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有元美津世のGet Global!

大学を出ても職がない(4)--営利大学の台頭2014.04.08

    前々回、学位の大量生産に触れましたが、アメリカの場合、その一因に、90年代に爆発的に普及した営利大学(for-profit college)の存在があるでしょう。ときどき「営利大学って何ですか?」と聞かれることがあるのですが、for-profit collegeというのは、企業が営利目的で運営する大学のことで、日本の「株式会社立大学」に相当します。「働きながら学位を取得したい」「キャリアチェンジしたい」「スキルアップしたい」という社会人を主にターゲットにしており、アメリカで一番有名なのは、アポログループが所有するフェニックス大学(University of Phoenix)でしょう。


    昔は技術に特化した職業訓練校だったのが、営利大学が流行り出してから(私の知らないうちに)、学士号を出す大学になったという例もいくつかあります。

    政府資金頼みの営利大学

    アメリカでは、こうした営利大学に入学する学生の大半が連邦政府から学資ローンや(経済的に支援が必要な学生向け)学資補助を受けており、過去10年、この金額が急増しました。今では営利大学に(学生を通じて間接的に)流れる連邦政府学資ローンは年220億ドル、給付金は年70億ドルに達しています。実に、営利大学入学の学生の9割以上が学資ローンを借り(公立のコミュ二ティカレッジでは13%のみ)、ほとんどが連邦政府の学資援助を受けているのです。


    しかし、営利大学を卒業しても、入学前に宣伝されたような職に就けなかったり、給料を稼げなかったりするケースが相次ぎ、結局、学資ローンだけが何万ドルも残って、就職もできず、ローンも返済できないという卒業生が増えました。雇用側も「営利大学よりもコミュ二ティカレッジの方が優れている」という見方が強いようです。(私も、そう見ます。)


    それどころか、2012年の政府調査では、2008~2009年の営利大学入学者の半数以上が卒業せずに(準学士課程では63%)、入学後4ヶ月(中央値)で中退したという結果が出ています。


    求2010年時点で、営利大学の学生は大学生総数の13%を占めるに過ぎないにもかかわらず、政府の学資補助や学資ローン受給者の25%を占め、また不履行の学資ローンの半数近くに相当しました。


    これまでは個々の卒業生が営利大学を詐欺などで訴えるケースがありましたが、今年に入り、連邦政府や州政府が営利大学を訴え始めました。また、米教育省は、卒業生の学資ローンの不履行が高かったり、ローン返済額が所得を基準以上超えたりすると、営利、非営利に関係なく職業・技術教育専門の教育機関を対象に、連邦政府の補助金は使えないという新たな規制を施行する準備をしています。つまり、卒業生が学資ローンの返済ができるだけの職に就ける(gainful employment)だけの大学にのみ、税金が使われるようにしようということです。

    サブプライム問題並み

    元々、営利大学というのは、従来の大学には経済的事情などで行けない学生に「教育の機会を与える」というのが大義名分なのですが、多くの営利大学の学費は、公立大学はもちろんのこと、私立大学よりも高いというのが現状です。学費が年間2万5000ドルという営利大学もあります。  


    一番学費を払えない層の人たちが、一番高い学費を払って、一生学資ローンを背負い(連邦政府の学資ローンは自己破産しても消えません)、結局、踏み倒して、ツケは納税者に回るという仕組みなわけです。


    これは、不動産バブル崩壊、金融危機につながったサブプライム住宅ローン問題に似ており、アメリカでは「次に崩壊するのは学資ローンバブル」という声もあります。(今、バブルは他にもいろいろ生じているので、次に崩壊するのは学資ローンではないと思いますが。)

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    この記事の筆者

    有元美津世

    大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
    著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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