですが、文脈からして「オリンピック終了後も利用できる恒久施設」という意味で使われているように思われます。

しかし、英語のlegacyといえば、通常、無形のもので、下記のように使われます。

 President Obama’s visit to Hiroshima was largely viewed as a legacy-building event.

 (オバマ大統領の広島訪問は、主にレガシー作りの行事と見なされた。)

日本語では「負の遺産」という表現が使われますが、legacyはいいものとは限りません。オバマ大統領に関しては、イスラエルの新聞に下記のような厳しい意見が掲載されました。

 Aleppo’s Massacred Children: The Real Legacy of Obama

 (大虐殺されたアレッポの子供たち:オバマの真のレガシー[オバマが本当に残したもの])

また、先月、亡くなったキューバのカストロ議長に関しては、下記のような記事が。

 Hero or Tyrant? Castro leaves a mixed legacy.

(英雄か暴君か?ガストロが残したレガシーには正負両面あり。)

 

Olympic Legacy


オリンピックに関しては、legacyは下記のように使われています。 

How London’s Olympic legacy is reshaping the city

(ロンドンのオリンピックレガシーは、どのように同市を再形成しつつあるか)

60 years on: Legacy of the Melbourne Olympics celebrated

(60年が経ち:メルボルンオリンピックのレガシーの祝い)

 

 調べてみたところ、Olympic Legacyについては国際オリンピック委員会(IOC)が”What is Olympic Legacy?”として具体的に定義しているのです。

 

 Olympic legacies generally fall into five categories—sporting, social, environmental, urban and economic—and can be tangible or intangible.

  Tangible Olympic Legacies can include new sporting or transport infrastructure or urban regeneration and beautification which enhances a city’s appeal and improves the living standards of local residents.

オリンピックレガシーは、通常、スポーツ、社会、環境、都市、経済の5つのカテゴリーに属し、有形でも無形でもかまわない。有形のオリンピックレガシーには、都市の魅力を高め、地元住民の生活水準を向上させる新たなスポーツインフラや輸送インフラ、または都市再生・美化などがある。


日本では「オリンピックレガシー=恒久施設、有形のもの」という意味で使われているような印象を受けますが、無形のものでもいいわけです。

日本でも、有形のものと無形のものを区別するよう「ハードレガシー」「ソフトレガシー」という表現が使われるようですが、英語ではhard legacy, soft legacyは通じません。Tangible(有形)、intangible(無形)を使いましょう。

なお、ジャパンタイムズ紙では「”hard” legacy, “soft” legacy」として“”をつけて使用している記事がありました。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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