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有元美津世のGet Global!

バイリンガル教育(1)─ 教育移住の目的2016.05.24

 

久々にマレーシアの話に戻ります。

日本でも小学校からの英語教育が始まり、英語熱は高まるばかり。「今時、英語くらいは話せないと」と幼児期から子供を英会話スクールに通わせる親御さんも増えているようです。

「グローバル社会で生きていけるよう」「多様性に触れさせたい」と幼児期から海外の学校に行かせる人もいます。「日本(やシンガポール)に比べて低価でインターナショナルスクールに行けるから」「英米に留学するよりも格段に安い」と一時、マレーシアのインターナショナルスクール(以下「インター」)が人気でした(今も?)。「教育移住」という言葉すら生まれ、父親は日本に残って母子だけ移住するという極端なケースもあるようです。

 

アジアのインター信仰

 

「インターナショナルスクール=欧米人の子息が通う学校」を思い描く人が多いでしょうが、マレーシアでは、そうしたインターは少数派で、多くはマレーシア人児童が通っています。以前、紹介したように公立学校の質の低下や英語力低下を嘆く地元の親たちに、インターは人気なのです。

 

 日本の教育ママなど足元にも及ばない中華圏のタイガーママ(彼らに言わせるとインド系の親の方がすごいらしいが。)「教育のためなら、お金は出す。自分は犠牲を払ってもいい」という親が珍しくないアジアは、旧宗主国イギリスの私立校にとって大市場なのです。マレーシアだけでなく、中国やタイ、ベトナムなどアジア各地に進出しています。(不動産販売のようにショッピングモールで応募者を勧誘する学校も!)

 

ただし、マレーシアのインターは質も学費もピンキリで、英語ネイティブの教師が多いほど学費は高く、安い学校では教師は英語ネイティブではないというケースもあるようです。(学費が安いと高い給料を払えず、いい教師を雇えない。)

 

実は、私の元大家さんの息子さんも一人、インターに通っているのですが、ばりばりイギリス英語かと思ったら、発音だけでなく言い回しもマングリッシュでした。

なお、彼は家に帰ると100%中国語の世界です。家族同士では福建語で話し、家で見るテレビや映画は中国語のものばかりです。(借りていたマンションのケーブルTVも中国語とマレー語のみだったので、英語の番組は追加しなければならなかった。)

 

英語力だけでは食べていけない

 

「教育移住の目的は何なのか」にもよりますが、英語習得が目的であれば、ただ安いからといってわざわざ英語圏ではないマレーシアに行く価値があるのか?と思わぜるを得ません。「英語だけでなく中国語も身につけさせたい」という理由なら、まだわかるのですが。

「ネイティブのような発音」にこだわる人も多いですが、まずマレーシアでは、その習得は難しいです。英系の学校で教師はイギリス人であっても、一歩、学校を出ればマングリッシュの世界です。

 

また、キャリアのための英語であれば「ネイティブ並みの発音」だけでは食べていけません。それだけでは英語のネイティブと同等なだけで、グローバル市場では世界に何億人といる英語ネイティブと競うことになります。これといった専門スキルのない英語ネイティブは、自国で職を探すのに苦労しています。

 

大事なのは発音よりも、話の中身と「英語を使って何ができるか」--専門知識やスキルです。何度も言っているように語学は単なるコミュニケーションの手段なのですから。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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