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アジア各国は、シンガポールのメディアが”The World’s Largest Human Migration”(人類最大の大移動)と呼ぶ春節(Spring Festival, CNY)の真っ只中です。
日本のメディアは、なぜかいつも「〇日春節開始」と騒ぎ立てますが、春節の大移動は、遅くても、その(元旦の)数日前、早い人では1~2週間前から始まっています。訪日客も、その前の週末から到着し始めますよね。(日本のお正月だって、元旦から動く人は少ないのと同じ)
私は3週間前からマレーシア(コタキナバル)にいますが、街のあちこちで行われる獅子舞を今年最初に見たのは1月17日、元旦(1月29日)の12日前です。
滞在しているマンション(大半の部屋が民泊)も、2週間前から滞在者が増えました。Wi-Fiがつながりにくくなって春節が始まる前には最悪の状態、かつエレベーターもプールも激混みです。(中国人観光客は元々多いのだが、春節が近づくにつれ、韓国人観光客やマレーシア人観光客が増える)。
中国では、春節の帰省・移動ラッシュ、春運(Spring Festival travel rush)は、元旦の15日前から始まり、40日間ほど続くと言われています。(今年であれば、1月14日から2月23日まで。ベトナムでも、個人商店は3週間休むところがある)
この人類最大の大移動にあたり、東南アジアの国々は、中国人観光客の獲得に躍起です。日本は、中国人観光客のビザ緩和措置で騒いでいますが、タイもマレーシアも(シンガポールも)2023年から中国人観光客向けにはビザを免除しています。(タイとマレーシアはインド人にもビザ免除)
タイを訪れる観光客で一番多いのが、中国からなのですが(次いでマレーシアとインド)、先月、中国人俳優の誘拐事件(一件ではない)が起こったために、タイを避ける中国人観光客が増え、その分、日本とマレーシアに流れているようです。
1月には、中国人によるタイのホテル予約キャンセルが4500泊以上、他国の観光客によるキャンセルも7800泊以上に達したそうです。また、1月13~20日の間の中国でのタイ向け予約は、昨年同時期に比べ16%減少した一方、日本向けは86%増、マレーシア向けは79%増とのことです。
香港のメディアによると、春節の間、香港から日本の13都市に、毎日往復75便飛んでいるそうで、15分に一便の割合だそうです。
2024年時点で、すでに訪日観光客数(3687万人)は、タイを訪れた観光客数(3554万人)よりも多かったですからね。* まさか日本が(観光業への経済依存度が高い)タイを抜く日がくるとは、と驚いたのですが、実は、タイはマレーシア(3800万人)にも抜かれたのです。マレーシア政府の2024年の目標は2730万人だったので、それを大きく上回ったということです。ただし、中国人観光客は目標700万人には及ばず500万人でした。
他にも「他国に後れをとっている。もっと中国人観光客に来てほしい」というのがオーストラリアです。オーストラリアでは、中国人観光客が、コロナ前に比べ激減しており、昨年9月時点で6割しか回復していませんでした。ゴールドコーストに至っては、コロナ前に比べ、中国からの観光客は75%近くも減っているそうです。
イギリスやアメリカ、ニュージーランドからの観光客数は回復しており、インド人観光客に関しては2019年を上回っているというのにです。中国人観光客は、他国からの観光客に比べ消費額が多いことから、豪政府は中国人インフルエンサーを雇うなど、あの手この手で勧誘しているようです。中国経済が減速した今、物価が高くて、旅費のかかる遠い国より近隣諸国を選ぶ旅行客が増えているのでしょうね。
一年以上前に中国人観光客向けにビザを免除したタイですが、「ビザなし滞在期間を60日から15日に短縮すべきだ」という声が国内では上がっています。この制度を(誘拐や詐欺をするような)外国人犯罪者が悪用しているのではないかとの懸念からです。
日本を含め他のビザ免除国に対しては60日なので、(中国政府に対し)中国だけ短くしにくいのかも知れませんが、中国人観光客の滞在日数は平均7~10日間らしいので、短縮しても実質的に困る人はいなさそうです。なお、マレーシアやシンガポールは、中国人向けビザ免除滞在期間は30日です。
ビザと言えば、タイでは、今年1月から10年滞在可能な長期(LTR)ビザの取得条件が緩和されました。富裕層(Global Wealthy Citizen)向けには最低年収条件が削除され、代わりにタイ国内での資産、タイ経済への貢献度が考慮されることになりました。また、高度人材向けビザも、5年の実務経験という条件が削除され、かつ対象の産業が増えました。また(主にリモートワーカー/デジタルノマド向け)スポンサーとなる外国企業の年商規模も緩和されています。
メタノール中毒
昨年11月にラオスでメタノール入りの密造酒を飲んで観光客6人が亡くなる事件が相次ぎましたが、タイでも同様のケースが頻発しています(被害者は主にタイ人)。実は、私の身近でも起こったのですが、(酒飲みの)イギリスの知人の友人が、12月にタイを旅行中にビーチパーティーに行って、(ドラッグをやりながら)お酒を飲んだ後、意識不明となり、数日後に腎不全(kidney failure)で亡くなりました。
その知人曰く、ロイクラトン(満月の)祭りで出てくる(何かが混ざった)ウィスキーがヤバイそうで、そういうパーティーでは皆、ドラッグもやっているので、脱水症状を起こしているから飲む量が増えるのだそうです。(ドラッグで判断力も低下してるだろうし)
実は、12月にはベトナムでも、英・南ア人カップルがカクテルを飲んだ後、メタノール中毒で亡くなっています。
毎年のようにタイを訪れる、その知人も、「当分、カクテルはお預けだな」と言っていますが、カクテル類や地元製造酒は避けた方が無難です。
* (世界の事情に疎い日本語オンリーの世界の住人には)インバウンドに頼る「日本は落ちぶれた国になった」という人がいるが、世界で一番訪問客の多いフランスでは年間1億人を超えており、アメリカは日本の倍ほど。その論理で行くと、フランスもアメリカも日本よりさらに”落ちぶれた国”ということ? 観光業のGDPへの寄与額が世界で最大なのはアメリカで、GDPに占める観光業の割合はフランスの9%に対し、日本は7%。それもフランスの人口は6800万人。日本で、人口5割増しの観光客数って考えられない。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。