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有元美津世のGet Global!

新たな組織体制作り?肩書きなしの企業2014.07.08

    前回、紹介したザッポスですが、同社は、今年初め、新たな組織体形を導入して、肩書き(title)や管理職(manager)をなくすと発表し、米国内で話題となりました。 

    ザッポスが取り入れる「ホラクラシー」(Holacracy)という組織構造では、権限が分散され、全員が自分の役割のリーダーとなることで、より効果的に問題が解決でき、究極的には会社の目標を達成できるというものです。トップダウンでもボトムアップでもなく、両方の利点を取り入れており、「サークル」と呼ばれる社員から成る委員会のようなものが、人ではなく仕事・機能をベースにいくつも形成され、それによって組織が自主管理されるということです。社員は複数の役割を課され、複数のサークルに属することになります。 

    これに対して、「人間はヒエラルキーなしでは生きていけない動物だ」「マネジャーが任命されなくても自然にリーダーが生まれる」といった懐疑的な意見が寄せられました。 

    日本でも、ザッポスが取り入れるのは「ヒエラルキーのない民主的な管理・組織システム、役職が存在しないフラットな組織体制」と紹介されました。私も、最初は「また(何十年前から試されている)フラットな組織作りか」と思いましたし、「すべて合意による意思決定をしていたら時間がかかって仕方がない」とも思いました。 

    ところが、ちょっと調べてみると、ホラクラシーというのはフラットなわけでも民主的でもないようです。ホラクラシー体制の考案者自身が「ホラクラシーは合意を基にした民主的組織ではない。組織が決定を下すのに個人の合意を求めることはない」と言っています。 

    元々、ギリシャ語の”holos”から生まれた「ホラーシー」(holarchy)とは、上意下達のヒエラルキーとは構造が違うものの、階層構造には変わりなく、フラットではないのです。ホラクラシーでは、権力・権限の分散方法に関しては「ホラクラシー憲法」(ルールブック)で細かく規定されており、たとえば下位のサークルの目的や責任は上位のサークルが修正する権限を持っています。 

    マネジャーもいないわけではなく、社員に一定の役割を任せたり、役割から外したりする役割の人たちはいます。「上司がいないので評価もされない」と思ったら大間違いで、周りの社員から「この役割に不適格」と判断されれば、その役割から降ろされたり、どの役割も与えられず干されるケースも出てくるわけです。

    肩書きナシの組織は可能か?

    企業が肩書きをなくすという試みは、アメリカではザッポスが初めてではありません。80年代、複数の大企業の生産現場で主任(supervisor)クラスをなくすという試みが行われましたが、半年ほどしか続かなかったそうです。そうした肩書きをもっていた社員には、「一生懸命働いて得た肩書きを失うなら会社は辞める」という人が出たり、自主管理できない社員が続出したそうです。 

    人間というのは、肩書きがない場合、年功、労働倫理(働きぶり)、売上など自分を他人と差別化する点を他に探すそうです。また、自主管理と簡単にいいますが、できる人よりも、できない人の方がずっと多いと思います。


    ザッポスの場合、社員は1500人ほどですし、元々、ユニークな企業風土を持ち、そうした風土が好きでカリスマ的なCEOの価値観を共有できる社員が残っているわけですから、こうした自主管理体制も可能かもしれません。 

    同社では、今のところ社員の10%ほどが新体制の下で働いており、全社が移行するのは、今年12月(それまで社員研修)なので、その後、具体的にどういった形になるのか明らかになってから、また考察してみたいと思います。

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    この記事の筆者

    有元美津世

    大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
    著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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