Global Career Guide

外資への転職を検討するにあたり、最も大きなストッパーは、「外資はすぐクビになる」というイメージではないでしょうか。確かに、社員に辞めていただくことが発生するのは事実ですが、「すぐクビになる」は誤った解釈です。今日はその誤解を少し解きたいと思います。
まず、いわゆる“即日解雇”が行われるのは、ごく一部のIT企業や金融業界だけだと理解してください。その場合も該当する社員が慌ててどこかに駆け込むようなことは起こりません。なぜか?それは、たとえ一時的に雇用主のランクが下がっても、次のチャンスをすぐにつかめるだけのスキルや経験を持っているからです。
外資では社員は「プロフェッショナルとして契約している」という意識が強く、自分の価値を常に高め続ける企業文化があります。
少し注意が必要なのは、スタートアップや日本法人の人事担当が不在のような小規模の外資です。日本の労働基準法を十分理解していない場合があり、手続きが不十分なまま突然、海外から通知が届くこともあります。
以前も、元の同僚からシンガポールから届いたEmailを見せてもらったことがあります。そのような知らせをメールで済ませるところからして、まるで日本流ではありませんし、内容も極めてビジネスライク、しかも金銭的補償(severance package)が全くないという信じられない内容でした。
本来、日本の労働基準法では「少なくとも30日前の予告」または「30日分の給与の支払い」が必要です。何の保障もなく「明日から来なくて良い」は日本では通用しません。
信頼できる企業であれば、手厚い金銭的パッケージを提示するのが一般的です。どのくらいの月数になるかは、業界や職位によって異なりますが、マネージャークラスであれば数ヵ月分の給与が支払われることも珍しくありません。こうした制度面を理解しておくことで、外資に対する過剰な恐れはぐっと和らぎます。
また、きちんとした外資企業は法的に守られるべき立場の方、たとえば育休中や障害を持つ方を、一方的に解雇するようなことはありませんので安心してください。むしろコンプライアンス遵守の意識は日系企業以上に高く、従業員の権利保護にも非常に敏感です。
多くの外資では、解雇前に必ず「PIP(Performance Improvement Plan)」という90日間の業績改善プランを経ます。直属の上司と一緒に改善目標を設定し、達成できればそのまま勤務を続けることができます。
ただし、実際には形式的な側面もあり、私自身の25年の外資人事経験では、このプロセスを経て復帰した人はごく少数でした。PIPに入った時点で転職活動を始めた方が賢明です。
もちろん、個人の成果とは関係なく仕事を失うケースもあります。たとえば、M&Aで買われる側の企業になった場合は、間接部門や買収したかった部門以外は失職する可能性が高いです。その他にも、本社の方針で日本支社の閉鎖が決まった場合は全員が職を失うことになります。全員で同じ船に乗っているのでお互いに助け合うのは難しく、社外にどれくらい太いパイプを持っているかが物を言います。
私自身はM&Aを2回経験しましたが、幸運にも「買う側」の企業に所属していたので自分のポジションを心配することにはなりませんでした。本社の日本撤退決定を経験したこともあります。
確かに外資には終身雇用のような安心感はありません。その代わりに、社員一人ひとりが「自分の市場価値を高め続ける」ことを意識し、スキルアップや転職市場での競争力を磨く機会が多いのが特徴です。変化を恐れず、自らのキャリアを主体的に設計できる人には非常に魅力的な環境です。
外資への転職をためらっている方にお伝えしたいのは、外資は必ずしも冷たい職場ではなく「自分の力でキャリアを築く」場所だということです。安定よりも挑戦を選ぶ姿勢があれば、努力は必ず報われます。まずは自分にどのくらい専門性があるか、この先も専門性を高めていきたいかをよく考えて、外資への天職を決めるのが妥当と思います。

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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。