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マレーシアの頭脳流出(2) ─ 多民族国家の苦悩2016.03.22

 

前回、マレーシアの頭脳流出要因となっているのが、マレーシア政府のマレー系優遇政策と書きました。流出の最大の理由には「キャリア展望」が挙げられましたが、これもマレー系優遇政策によって非マレー系のキャリアパスや就職の選択肢が限られるので、最大の要因はマレー系優遇政策といえると思います。

 

マレー系優遇はマレーシア独立当事から憲法でうたわれていたのですが、1969年に起こったマレー系と華人間の対立による暴動がきっかけとなり、1970年代に新たな経済政策として具体的なマレー系優遇枠が設けられました。

 

国立大学入学、政府奨学金授与、公務員採用でのマレー系優遇、マレー系にだけ適用される不動産価格割引、その他、上場企業はマレー系資本が30%以上(現在は12.5%)であること、政府調達入札はマレー系企業に限定など、優遇措置は多岐にわたります。

 

こうした政策は、マレー系が人口の60%と多数派でありながら経済は人口30%の華人が牛耳っていたため、都市部で商売をする華人と地方で農業に従事するマレー系との経済格差を埋めて、人種間対立を和らげ、国をまとめるのが目的でした。1990年までに企業資本の30%をマレー系で占めることを目標とし、その後、同政策は廃止される予定でした。

ところが40年経った今も、同政策は続いており、「多数を占めるマレー系の票を集め、50年以上続く政権を維持するために与党によって利用されている」と政治不信を招いています。

 

この政策により政府にコネのあるマレー系は富を築き、またマレー系の大学進学率は上昇したものの、大半の一般マレー系市民は大した恩恵も受けることができず、貧富の差はさらに拡大しています。同時に、縁故主義(cronyism)や汚職をはびこらせる要因ともなっており、非マレー系の不満は高まり、昨年の選挙の際は一触即発状態でした。

 

成績がよくても大学に入れない

 

国立大学への入学はマレー系が優先で、非マレー系ではオールA(優)でも国立大学に進学できないという生徒が、毎年、続出します。(そうした優秀な生徒にシンガポールや海外の大学が奨学金を提供し、頭脳が流出。)2013年に国立大学に合格した華人は全体の19%、インド系は4%のみでした。(非マレー系より成績の悪いマレー系が合格する。)

高い学費を払って私立大学を卒業しても、公務員や政府関連企業への就職はマレー系が優先で、就職できたとしても昇進もマレー系が優先されるといいます。

 

マレーシアの華人やインド系が海外に移住するのには、こうした背景があるのです。

また、他国と比べ、マレーシアでは若年時に海外に移住する人が多い傾向があるのですが、国内の教育水準の低下も頭脳流出の一因と考えられています。マレーシアの国立大学でアジアの大学トップ100に入る大学はないのですが、それは「入学選考が成績ベースで行われていないため」と批判されています。

 

一方、海外に移住するマレー系も増えていると言われており、それには、こうした教育への不満や政治不信のほか、イスラム教の厳格化への懸念もあるようです。マレー系として生まれれば自動的にイスラム教徒となり(マレー系とみなされるための条件のひとつがイスラム教徒であることと憲法でうたわれている)、イスラム教の戒律に従うことになりますが、近年、その縛りがきつくなっていると言われています。宗教の自由は憲法で保証されているものの、イスラム教徒はイスラム(シャリア)法によって裁かれ、実際には(他宗教徒との結婚のためなど)他宗への改宗は不可能で、公的に改宗するには国外に出ざるを得ないようです。

 

さて、なぜ私がマレーシアの頭脳流出の話をしたかというのは次回…

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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