ギニア大使公邸で感じた、日中の不確実性回避度（UAI）の違い - ビジネス英語などグローバルキャリアに役立つ情報が満載！<グローバル転職NAVI>

元・外資系人事部長、10,000人を面接した鈴木美加子です。

週末、ギニア大使公邸で開催されたチャリティ・コンサートに参加しました。集めた古着・自転車（コンテナ2個分）を、ギニアに輸送するための輸送費を集めることが目的です。

古着はかなり集まったようなのですが、自転車はそんなに余っていないだろうし、どうやってギニア大使館まで送ったら良いのかわからない方が多く、集めるのが大変だったと伺いました。自転車が欲しい理由は、ギニアでは子供達の通学が片道5km以上であることが多いので、その負担を減らしてあげたいからだそうです。

このチャリティ・コンサートの主催は、大学時代から日本に住んでいる中国人実業家・馬さんです。彼女がどうやって自転車をたくさん集めたのかを伺いながら、ホフステード異文化6次元モデルを思い出していました。日本と中国のUAI（Uncertainty Avoidance Index = 不確実性回避度）の違いを感じたからです。不確実回避度とは、平たく言えば、「どのくらい石橋を叩きたいか」ということになります。

日本人はご想像通り UAI 92で、世界でも指折りの「予想できないことに手を出したくない、前例が欲しい、規則・構造が欲しい、慎重な」国民性です。もちろん、個人差はありますので、平均値ということになります。

中国人のUAIは30。「とりあえずやってみて、ダメなら修正すれば良い。まずは行動」という国民性です。18歳まで生まれ育った国はその方のアイデンティティを決めるので、今回のチャリティの主催者は、今でも中国人気質だと考えるべきでしょう。

このギャップのある二つが衝突するとどうなるかは興味深いです。
行動力ある馬さんは、大量に自転車がある場所はどこだろうと考えました。区の駐輪場に、誰のものかわからない自転車が置かれているセクションがあったことを思い出し、区役所に電話をします。

電話の出た方の第一声は「あなたは、外国人さんですか？」だったそうです。ボランティアをしようという志の高い人が日本人かどうかなんて関係があるのだろうかと思いますが、これが現実なんですね。経緯を説明したそうですが、埒があかないのでとりあえず電話を切ったそうです。

それならば「対面の方が良いかもしれない」と思い、実業家として多忙を極める中、区役所に出向いたそうです。「ギニアの子供達を救うために、この放置されている自転車をいただけないでしょうか？」とお願いしてみましたが、けんもほろろ。「あなたが使いたいのですか？」と聞かれたり、「そんな前例はありません」と言われてしまったり。

彼女は行動力があり諦めない人なので、次に考えたのは、友人の議員さんに頼んでみることでした。私利私欲でやっているのではなく、なんとかギニアの子供達の役に立ちたい、ただその気持ちだけで行動していると理解してもらうことができたそうです。そこから先はトップダウンの世界なのか、あっという間に物事が動き、呆れるほどだったとおっしゃっていました。

こうして彼女は無事に500台の行き場のない自転車を無駄にせず、手に入れることができたのです。お役所が規則に縛られがちなのは、日本に限ったことではないかもしれませんが、議員さんからの力があれば簡単に折れるところも、UAIの高さを物語っています。自分が責任を取らないで良いということは、安心 = 着実 ＝ 大丈夫という図式になるのでしょう。

UAI度が高い日本人とUAI度が低い国の人が仕事をすると、日本人が討論したり確認作業したりすることに時間を費やし、物事がなかなかスタートしないので、相手は強いストレスを感じるのが常です。異文化の人と仕事をする際には、日本流が唯一絶対正しいと思わないことが肝心です。