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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(11) – Inclusive

前回、例文で紹介したTourism for Inclusive Growth”ですが、この”inclusive”は、“Diversity & Inclusion”(多様性と包摂)や“Diversity, Equity and Inclusion”(多様性、公平性、包含性)という形で、名詞”inclusion”としても、よく使われます。しかし、”inclusive””inclusion”ともに、相応する日本語を見つけるのは難しいです。一般に「包摂」「包含」「受容」などが使われますが、意味がよくわからないですね。そのため「インクルージョン」「インクルーシブ」と英語のまま使われていることも少なくありません。また、文脈によっては「共生」という表現が一番近い場合もあります。

Exclusiveの反対

動詞の”include”が「含む」という意味なのは、皆さんも知っているでしょう。対義語は”exclude”(除外する、締め出す)です。形容詞”inclusive”は”exclusive”(排他的、入れない)の反対だと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。「のけ者にする、仲間外れにする」のではなく、「受け入れる、仲間にする」ということです。少し例文を挙げておきます。
 
The candidate was excluded from the debate because his view was considered extreme.
(その候補者は、考え方が極端だとされ、討論から締め出された。討論に参加させてもらえなかった。)
 
The UN Security Council has been criticized for being too exclusive.
(国連安全保障理事会は、排他的すぎると批判されてきた。)
 
China is conducting an underwater survey without permission in Japan’s exclusive economic zone(EEZ).
(中国は、日本の排他的経済水域で、許可なしに海底調査を行っている。)
 
The company just signed an exclusive distribution agreement with our competitor.
(その会社は、当社の競合と独占販売契約を交わしたところだ。)

Inclusive

日本でも、海外からの観光客数が過去最高を記録し、観光業界が潤っても、直接的に、その恩恵を受けるのは一部の業者のみだと感じる人は多かったのではないでしょうか。税収などで、間接的に一般市民に恩恵があったとしても、たとえば観光公害の被害に遭う地域住民であれば、マイナス面の方が大きいという場合もあるでしょう。そうした点も是正し、誰もが公平に、その恩恵を受けられるインクルーシブな形でなければ、ツーリズムは持続可能ではないということです。
タイやアメリカのサステナブルツーリズム戦略に、”inclusive economy”が入っていたように、一定の産業や地域だけが観光業の恩恵を受けるのではなく、すべてのセクター、今まで日の当たらなかった地域も恩恵が受けられるようにしようというものです。日本での観光による地域創生も、inclusiveと言えます。かつ人気観光地に観光客が集中しないように(負荷軽減)、海外に知られていない地域も宣伝して観光客を分散させようというのも、サステナブルツーリズムを推進するための一手段です。
 
では、下記で、”inclusive”の例文を少し挙げておきましょう。
 
Was the event inclusive enough?  (そのイベントは、十分にインクルーシブだっただろうか。)
 
A sense of belonging is essential to a truly inclusive workplace.
(帰属意識は、真にインクルーシブな職場に不可欠である。)
 
How can we build a more inclusive society?
(どうすれば、もっと共生的な社会を作れるのだろうか。)
 
An inclusive economy means everyone can contribute and earn with fair access to resources and opportunity.
(インクルーシブ経済では、皆が貢献でき、リソースや機会に公平なアクセスを得られる。)
 
Inclusive education allows students of all backgrounds to learn and grow side by side, to the benefit of all.
(インクルーシブ教育では、あらゆる背景の生徒が共にに学んで成長できることが可能となり、ひいては皆のためになる。)たとえば、障害があるから、日本語が話せないからといって特別支援学校などに入れず、他の生徒と肩を並べて教育を受ける。
 
Inclusive policy for transgender athletes is controversial.
(トランスジェンダーのアスリートに受容的な方針は、議論を呼ぶ。)
 
日本では、宿泊代だけでなく、飲食代やアクティビティ料金なども料金にすべて込みのホテルは「オールインクルーシブ」と呼ばれるようですが、英語では”all-inclusive”は形容詞として下記のように使われることが多いです。
 
Many hotel chains are adding all-inclusive resorts to their portfolios.
(多くのホテルチェーンが、オールインクルーシブ・リゾートをポートフォリオに加えている。)

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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