Global Career Guide
訪日観光客数は、今年に入り毎月、過去最高を記録しており、このペースで行くと、年間ベースでも過去最高の3500万人に達すると予測されています。日本のオーバーツーリズム(overtourism)も、海外で報道されていますし、そろそろ飽きられるのではないかと思いきや、メディアなどで、今も、お勧めの渡航先として日本が取り上げられないことはありません。
エキスペディア(Expedia)の検索でも、今秋の旅行先として東京がトレンド入りし、Googleフライトの検索では、東京が今年のクリスマスの旅行先検索で一位なのです。今年、15ヵ国で行なわれた「再訪したい国」に関するアンケート調査でも、日本が1位(35%)でした。5ツ星レストランやミシュラン星付きレストランの数、食事のコスト、食料安保指数(Global Food Security Index 日本は6位)などを基に、世界30ヵ国の首都に対して行なわれたアンケート調査では、パリ、アテネに次ぎ、東京が3位でした。
ということで、訪日観光客は、今後も増え続けそうです。日本政府は年間6000万人を目標としていますし…
増えるのは、訪日観光客だけではありません。先月、書いたように、日本を訪れて気に入って、「日本に住んでみたい」という人たちも増えています。
今年、海外在住のアメリカ人420人近くに対して行われたアンケート調査では、移住先として一番多いのがイギリス(26%)で、次いで日本(11%)なのです。(それに、カナダ、メキシコ、ドイツが続く)。
海外移住の理由として挙げられたのが、「生活の質の向上」(69%)、「冒険・体験」(56%)、「ワークライフバランスの向上」(49%)でした。しかし、移住して一年未満という人の間では、「政治(アメリカの政治に嫌気がさして)」(53%)を理由として挙げる人が最多でした。
しかし、年代別で見ると、Z世代では、海外に移住した理由として「留学」(55%)に次いで、「生活費が安い」(45%)が多く、生活費の高騰に苦しむ若い世代の姿がうかがえます。* 一方、ミレニアル世代では「政治」という理由が最も多く40%でした。
なお、海外在住アメリカ人の82%が「アメリカの生活より良い」と答え、44%が「永遠に海外で生活するつもり」と答えています。
先月、「若い世代がアメリカを去っている」と書きましたが、アメリカの富の半分(大半が不動産)を所有しているというベビーブーム世代でも、年金だけで食べてていけない人はいくらでもいます。
「老後は生活費の安い国で過ごしたい」という人は、以前からアメリカでは珍しくなく、日本よりも多いです。(私が知っている人たちは、だいたい近場で物価の安い中南米を選ぶ。** 中南米の国々には、リタイアしたアメリカ人のコミュニティができている。ちなみに、下記の年金受給者の数では、メキシコが3位。)
老齢年金(social security)を海外で受け取るアメリカ人は、2008年には30万人ほどだったのが、2022年には45万人と、14年で50%増えています。在住先で一番多いのはカナダ(71万人)なのですが、次に多いのが日本(58万人)で、2008年に比べ3倍近く(176%)も増えているのです。(増加率では、325%のポーランドや187%のコロンビアの方が高いが。)
日本にはリタイアメントビザはないので、海外受給者には、日本人と結婚して配偶者ビザを取得したり、若いときから就労ビザなどを取得した後、日本の永住権(または国籍)を取得したアメリカ人、またアメリカでの年金納付期間が10年以上で、日本に戻った日本人が含まれていると思われます。
アメリカのメディアが、毎年行っている「最高の国ランキング(Best Countries Rankings)」では、今春、89ヵ国中、スイスに次いで2位だったのが日本でした。*** 2023年の6位から上昇しています(2021年の開始以来、常にトップ10入り)。
こうしたランキングが発表される度に、「日本に住みたい」という人が、さらに増えるのだろうと思って見ています。(日本のメディアでは、それと逆の報道ばかりしているので、日本語オンリーの世界に住んでいると、こうしたグローバルな視点が見えない。)
また、「日本で〇百万円で家を購入した」というインタビュー記事が、今も後を絶ちませんが、投資関連の米メディアでは、「今後5年で家を購入すべき世界の4都市」には、(住宅価格上昇率が東京の倍の)札幌が選ばれています。
なお、これまで欧米で起きている住宅危機について述べましたが、2023年から2024年にかけて、OECD加盟38ヵ国で行なわれた住宅に対する満足度調査では、日本の満足度が一番高く74%で、70%を超えていたのは日本だけでした。なお、満足度が一番低いのは、イスラエル(16%)、超インフレのトルコ(17%)、外国人が住宅価格を押し上げているという不満の高いポルトガルでは21%でした。(なお、カナダとオーストラリアは30%、ニュージーランドは34%、アメリカは39%、イギリスは41%。)
* 日本の就労ビザは、大卒でないと取得が非常に難しく、ワーホリ制度に参加している国であればワーホリで一年滞在できるが、アメリカは参加していないので、どうしても日本に住みたいというアメリカ人は、「とりあえず語学学校に入学して、学生ビザを取得する」という人も。日本への移住に関するオンラインコミュニティでは、こうした相談が多く、在日アメリカ人が、それを勧めている。
** 10年前、アメリカで自宅を売却した際に行なったガレージセールにやってきた中年夫婦。「エクアドルで早期リタイアした」とのことだったが、「資金が足らなくなったので戻ってきた。生活用品が必要」と、お鍋の蓋だけ買って行った! 奥さんが看護師で、アメリカで1年ほど稼いだら、またエクアドルに戻るということだった。
*** 今年3~5月に、アジリティ(agility)、文化的影響力、アントレプレナーシップ(entrepreneurship)、事業への開放度、生活の質など73の項目に関し、36ヵ国の1万7000人近くに調査。スコア化、分析にあたっては、各国のGDPやPPP(購買力平価)に応じて重みづけ(weighted)。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。