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グローバル化するということ(5)― 言わなければわからない2014.02.25


    文法的には、まったく問題はないのに、メールにしろ会話にしろ、日本人の英語が相手に伝わらなかったり、誤解されてしまうケースがよく見受けられます。それが論理の飛躍ともいえる点に起因していることが多々あります。 
    たとえば、下記の英文です。 
    My son’s school is having a sports festival tomorrow. I have to make packed lunches (or bento) for 5 people! (明日、息子の学校で運動会があるので、5人分のお弁当を作らないと。)


     日本の習慣をまったく知らない人に、この文を見せても、「運動会がある」「お弁当を作る」という2つの文のつながりがわからないのです。というのは、「運動会にお弁当を作って持っていく」という習慣がないからです。(すべての国にないとは言い切れませんが。)
     こう言うと「いちいち説明しないといけないのか、面倒くさい」という人がいるのですが、そうなんです、異文化間コミュニケーションというのは面倒くさいのです。


    たとえば、外資系企業にはつきもののjob description(職務記述書)ですが、これは、その職に就いた人が「しなくてはならないこと」「しなくてよいこと」の責任範囲を明確にするものです。契約書も同様ですが、仕事を人に任せる際には、信じられないくらい細かい記述が必要なのです。 

    ハイコンテクスト文化


    70年代に、米人類学者が、世界の文化をローコンテクスト文化とハイコンテクスト文化とに分類しました。ローコンテクスト文化では、コミュニケーションは言葉を中心に行なわれ、直接的でわかりやすい表現、明確な論理が好まれ、北ヨーロッパの多くやアメリカ(ただし南部はハイコンテクスト)などが、ローコンテクストの文化と考えられています。

     

    一方、ハイコンテクスト文化というのは、コミュニケーションを言葉以外の共通の認識や価値観に依存する部分が大きく、直接的な表現は避けられ、事実や論理よりも感情や直感が重視されて、また人間関係を重視する傾向にあります。アジア、中近東、アフリカ、南米、南欧などがハイコンテクスト文化と考えられていますが、中でも日本は非常にハイコンテクストな文化と位置づけられています。「以心伝心」「あうんの呼吸」「空気を読む」というのは、まさにハイコンテクスト文化の表れと言えるでしょう。


    ただし、ハイコンテクスト文化の人同士でも、それぞれの文化背景、共有の認識や価値観は違うわけですから、「これくらい言わなくてもわかるだろう」「一を聞いて十を知れ」などと期待するのは無理な話です。


    実は、これは日本人同士だからといって可能なわけでもなく、日本の50代の知人が30代の部下に対して、「○○しろと言ったのに、ちゃんとできてない。一から十まですべて言わないといけないのか...」とぼやいていました。同じ日本人でも、世代が違えば(地域が違っても)経験や価値観は共有されてないことは多々ありますので、やはり誤解を避け、仕事を効率よくはかどらせるには、すべて言わないといけないと思います。(というより、思っているほど、日本人同士でもわかり合えていないのではないかと。)


    「グローバル化するということ(1)(2)」でも書いたように、共通の認識のない人たちと隣人として暮らしたり、同僚として働いていく上で、共通の認識に基いたコミュニケーション方式というのは障害となり得えます。とくに英語でコミュニケーションを図る際には、大半の日本人の場合、「これでもか」というくらい細かくはっきり説明してちょうどいいでしょう。

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    この記事の筆者

    有元美津世

    大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
    著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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