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有元美津世のGet Global!

マレーシアの頭脳流出(1) ─ 海外を目指す大卒者2016.03.15

 

さて、話はマレーシアの話に戻り…

私がペナンで借りていたマンションの大家さんの息子さん(27歳)は、昨秋、イギリスの大学に留学しました。彼はマレーシアの短大を卒業した後、家業を手伝っていました。

 

「イギリスで電子工学を勉強し、卒業後は海外で就職したい」というので、その理由を聞くと「マレーシアは給料が安いから」とのことでした。(中華学校卒の彼は英語がカタコトなので、ここまで英語で聞き出すのに四苦八苦。)

 

別の知人(華人)は、元々「息子にはマレーシア国外で就職してほしい」という思いから、息子さんをインターナショナルスクールに通わせ、昨年、大阪大学に入学しました。(彼は幼少時代を日本で過ごしたので、日本語も堪能。)

 

「子供には海外の大学を出て、海外で就職してほしい」と願う親は、マレーシアに少なくありません。子供を中華学校に通わせる親には、「将来、中国や台湾の大学に進学してほしい」という人たちもいます。

 

また、昨年、私立大学4校の学生を対象にしたアンケート調査では、経済的に可能であれば、7割以上が「留学して、卒業後は留学先で永住権を取得したい」と答えました。留学を希望する理由はキャリアのためで、半数近くが留学希望先として旧宗主国のイギリスを選びました。

 

悪化する頭脳流出

 

2011年に世界銀行が発行したマレーシアに関する報告書のテーマは「頭脳流出」(brain drain)で、経済成長を脅かす要因として問題視されました。*

 

2010年時点で、海外居住マレーシア人は少なく見積もっても100万人に達し(総人口の3%。日本は1%)、その3割が頭脳流出と見られ、20年前に比べると3倍に増えています。マレーシアの場合、とくに高技能が少数のエリート層に集中しているため、頭脳流出度が他国に比べ激しいということです。(頭脳流出によって高技能の人材がさらに減るので悪循環。)

 

頭脳流出が一番多い職種が弁護士、会計士、薬剤師などの専門職で、次に看護師や証券仲介業者など、そして管理職が続き、この3カテゴリーで6割以上に達しています。

また、渡航先としてダントツなのが隣国のシンガポールで、移住先、頭脳流出先の半数以上を占めています。すでに知識集約型経済、高所得国となっているシンガポールでは、同じような仕事に対する給料がマレーシアの2.5倍といわれています。

 

マレーシア人が海外に移住する最大の理由は「キャリア展望」で、次に「社会的不平等」と「報酬」が続きます。さらに、近年の通貨リンギットの暴落、政治スキャンダル、人種間対立、教育水準の低下が海外移住に拍車をかけており、私も周りのマレーシア人(主に華人)から「国の将来が心配」という声をよく聞きました。

 

「社会的不平等」というのは、マレーシア政府のマレー系優遇政策のことであり、マレーシアを後にする人たちの大半が華人であることが物語っているでしょう。次回は、このマレー系優遇政策に関して詳説します。

 

 

* 頭脳流出の定義は、「大卒以上の高技能者が永久に就職するつもりで高等教育を受けた国とは別の国に移住すること」。なお、頭脳流出は中所得国で顕著であり、アジアでは東南アジアに多く見られる現象。低所得国では経済的に渡航が困難。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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