Global Career Guide

外資系企業における昇進の最大の特徴は、「成果がすべて」という点にあります。年齢、性別、国籍、そして勤続年数さえも考慮されません。社内で結果を出した人には、昇進と昇給の扉が常に開かれており、そのスピードも日本企業の常識からすると驚くほど早いケースも少なくありません。
私が人事としてキャリアの中で目撃した中でも、いまだに鮮明に覚えている「ぶっちぎりの出世」のケースを紹介します。モルガン・スタンレーで、日本に駐在していた31歳のアメリカ人がMD(マネジング・ディレクター)に昇進したことです。MDは頭取の直属の部下です。わずか30代前半でその椅子に座るのはまさに異例中の異例。彼は性格的にはクセがありましたが(笑)、資金を動かす能力が群を抜いており、会社に対する貢献度が桁違いだったため、誰も異論を唱えることができない昇進でした。米系金融は、成果主義が徹底しているので可能だったとも言えますが。
もうひとつ忘れられないのは、ある外資系IT企業での出来事です。技術部門のディレクターが退職し、専門性が非常に高かったために後任をすぐに見つけることができず、暫定的に10人規模のチームをあるマネージャーに託すことになりました。任された彼は、それまでの姿勢とは一変。これまでは人事案件に関しては「人事に任せる」というスタンスだったのが、自分の部下に関わる問題には率先して向き合い、難しいメンタルの案件でも矢面に立ち、誠実に対応しました。さらに、業績不振による退職という重いテーマに対しても、人事任せにせず、上司として正面から向き合ったのです。
その姿勢を高く評価し、技術本部長に彼を1年で昇格させることをどう思うか尋ねられた際、「妥当だと思います」と即答しました。彼は1年でシニアマネージャーへ、その翌年にはディレクターへ昇進しました。わずか2年でのスピード出世です。技術本部長と「彼は本当に化けましたね」「俺たち、見る目がなかったのか!?」と語り合ったことを今でも覚えています。
その後、本人に直接話を聞く機会がありました。なぜここまで変わったのか尋ねると、彼はこう言いました。「正直、人の上に立つのは面倒だと思ってたので、マネージャー時代は猫被っておとなしくしてたんです。でも今回は責任を与えられたので、やることをやるしかなかったんですよね」
彼の答えは、外資の人事にいた私に大きな気づきをくれました。外資といえども昇進したい人ばかりではないし、与えられた責任や器によって才能が開花する人がいる、ということです。つまり、人材を見極める上で重要なのは「今の姿」ではなく、「責任を与えた時にどう変わるか」を想像することなのでしょう。
さらに印象的だったのは、昇進後の彼の言葉です。
「関わる相手の役職も上がり、自然と視座が高くなります。裁量権も増えるので、仕事そのものがどんどん面白くなりました」
外資の昇進には「このポジションに〇年在籍しなければならない」といった年功序列的なルールは一切ありません。むしろ、在籍年数や学歴といった要素は軽視され、成果がすべてです。若くして大きなポジションを任されることもあれば、逆に何年経っても結果が伴わなければ昇進の機会は訪れません。
もちろんポジションが上がれば、責任も増えます。予算のスケール、顧客のランク、求められるリーダーシップのレベルなどスケールがアップして、逃げ場はないかもしれません。その責任を引き受けるコミットメントを持つ人こそが、次のステップに上がっていけるのです。
外資系でキャリアを築こうと考える方にお伝えしたいのは、「結果を出していれば、性別や年齢に関係なく昇進できる」ということです。短期的には目の前の仕事に全力を尽くすことが大事です。誰かが必ず見ているからです。上司ではないし、同じ部署の人では無いかもしれませんが、努力している人・していない人に気がついている人は必ずいるので、適当な仕事をしないことは大事です。
あなたがもしスケールの大きな仕事を望むなら、日々の成果を積み重ねつつ、チャンスが来た時に迷わずつかむ気構えを持ってください。自分の行動次第でキャリアの方向性を決めることはいくらでも出来るのです。

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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。