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有元美津世のGet Global!

マレーシアの英語(3)─ English Crisis(後)2015.12.15

 

(英語よりも)マレー語推進派には「日本は英語ができなくても経済大国になったではないか」という人もいたそうです。ただ、日本がマレーシアと大きく違う点は、人口が1億人以上の日本には大きな国内市場があったため、大半の日本人は日本語だけで稼いでこれた点でしょう。マレーシアの人口は3000万人で、今後も増え続けると予測されているものの、25年後の2040年でも4000万人に達しない規模です。

 

小さな中進国のマレーシアは、海外からの投資額ではアジアで5位(一番投資しているのは日本)。海外投資を促す上で優秀な人材、とくに英語ができる人材は不可欠でしょう。さらにマレーシアでは、マレー系以外の(華人・インド系)企業の多くは英語ができない人材には興味がありません。

 

ところが、英語力不足で採用不可になる応募者が増えており、経済界からも「英語で自己紹介すらできない新卒が増えている」「1980年代には大半の新卒がちゃんとした英語を話していた」「就職できない新卒が20万人いるのは英語力不足が一因」「このままでは外国人を採用せざるを得ない」と不満が募っています。

 

エアアジアのCEOも「英語力が落ちたためにマレーシアは競争力を失った」とツイートしていましたが、国際競争力の低下が憂慮されています。(競争力を失った理由は他にもあり。)

 

「最近では、英語教育にあまり関心のなかった日本までが英語教育に力を入れ、英語を社内公用語にする企業も出てきている。このままでは日本にも抜かれる」という人までも(日本は投資元なので、そこの英語力が伸びるのはマレーシアにとってマイナスではないはず。)それよりも、インドネシアやベトナムなど周辺諸国の英語力が伸びていることは脅威でしょう。

 

巻き返しなるか?

 

経済界からの突き上げもあり、今年、マレーシア政府は国民の英語力増強のための特別チーム(task force)を設置しました。来年には、小学校での理数系科目はマレー語以外に英語で教えることも許される試験プログラムも始まります。さらに、引退した英語教師などをリクルートし、低所得者向けに無料英会話講座も提供される予定です。

 

マレーシアでは教育政策が数年ごとにコロコロ変わるので(10月に発表されたインドから英語教師を招聘するという計画は11月にすでに棚上げ)、どうなるかわかりませんが…

 

国の競争力は英語力だけに依るわけではなく、世界的に52位(OECD調査)でOECD平均以下というマレーシア児童の理数能力の方が問題だと思うのですが、理数系科目を英語で教えないことをその原因とする向きが多いようです。隣のシンガポールは1位で、「シンガポールのように一貫して英語で教えるべき。英語学校を復活させよう」という声も聞かれます。

 

「教育は何語でするのか」というのは、多言語・多民族国の抱える課題なのですが、これについては政治も絡むので、後日、詳しく。

 

 

<余談>

「マレーシアの英語はすごい」という人たちがよく引用するEF English Proficiency Indexがありますが、あれは語学学校のサイトで受講に興味のある成人(中央値28歳)が受けたオンラインテストの結果です。つまり、すでに英語習得済みの人は対象外。(中国返還後、英語をしゃべれない人が増えたとはいえ、香港の英語力が韓国、ベトナム、日本より下なわけがない。)

ちなみに、私はマレーシア人よりもシンガポール人の方が英語はうまいと思いますし、東南アジアで英語が一番うまいのは、上記アンケートでは対象外のフィリピン人だと思っています。(フィリピンでは、理数系科目は英語による教授。)

どこの国でも統計の数字が一人歩きするのですが、統計やアンケート結果は対象者や調査方法を理解して初めて意味を成すもの。これも、学校で叩き込んでほしい。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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