Global Career Guide

キービジュアル キービジュアル

「結婚しない」がニューノーマル

前回、世界的に一人旅(solo trip)が増えていると書きましたが、その理由のひとつに、とくに先進国では独身の人が増えていることが考えられます。

アメリカ

アメリカを見てみると、2021年時点で、40歳の25%が「一度も結婚したことがない」ということで、2010年時の20%に比べ、10ポイント上昇しています。なお、これは過去最高の割合なのですが、アメリカ史上、結婚したことのない40歳の割合が一番少なかったのは1980年で、わずか6%でした。

背景には、1960年代生まれの世代(今、主に50代)から、晩婚化が進んでいる事情があります。2021年時点での平均結婚年齢は、女性が28歳、男性は30歳でした。1970年には、どちらも20代前半だったのです。

なお、一度も結婚したことのない割合は、女性(22%)よりも男性(28%)の方が高く、日本と同じ傾向です。日本の40歳での未婚率(2020年国勢調査)は、女性は20%、男性は31%でした。

また、日本の平均結婚(初婚)年齢は、2021年時点で女性29歳、男性31歳で、アメリカに比べ日本の方が一歳高くなっています。(アメリカでは高校在学中に妊娠して、結婚するケースも少なくない。)

「婚姻率は下がっているけど、皆、同棲したり、パートナーはいるんでしょ?」と思う人もいるかもしれませんが、アメリカでは、2022年時点で一度も結婚したことのない40歳で、パートナーと同棲している人は、22%のみでした。さらに、40歳の38%が「パートナーがいない」と答えています。これは、1990年の29%から9ポイント上昇しています。

収入や学歴との関係

日本では、やたら「今の若者は年収が少ないから結婚できない」と言いますが(年収が少ないほど生涯未婚率が高いとは言うものの、生涯未婚率を見る年齢は40~50代で、今の若者ではない)、ヨーロッパに比べても給料が高いアメリカでも、結婚する割合は減っているので、単純に「年収が上がらないから結婚できない」とは結論づけられません。

ただし、アメリカでも、低所得者の方が婚姻率が低いという統計があります。日本も同様ですが、短絡的には「低所得の男性と高所得の女性がくっつけばいい」と考えがちですが、アメリカでも、女性は経済的に安定した男性を好むのが、低所得の男性の婚姻率が低い一因です。(高収入の女性は、自分よりさらに高収入の男性を好む傾向にある。)

また、アメリカでは、40歳で一度も結婚したことがない割合は、四大卒でない人の方が四大卒より高く、高卒未満では33%、何らかの大学教育を受けた人では26%、四大卒では18%でした。これは、学歴が所得と比例していることが一因でしょう。

カナダでも

カナダでも、婚姻率は、1971年に0.63%だったのが、2019年には0.45%まで下落しています。日本の婚姻率は、2022年に0.41%だったので、同じような割合です。ただし、日本では、1971年の婚姻率は1.05%だったので、過去50年で大幅な下落を見せています。

また、カナダでは、15歳以上で独身(single)なのは、1981年には33%だったのが、2016年には45%にまで上昇しています。日本では、この割合は、男性が32%、女性が23%で、カナダより低いですね。

ただし、カナダは、G7国の中で、もっとも内縁関係(common-law marriage)のカップルが多い国で、未婚といってもパートナーと暮らしている人が多いのかもしれません。(※1)

しかし、カナダでも、パートナーがいない人は増えており、25~29歳で交際相手がいた人は、1981年には68%だったのが、2021年には39%にまで減っています。

独身の人が増えた理由として、「結婚する人が減った」「離婚する人が増えた」「大学に進学する人が増えた」「結婚よりも、個人の成長、キャリア、自己実現を求める人が増えた」などが挙げられています。

ちなみに、私が今いるカザフスタンを含め中央アジアの国々では、20~21歳で結婚するのが当たり前のようです。ベトナムでも、20代後半ともなると、結婚していて子供が二人ほどいるのが普通です。日本でも、「成人したら結婚して家庭をもつのが当たり前」だった頃がありました。生き方の選択肢が増え、それが当たり前でなくなったのが、結婚する人が減り、離婚する人も増えて、おひとり様が増えた一番の理由ではないでしょうか。

Singlehood

前回、”solo”の使い方をいくつか挙げましたが、アメリカでは、2019年に下記のタイトルの書籍が出版されました。”Singlehood”というのは、“being single”「独身でいる状態」という意味で、”solo living”とは、「おひとりさまとして生きること、おひとりさまライフ」ということです。


Happy Singlehood: The Rising Acceptance and Celebration of Solo Living
(楽しいおひとりさま: [社会的に]受け入れられ、謳歌できるようになった独身生活)

今年に入ってからも、タイトルに”singlehood”がついた書籍が出ています。


SINGLEHOOD: Discovering the blessings of singlehood
(おひとりさま:独身生活の恩恵の発見)


101 Reasons Why It’s Great to Be Single: A Celebration of Singlehood
(独身でいることがすばらしい101の理由。おひとりさまライフのすすめ)

  (※1)Common-law marriage では、法的に結婚している夫婦と、ほぼ同等の法的権利が認められる。アメリカでもcommon-law marriageを認めている州があるが、common-law marriageとして認められるには一定の条件(同居している、生計を共にしている等)を満たす必要がある。
カナダで、内縁関係のカップルが多いのは、フランス語圏のケベックで、そうしたカップルが飛びぬけて多いのが要因。2021年時点で、カップルの43%が内縁関係だった。なお、子供のいないカップルは54%。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

  • RECRUIT AGENT

カテゴリー一覧