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AIに奪われるエントリーレベルの職(2)

今月3日に発表予定だったアメリカの9月雇用統計が、連邦政府機関の閉鎖により発表されなかったため、民間企業による雇用統計に注目が集まっています。

アメリカの民間部門の雇用は9月に3万2000減少し、2023年3月以来、最大の落ち込みを記録しました。ほとんどの業界で、雇用が縮小したと見られています。その要因として、トランプ政権による関税引き上げなどの影響に加え、やはりAIの普及が関係しているとの見方があります。

AIが人間に勝る業務

6月にエントリーレベル職がAIに奪われつつある話を書きましたが、先月、OpenAIが発表したレポートでは、2030年までに「職業のうち最高40%がAIに置き換わる」可能性があるとされています。

これは、アメリカのGDP貢献度の高い9業界の44職種の仕事(作業)を人間とAIに行わせ、どちらが優れているかを各職種の専門家が評価したものです。たとえば、看護師であれば、「皮膚の傷の画像を見て診断書を作成」といった作業で、その職種の仕事内容をすべて網羅しているわけではありません。なお、評価者はどちらが人間で、どちらがAIの作業かは知らされていませんでした。

その結果、OpenAIの最上級モデルの「GPT-5」よりも、競合Anthropicの「Claude」の方が優秀だったのですが、平均して48%で人間より優れていました。(つまり、作業の半分では人間の方が優れていた。)

AIが特に優れていた業務は下記の通りです。人間よりAIの方がうまくできるのなら、AIに任せようというのは当然の流れで、こうした業務からAIに置き換えられていくということになります。

各国で進む置き換え

今年8月にイギリスの機関が、日本を含む8ヵ国の企業120社以上の経営陣850人以上を対象にAIに関する調査を行ったのですが、企業でのスキルギャップの解消やコスト削減を目的にしたAIの導入が加速していることが顕著となりました。

回答企業の43%が「当社では、AIへの投資はスキルギャップ解消のために行われている」と答えており、つまり不足しているスキルを必要とする業務にAIが活用されているということです。

39%が「当社では、すでにエントリーレベル職がAIによる効率化のためになくなっている、または減っている」と答え、さらに43%が「来年、なくなる、または減る」ということです。また、50%が「AIは従業員数の削減に役立っている」と回答しています。

また、31%が「新たに人を雇う前にAIによるソリューションを検討する」と答え、「AIの導入は従業員数を削減するため」という企業(18%)もあります。

AI以前にキャリア形成できた世代

興味深いのは、回答した経営者の56%が「AIが広く普及する以前にキャリアを開始できてラッキーだった」、46%が「キャリア開始時にAIがあれば、今、自分が備えているスキルを習得できなかった」と答えたことです。今、就職に困っている若い世代からすれば、腹立たしくなるような回答かもしれません。

とはいえ、経営者の53%が「AIのメリットは、潜在的なデメリット(破壊)を上回る」と答えており、AIの成果に懐疑的な声も多い中、今後AIが普及が進むことは間違いありません。

AI導入に積極的なインド

上記の調査の対象となったのは、日本以外に、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、中国、インドなのですが、国別に見ると、「AIが従業員の削減に役立っている」と答えた経営者の割合が一番多いのがイギリスで70%、次いでインドで65%、オーストラリアで57%、アメリカで53%でした。

また、「エントリーレベル職はAIのためになくなっている、または減っている」と答えた経営者の割合が一番多いのは、インドで50%でした。

概して、インドの経営者はAI導入に積極的で、「当社のエントリーレベルの社員はAIの利用に必要なスキルを備えている」と答えた割合は56%で、8ヵ国中最高でした。「当社ではAI教育計画を導入している」と答えた経営者の割合も一番高いのがインドで64%でした。

一方、その割合が一番低いのが日本で16%にとどまり(8ヵ国平均は34%)、「当社のエントリーレベルの社員がAI利用に必要なスキルを備えているとは思わない」と答えた割合(65%)も一番高かったのでした。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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