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有元美津世のGet Global!

語学力よりも環境適応力2016.12.20


クルーズ
でペナンに寄港したときのこと。船に戻る際に市バスに乗ると同じ船の人たちが二組乗っていました。一組はTriviaでいつも見かけるオーストラリア人母子。もう一組はカナダからの女性二人組でしたが、船の出港に間に合わないのではないかとパニックっていました。行きはHop-on Hop-offバスに乗ったらしいのですが、帰りは1時間半かかると言われ、帰船の時間に間に合わないので市バスに乗ったそうです。

私は2月までペナンに半年滞在していたので、ペナンは熟知。乗車したバス停から港までは30分で行けることはわかっていたので「間に合うから大丈夫」と言っても、心配そうに(バスの後部席に乗っていた私に大声で)「ここから何分?」と聞く始末。「5分で着く」と言っても「運転手は20分かかるって」と心配でたまらないようでした。
が、私が言ったとおり5分で着き、二人を船のターミナルまでエスコートして、ちゃんと時間内に船に戻れました。

私はバスを降りてから船まで、その女性とおしゃべりしていたのですが、彼女の友人はバスに乗っているときからニコリともせず、スタスタと一人でターミナルに入っていきました。「彼女歩くの早いね」と私がいうと女性は「彼女怒ってるんだよね」ということでした。
その友人は、今回、初の海外旅行で、「現地の人の英語が聞き取れない」「現地通貨に対応できない」など慣れない体験をする度にイライラしていたそうで、その日の「出港に間に合わないかも」事件で、とうとう堪忍袋の尾が切れてしまったようです。「彼女、多分、今後、二度と海外には行かないかも」ということでした。

初めての海外旅行で中近東やインド訪問は敷居が高かったとは思います。でも、無事に出港に間に合ったのですから、ハラハラした体験は笑い飛ばし、「間に合ってよかった」と喜べばいいのではないでしょうか。(たとえ船に乗り遅れても、次の寄港地クアラルンプールまではバスで数時間。飛行機なら1時間弱。飛行機はパスポートなしでは乗れないかもしれないけど。)

 

語学ができなくても


一方、私と船の客室が同じ階(デック)だった英語のできないスペイン人一家。私がスペイン語ができるので仲良くなり、寄港地についていろいろ質問されたりしました。

クラン(Klang)に寄港したときのこと。ぼったくりで悪名高いクアラルンプール(KL)のタクシーですが、港に簡易(定額)チケットカウンターを設けていたので、ぼったくりはないかと思ったら、近くの駅までは乗車拒否。クアラルンプール市内までしか走行しないということで市内に行かない人が続出しました。(私はスーツケースを預かってもらうのに市内の友人宅までUber利用。ただし30分待ち。)

そうした中、8歳の子供を連れたスペイン人夫婦はカタコトの英語で「5米ドル払うから駅まで連れていって」と港でヒッチハイクしたとのこと(臨機応変で問題解決能力に長ける!)KL市内ではチャイナタウンで偽ブランド品を買いまくって「この時計は5ドル。サングラスは8ドル。偽物に見えないでしょう」とご満悦。8歳の息子までが「この(偽ブランド)Tシャツ、友達のおみやげに買ったんだ」と満面の笑みで次々に買った物を見せてくれました。

アジア初訪問の英語のできないスペイン人が旅行を楽しみ、英語ネイティブのカナダ人が遭遇することすべてに腹を立てたというわけです。(ちなみに、どちらも中年。)

海外旅行を楽しめるか、異国の地に対応できるかは、語学力とは直結しないことがわかりますね。語学力よりも環境適応力、柔軟性の方が大事だと思います。いくら言葉ができても適応できなければ、旅行にしろ生活するにしろ、苦しいだけです。

こういうのは生れつきの性格に寄るところも大きいでしょうが、旅慣れること、国内外にかかわらず危機に陥っても切り抜ける経験を重ねることで、自信がつくものです。「海外で羽ばたきたい」という皆さんには上記のカナダ人のような人はいないでしょうが、海外赴任や海外就職の前に、できるだけ場数を踏んでおくと力になるでしょう。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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