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Z世代の反乱(2)–マダガスカル、モロッコ、ペルー

この土曜、全米2000以上の都市で700万人近くの人が反トランプデモに参加したというニュースは、日本でも報道されました。しかし、それ以外の多数の国で起こっている反政府デモの様子は海外メディアによるニュースの和訳が流れるくらいで、日本ではほとんど報道されないですね。

ネパールやインドネシア、フィリピンで始まったZ世代の反乱は、アフリカや南米にも広がっています。

アフリカ大陸の東、インド洋(Indian Ocean)に浮かぶ島国マダガスカルでは、9月に「Z世代マダガスカル」(Gen Z Madagascar)を掲げた抗議デモが始まりました。

元々頻繁に起こる停電と断水に対して若者の不満が噴出したのですが、その後、生活費の高騰や汚職、公金横領などに対する抗議へと拡大しました。さらに市民団体や労働組合も加わり、大統領や大臣の辞任を求める運動に発展しました。国連によると、政府によるデモ弾圧で数日間で少なくとも22人が死亡し、100人以上が負傷したとのことですが、政府は否定しています。

今月に入り、抗議に同調した軍によるクーデターが起こり、大統領が国外に脱出しました。クーデターを主導した軍人が大統領に就任し、遅くとも二年後には選挙が行われる予定です。

今回失脚した大統領も、2009年に反政府デモを率いた人物で、やはり軍事クーデターを伴いましたが、結局は汚職など、同じことの繰り返しでした。マダガスカルでは、1960年のフランスからの独立後、何度も反政府デモによって大統領が失脚し、政治危機が続いています。なお、世界銀行(World Bank)によると、人口3100万人の8割が極貧状態にあると言われています。

Z世代によるデモが急速に各国に拡大した背景に、SNSの存在があります。どこかでデモが起これば、リアルタイムでTikTokやインスタに現地の様子が投稿され、世界中に拡散するのですから。マダガスカルのZ世代は、とくにネパールとスリランカでの抗議活動に触発されたそうです。

実らなかったアラブの春

モロッコでも、9月末から医療や教育制度の改革を求める若者によるデモが起こっています。「Z世代212」(Gen Z 212。212はモロッコの国番号)と呼ばれる運動でも、ネパールと同様、ゲーマー向けDiscordがコミュニケーションツールとして使われています。

モロッコでは人口の半分が35歳未満なのですが、15~24歳の失業率は36%にのぼっており、アンケート調査では35歳未満の半数以上が「他国への移住を検討したことがある」と答えています。なお、デモ参加者の大半が18歳以下で、逮捕者の多くも未成年だそうです。

モロッコの最低賃金は月300米ドルほどで、とくに貧弱な医療態勢への不満が高まっているところに、2030年のFIFAワールドカップ用に7つのスタジアム建設と既存のスタジアム改装に50億ドルが費やされることになりました(一部の資金は民間から)。それも、こうしたインフラ建設で王室や政府関係者らが、大きな利益を得ているというのです。

2023年の地震後、未だにテント暮らしの被災者もおり、これまでも地域規模のデモは起こっていました。ところが、9月に公立病院で分娩中の妊婦が8人亡くなったことが人々の怒りに火をつけ、大規模な抗議運動へと発展しました。医療の8割以上が公立機関で提供されているにもかかわらず、国の医療支出は4割にしか満たないということです。(余裕のある人は民間の医療施設に行く。私立の病院に行けば助かる命も、公立では助からないといったことが多々。)

ケニヤでも6月から反政府デモが行われていますが、アフリカの国々はコロナ以降インフレが深刻化しており(アフリカ平均15%)、人々の生活は苦しく、貧富の差も広がるばかりです。

今回のアフリカでのデモの広がりは「アフリカの春」(African Spring)とも呼ばれ、10年以上前に中東に広がった「アラブの春」(Arab Spring)を思い起こさせます。アラブの春の結果、チュニジアやエジプトでは改革が見られたものの、モロッコは大して変わらなかったようです。

ペルーでも

南米ペルーでも、9月に年金制度の改革で18歳以上の国民全員が加入を義務付けられたことが引き金となり、若者たちによるデモが起こっています。ペルーの人口は18~29歳が27%なのですが、彼らは年金加入を義務付ける前に、経済的不安や汚職の解消などを求めているようです。

今月に入り、(支持率が2.5%だった)大統領は罷免され、来夏に行われる選挙までの間、暫定大統領(38歳の保守派裁判官)が就任しました。しかし、同氏にも汚職や性暴力の嫌疑がかけられており(支持率5%)、辞任を迫る抗議者らのデモが続いています。先週も100人が負傷しただけでなく、デモに参加していたラッパーが銃殺されました。

なお、ペルーでは過去8年で大統領が7回交代しており、政情不安や治安の悪化にも不満が募っています。前大統領時代、2022年にも大規模なデモが起こりましたが、50人が亡くなりました。ちなみに、50回以上改憲を行い権力を集約した国会(与党)も、支持率5%で国民の信用は得ていないようです。

漫画・アニメ『ONE PIECE』の旗が抗議シンボル

インドネシアやネパール、フィリピンでのデモでは、漫画・アニメ『ONE PIECE』(ワンピース)の海賊旗がシンボルと使われていました。以前から欧米のデモでも個々の抗議者によっては使われていたのですが、抵抗のシンボルとして共有されるようになったのはインドネシアでの抗議運動からでしょう。 

インドネシアでは、8月の独立記念日に政府が国民に国旗を掲げるよう促したところ、(国会議員への多額の住宅手当支給に対する)政府への抗議として、代わりにワンピースの旗を上げる人が増えたのが発端です。その後、このシンボルがマダガスカルやモロッコ、ペルーにも広がりました。

夢や信念、仲間のためなら死をも恐れないルフィの姿に自らを重ね、各国の若者は、国は違っても「我々は、腐った政治家に対して同じ闘いを戦っている」という思いを共有しているのです。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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