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有元美津世のGet Global!

留学の投資対効果(ROI)2014.06.24

    先月、留学の話に少し触れたので、留学関連の話を少し。 

    近年、日本では「若者が内向きになり、海外への留学生数が減っている」という批判をよく聞きますが、まず、いつも比較されている留学人数が絶対数で、割合で表示されているのを見たことがありません。分母である若者の人数が減っているのですから、割合で比較しないと減っているのかどうかわかりません。 

    マスコミでよく使われる数字は、留学生数が2004年にピークに達し、その後、減少を続けているというものですが、留学適齢期人口における留学生の割合を調べた(中小企業診断士協会の)サイトによると、2008~2009年では1990年代に比べ増えており、2005年比では落ちたものの、2000年と同等とのことでした。 

    また、「アジア他国と比べて日本人留学生は減っている」とも言われますが、中国やインドのように人口が日本の10倍の国と絶対数を比較しても意味がありません。新興国と成熟国の違いもあります。 

    とくに、中国やインドの場合、留学後、アメリカで就職して永住権、市民権を得ることを目的としている人たちもいますし、すでに当地に家族親戚がいる人たちも少なくありません。元々、海外移民志向の高い国民と単純に比較できるものではないでしょう。(短期滞在であれば、たいていの国にビザなしで簡単に入国できる日本のパスポート保持者には、観光でさえもビザの取得が必要である国の人たちの苦労、先進国の永住権・市民権取得に対する執着は理解できないものです。)

    留学生数が主に減っているのは対アメリカ

    日本からの留学生数が減っている先は主にアメリカ(およびイギリス)なのですが、これまで見てきたように(大学を出ても職がない(7)--大学進学の投資対効果(ROI))、アメリカの学費がこれだけ高騰しているのですから、奨学金でももらえない限り、一般庶民がアメリカに正規留学するのは、不可能に近いのではないかと思います。(なお、私の知り合いでで私立の大学に通っている学生は皆、在学中に提携大学に交換留学しています。) 

    私は、日本で大学を卒業後、働いて貯めたお金でアメリカに留学しましたが(英語屋は海外では通用しない! )、今であれば学費が高すぎて行けませんでした。(それで「内向き」と批判されても…) 
    私がビジネススクールに行った頃はMBAブームで、それも「MBAといえばアメリカ」でした。その後、日本国内にもビジネススクールは増えましたし、アメリカのビジネススクールより短期ですむヨーロッパのビジネススクールも人気が出ました。(ビジネススクール(4) - イギリスのビジネススクール) 

    日本企業からの企業派遣留学生も、当時に比べて減っています。学費の高騰もあり、会社を辞めて私費で留学した場合、学費や生活費だけで2000万円ほど、働けない間の機会費用(opportunity cost)も含めると数千万円になります。 

    それ以前に、ビジネススクール自体、以前ほど人気がなく、アメリカ国内でもMBAの価値が問われている時代です。「MBAに、それだけの価値があるか?」と留学を断念する人がいるのは無理のないことです。 

    なお、アメリカの2010年の留学生数は、2000年比、絶対数では伸びたものの、世界でのシェアは大きく落ちました。 

    ビジネススクールに限らず、「大学を出ても職がない」シリーズで見たように、アメリカ人自身が大学進学の価値を疑っている中、もっと多大な投資をしなければならない留学生がROIを気にするのは当然で、20~30年前の物差しで評価しても意味はないでしょう。

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    この記事の筆者

    有元美津世

    大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
    著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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