【目の前の仕事を大事にして道を拓く】
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元・外資系人事部長、現グローバル人材育成プロデューサーの鈴木美加子です。日々の仕事をエンジョイしていますか？ それとも面白い仕事ではないと嘆いていますか？

今日は、Where there is a will, there is a way. (意志あるところ道は拓ける) の実例をお届けします。

私の友人は、その昔メガバンクに就職しました。一般職の女性は育ちの良い人しか採用しない企業で、女性に職場で活躍してもらうことは考えていなかったはずです。彼女の配属先は、役員の秘書。役員専用のフロアーで、お茶汲みとコピー取りしか仕事がなく、5ヶ月後に完全に飽きてしまい「この環境から出る」と決意します。

問題はどうやって抜け出るかです。コピー取りをする時には、内容に目を通して少しでも理解できるようにと努力はしていました。あとはお茶汲み。

彼女は、社外の人で役員フロアーに出入りしている人は、実は限られていることに目をつけます。大勢の人が出たり入ったりしているわけではなかったのです。まず、緑茶派なのかコーヒー派なのかを記憶します。ここまでは他の方でも思いつきそうですが、彼女が凄かったのは、一人一人の好みを覚えて聞かないで出せるようにしたことです。緑茶は薄いのが好きなのか、コーヒーのお砂糖とミルクはいるのかどうかなど、全部覚えて2度目に同じ方が来訪された時に好みの飲み物をお出ししたわけです。

効果テキメンでした。役員秘書の方でそこまで出来る方は他にはおらず、役員と役員のお客様の間で話題になる人になれたのです。「彼女はそもそも、どういうバックグラウンドなの？」 と知りたがる人が出て。帰国子女枠で日本の大学を卒業している英語に全く問題ない人材であることがわかります。

こうして彼女は、一年後にロンドン駐在を射止めます。一般職の女性初の海外駐在が、お茶汲みに端を発していることは私たちに勇気を与えてくれます。仕事は工夫次第でレベルアップできるし、努力を見守って評価してくれる人は必ずいるのです。目の前の仕事がどんなに些細に見えても、ベストを尽くす意味があると教えてくれます。

目の前の些細な仕事と言えば、私にも思い出す実例があります。アジア・パシフィック本部で人事をしていた時のことです。年間の業績ボーナスが出る頃で、シンガポールに出張していたマーケティング責任者から「金額が確定したら、ホテルの留守電にメッセージを残して知らせて欲しい」と言われました。

「なんでメールじゃダメなんだろう？」と思いましたが、相手は偉い人なので仰せのままにすることにしました。問題は英語で桁数の多い金額を、正確に伝えられるかです。正直、自信がありませんでした。

仕方がないので、ホテルに帰ってきた彼を思い描いてこんな留守電を残しました。

1.「ボーナスの金額が確定しました。今から金額を3回言いますので、まずは紙とペンを用意してください」
ホテルの電話のところに、ペンまで必ずあるとは限らないので取りに行く時間を作りました。いきなり数字をペラペラ話されたら、相手は最初からもう一回聞き直すことになります。

2. One million two hundred thirty-four thousand five hundred sixty-seven
ちゃんと伝わったかどうか、我ながら自信がありませんでした。

3. One カンマ Two Three Four カンマ Five Six Seven

4. 「最後に数字だけを並べます」ご本人にとっての確認です。
1 2 3 4 5 6 7

さすがに伝わっただろうと電話を切りました。彼は出張後、私の上司に「ミッキーをウチの部署に欲しい」と言ってくれました。ウチの部署とはマーケティングで、私は自分に向いていないと知っていましたし人事を極めると決めていたので、有り難く辞退させていただきました。あの時、マーケティングに異動したいと私が考えていたら、夢は叶ったと思います。当時の私は異動を狙っていたわけではなく、「お金のことなのでちゃんと伝わらないとまずい」という責任感から、丁寧な仕事をしたのだろうと思っています。

仕事には楽しいものも、ルーティンでつまらないと感じることの両方があります。「楽しい」だけで出来ている仕事は存在しないので、工夫することでアウトプットのレベルが高くしてください。見守っていてくれる方は必ずいます。

道は拓けるので、Never Give Up! で行きましょう。

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