Global Career Guide

「報・連・相(ほうれんそう)」という言葉を聞くと、日本企業の専売特許のように感じる方もいるかもしれません。でも実は、外資系企業でも「報告・連絡・相談」は、立派に存在します。ただし、そのスタイルや求められ方は少し違います。
転職したばかりの頃、誰しも「これってどうするの?」「この略語って何?」と、質問が山ほどあると思います。社内のアルファベット3文字略語や、誰にどういう配慮をすべきかといった“組織の空気”の理解に、最初の90日が費やされがちです。
この「慣らし」期間が過ぎると、自分で判断が求められる案件に直面するようになります。外資では相談相手が必ずしも直属の上司とは限らず、「誰が詳しいか」「誰に聞くのが良さそうか」を自分で判断することになります。
そして、ここが重要なポイントなのですが ー 相談をしたら、必ず報告する。もらったアドバイスを受けて、結局どのようなアクションをとったのかを相手に伝えることが大切です。これができるかどうかで、信頼の度合いが大きく変わります。
私自身、ある大手外資系企業の人事責任者として転職した際に、この「報告」を怠ったってしまった苦い経験があります。日本法人は設立から年月が経っており、古参社員の影響力も強く、給与水準や人間関係に複雑な事情が絡んでいました。
直属の上司はアメリカ本社の社長と、シンガポールにいるAPACの人事ディレクター。彼らは日本の内部事情を知らないので、私はある日本人の役員に相談をしていました。残念ながら自分のことで手一杯になってしまい、「自分がどういうアクションを取ったのか」の報告を怠っていたのです。
ある日、別の部署の責任者から「〇〇さんが、ミッキーさんは相談ばかりで報告がないと言ってたよ」と伝えられて、ようやく気づきました。なんと失礼なことをしてしまったことか。
今、自分が人に相談される立場になって強く感じるのは、報告がないと、良かれと思ってアドバイスをした側が「利用された」と感じてしまうことです。
自分から何かを聞きに行き、その結果としてどう判断して動いたのかを報告する。それだけで相手の印象は大きく変わります。これが自然にできる人は実際はとても少ないので、印象に残りますし、「あの人は礼儀正しい、誠実だ」という評価につながります。次回、相談を持ちかけた時も親身になって助言してくれるでしょうし、好ましい人材として目もかけてくれるでしょう。
外資系の特徴の一つに、「減点主義」ではないことがあります。一度や二度の失敗は許容されます。責任感が強すぎて、うまくいっていない状況をギリギリまで報告しないのは、むしろ逆効果です。
米国本社から赴任してきたマネージャーが最初のスピーチでよく言うのが、
「Please give me a heads-up as early as possible.(できるだけ早く知らせてほしい)」という一言です。
上司が助けようと思っても、すでに炎上してしまってからではどうしようもない。だからこそ、問題が起きそうな“気配”の段階で伝えて一緒に解決しましょうというスタンスです。
結局、どれだけ優秀でも、一人で完結する仕事は少数です。だからこそ、適切なタイミングで適切な相手に「報・連・相」するスキルは、外資系でも極めて重要。
この絶妙なバランスをつかめる人は、外資の中でも「一緒に仕事がしやすい人」として重宝されます。さらに、相談後にきちんと報告することは、信頼構築の第一歩であることを、どうか忘れないでください。

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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。