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日本を目指す人たち

前回、述べたように史上最高数に達した在留外国人者ですが、出身国は、1位中国(82万人)、2位ベトナム(56万人)をはじめ、5位のブラジルを除き、9位まではアジアの国々です。* そして、10位にアメリカが入っているのですが、先進国の場合、上位の国のように特定技能制度といった2ヵ国間の協定はないので、取得できる在留資格は、大卒であることが基本の就労ビザ、学生ビザや配偶者ビザに限られます。(台湾も同様なのだが、アメリカ以上に在留者が増えており、アメリカを抜いて9位に)

実は、近年、アメリカでは「海外に移住したい」という人が増えており、「移住に適した国」といった特集や、実際に(日本を含め)海外に移住した人のインタビューなどがメディアで取り上げられ、ちょっとしたブームになっています。今年2月に行われた調査では、34%が「他国に移住したい」と答え、1995年の12%に比べて22ポイント増えているのです。そのうちの半数以上が35歳未満でした。

実際、2020年時点で、海外在住のアメリカ人(軍人は含まない)は300万人を超え、30年前に比べ4割増えています。アメリカの市民権(国籍)を放棄する人も、2020年には6000人を超え、史上最高に達しました。(放棄に際し2350ドル徴収されるにもかかわらず)

アメリカに限らず「脱出したい」といったオンラインコミュニティもいくつもできているのですが、「アメリカ脱出」というオンラインコミュニティでは、一年前に比べ、会員数が倍以上に増えています。こうした背景には、生活費の高騰、とくに不動産価格や家賃の高騰、皆保険の欠如、政治的分断などがあるのですが、それは次回、まとめたいと思います。

日本に移住したい人たち

「アメリカから脱出したい」という人は、先述のように、とくに若い世代(Z世代)に多いのですが、昨年、18~26歳を対象に行われた調査では、移住したい国は、1位のイギリス、2位のカナダに次いで、3位が日本でした。

アメリカ以外の国でも、イギリスの海外引越業者による調査では、各国の人が移住・引っ越しに関して行なったグーグル検索数では、1位カナダ、2位オーストラリア、3位ニュージーランド、4位スペイン、5位イギリス、6位ポルトガルに続き、日本は7位だったのです。

そうした中、日本への移住(留学を含む)に関するオンラインコミュニティでは、2022年の入国制限解除直後は、「日本に住みたい」という投稿は週に一本程度だったのが、週に数本となり、今では一日数本にのぼっています。

中でも増えているのが、「日本に観光に行って気に入ったので、住んでみたい」「引退して日本に住みたい」という人たちです。(日本にはリタイアメントビザはないので、ほぼ不可能。あれば、外国人居住者は、もっと増えている)

上述のオンラインコミュニティは、ユーザーの6割ほどがアメリカ人で、それ以外は、ヨーロッパ、中南米、アジア(インドやフィリピンなど)の在住者ですが、(日本人を含め)英語がネイティブレベル、またはそれに近い人たちです。そのため、中国人、ベトナム人、韓国人ユーザーは非常に少なく、(フィリピンを除き)在留外国人上位の国の人たちではないということです。

そういう人たち(主に欧米人)で日本に移住したい、住みたいという人は、大きく下記のように分けられます。

1)アニメなど日本のサブカルチャーのファン
2)上記以外の日本の文化のファン
3)旅行をして気に入った–治安の良さや充実した公共交通機関など
4)配偶者や親が日本人 

1)や2)の人たちには、「日本に住むのが子供のときからの夢」という人も少なくなく、日本語を勉強しているという人も多いのです。中には「〇年後、日本に住むために、今から準備している」という高校生や、大学に入学する前から「日本で大学院に行きたい」という高校生もいます。今まで見た中で一番の年少者は、「日本の美大に行きたいので、日本語を勉強している」という非英語圏の14歳の少女です。

最近では、日本で「仕事のオファーをもらった」という人たちの書き込みも増えています。とくにアメリカから移住の場合、給料は減るが、「日本の方が生活費が安いので、その給料でも大丈夫」という日本在住の外国人からコメントが寄せられます。(「日本の方が生活の質が高い」「日本の方が払う税金に対して受けられる行政サービスが充実している」という声も多い)

また、「日本の地方で空家を購入してリノベした」「日本で数百万円で持ち家が買えた」「民泊をして儲けている」といったインタビュー記事も掲載され、さらに日本への移住に興味をもつ人が増えています。日本語の「空家」は”akiya”として、主流メディアでも広まりつつあります(なお、地方で空家が安く買えるのは日本だけでなく、イタリアなどでも話題になっている。アメリカでは、100万ドルで売りに出された町もあり)

4)の場合、「アメリカ生まれだが、日本で暮らしたい」という日本人や日本人の子孫が含まれます。ヨーロッパでは、親や祖父母がその国の国籍を所有していれば、海外で生まれても国籍を取得することが可能な国が多いので、第二の国籍を得て、その国に移住するというアメリカ人が多いのですが、日本では、日系人向け定住者ビザがあるので、それで就労可能な在留資格を得ることが可能です。

また、日本人に限らず、親が移民で、自分はアメリカで生まれたが、親の母国に移住したいという人も増えています。実際に、ベトナムに移住したベトナム系アメリカ人を何人も知っていますし(たとえば、シアトルでソフト開発の仕事をしていたが、ストレスが多いので、40代になり、ベトナムでノンビリ暮らしたいと母親とともにベトナムに移住した人)、スリランカやトルコでも、イギリスやカナダに何十年と住んでいたが 母国に戻ったという人たちにも出会いました。また、親の国ではない第三国に移住するZ世代も出てきています。

* 在外ベトナム人(overseas Vietnamese)の多い国は、アメリカ、カンボジアに次ぎ、日本。元宗主国のフランスより多い。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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