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前回、アメリカの大不況について触れましたが、金融危機の後の大不況は、英語で”The Great Recession”と呼ばれ、大恐慌に次ぐ最悪の不況として、他の不況とは区別されます。なお、1929年の株式大暴落が引き金となった大恐慌は、”The Great Depression”です。
2008年にアメリカが大不況に陥った原因は、大不動産バブル崩壊による金融危機なわけですが、日本では、通常、これは「リーマンショック」として知られています。日本では、リーマンブラザーズが破綻するまでアメリカの不動産市場や金融業界で何が起こっていたかを知る人も少なく、突然の衝撃であり、また、その後の世界的金融危機の影響も大して受けなかったので、こういう表現が使われるのも仕方はないかと思います。
しかし、この表現は起こった大事の描写として的確ではないですし(リーマンの破綻は表面化したほんの象徴的出来事に過ぎず、その破綻が金融危機の原因となったわけでもない)、英語では”Lehman Shock”とは言いません。意味は察してもらえるでしょうが。(”Lehman Shock”が英語で使われているのは、ほとんどが日本国内の英語媒体か日本に関する記事においてです。)
英語では、通常、”the financial crisis”と表現されます。震源地のアメリカはもちろんのこと、ヨーロッパでも、不良債権を大量に買った銀行が何行も破綻し、財政が破綻する自治体まで出て、ショックはリーマン破綻後の方が大きかったのです。アメリカの大手金融機関が破綻の危機に扮し、その連鎖から世界の金融システムが崩壊しかねない大変な危機だったのです。
たとえば、英ガーディアン紙の見出しには”UK financial services growing at fastest rate since crisis”というのがありましたが、この”crisis”とは、先の世界的金融危機のことです。
リーマンブラザーズの破綻を英語で表現したければ、”the collapse of Lehman Brothers”や””Lehman’s collapse”, “the Lehman collapse”が使えます。
最近のファイナンシャルタイムズの記事には、”The City of London is seeing its strongest recovery since the collapse of Lehman Brothers in 2008”というのがありました。これは”since Lehman Brothers collapsed in 2008”と”collapse”を動詞として使うことも可能です。
ウォールストリートジャーナル紙では”That funding dried up in the uncertainty that followed Lehman’s collapse”という表現が見られました。
”Lehman’s crash” “the Lehman crash”という表現も、たまに見かけますが、あまり一般的ではありません、とくにアメリカでは。
“Six years after Lehman’s crash, US and UK play out next financial crisis”(ガーディアン紙)
「サブプライムローン」という言葉も、金融危機を機に日本国内で知れ渡りましたが、「住宅ローン」は、”housing loan”でも通じますが、英語では”mortgage”と呼ばれます。
サブプライムローンは、住宅ローンとは限らず、サブプライム自動車ローン(subprime auto loan)も存在します。アメリカでは自動車ローンも証券化されており、1000億ドル市場に達しています。2009年から倍増しており、今年、証券化されたローンのうち29%がサブプライムに分類されています。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。