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有元美津世のGet Global!

バイリンガル教育(3)─ 多言語国家の苦悩2016.06.07

マレーシアには「マレー語も中国語も英語もできる」という人たちは多いのですが、すべての言語がペラペラという人は少ないのです。非マレー系はマレー語を第一外国語として、英語を第二外国語として学びます。

 

これまで、小学校から英語を学んでいるのに英語をまったく話せない人や話せてもブロークンな人たちの話を書いてきましたが、マレー語も、非マレー系の場合、話せるといっても、難しい話ができるほどではない人たちが結構いるのです。

 

同時に、母語でも読み書きができないという人たちもおり、とくに華人に多く見られます。クアラルンプールの友人夫婦は広東語や福建語は話せますが、ミッションスクールに行ったので、学校で中国語を習っておらず、中国語の読み書きはできません。

 

彼らがペナンに遊びに来たとき、福建料理や客家料理を作ってくれたのですが、その時に使ったインスタントの調味料の調理法が中国語でしか書かれていなかったので、「何分調理すればいいのか、読める?」と私に聞いてきました。

私も中国語が読めるわけではないですが、飛び飛びに漢字の意味はわかるし、「何分」かくらいは読めます。彼らは漢字は、まったく読めないのです。

 

この夫婦は、読み書きは英語でしかできません。旦那さんの方はイギリスの大学を出ているので英語の新聞も読めますが、奥さんの方は高卒で英語のボキャブラリーが限られているため、新聞をちゃんと読みこなせないのではないかと思います。実際、彼らの家に泊めてもらった際、本や雑誌類を一切、見かけませんでした。

彼女の友人は華人ばかりで日常会話は広東語なのですが、読み書きは、スラスラとはいえない英語でしかできないのです。

 

活字を読まない

 

私がマレーシア滞在中に気がづいたのは、地元の交通機関はもちろんのこと、飛行機内で本や雑誌、新聞を読んでいる人がほとんどいないことです。

 

「スマホで読んでるんでしょ」と思う人もいるかもしれませんが、そう思ってのぞいてみると画像や動画、SNSを見ている人はいますが、文章を読んでいる人は少ないのです。

誰もがスマホを持っているデジタル時代でも、欧米人旅行者は本を読んでいる人は多いですし、アメリカ国内でも本を読んでいる人は今も結構います。実際、この原稿も米国内の機内で書いているのですが、ちょっと見渡す限りでも本や雑誌を紙媒体で読んでいる人、電子書籍を読んでいる人が何人もいます。(ただし、アメリカの場合、活字を読まない人は、まったく読まないので、差が激しいです。)

 

日本でも、東京や大阪では地下鉄などで本を読んでいる人は各車両で必ず数人はいますし、学校帰りの小学生でも本を読んでいるのを見かけるときがあります。

マレーシア線機内で「珍しく読者をしている人がいる」と思って見ると、日本人だったりします。一方、ベトナムの長距離列車では、本を読んでいる若者を何人か見かけました。

マレーシア教育省による2005年のアンケート調査では、マレーシア人は年に平均2冊しか本を読まないそうです。もっとも読書量の多いマレーシア人でも年に8~12冊だそうです。

 

セミリンガル?

 

言語学的に「セミリンガル」「ダブルリミテッド」という概念があります。第一言語がちゃんと身につかないうちに第二言語を習うと、深い思考ができなくなるという現象です。ひょっとすると、マレーシアでは多言語環境が文章読解力に影響しているのかもしれません。

 

「バイリンガル」というと会話にばかり注目する人が多いですが、文章読解力は学習能力に直結するので非常に大事だといえます。(たとえば、マレー語を外国語として学んだ華人やインド系が、マレー語で他の科目を学習するのは負担であり、不利であろうかと。)

さらに、将来、プロフェッショナルの世界で仕事をしていくには、ビジネスレベルの読み書き能力が必要です。

 

「英語さえ話せれば、将来、安泰」かのように英会話力に過度の期待をかけている親御さんには、こうした落とし穴があることも留意していただきたいと思います。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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