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10月1日に始まった米連邦政府の閉鎖(shutdown)は40日を超え、アメリカ史上最長となりました。無給で働く航空管制官や保安検査(TSA)職員らが次々に欠勤し(収入確保のためにアルバイト)、各地の空港ではフライトや保安検査の遅延で、何時間もにわたる空港の外にまで伸びた長蛇の列ができています。「出発前の5時間前に着くように」と呼びかけている空港もあります。
「こうした状況では空の安全は確保できない」と運輸省(Department of Transportation)は、先週、全米40の主要空港での減便を発表しました。(長官は共和党員なので、「こうなったのも民主党のせい。さっさと打開しろ」と民主党のせいに。責任は両党にあるが、世論調査では共和党を責める人の方が多い)
生活苦に陥る連邦職員
給料を1ヵ月支払われていない連邦政府職員らには、家賃や住宅ローンどころか、食料品すら買えない人も出てきており、非営利団体などが連邦職員向けに食料を配給するセンターを設けたりしています。(予算案で合意に達せない両党の議員らは、こうした間も給料を支払われているので、痛くもかゆくもない)
先日、こうした状況を日本の人に話したところ、1ヵ月給料が払われないだけで食べていけなくなる人がアメリカに多数いることに驚いていました。私はアメリカで20年複数の物件を所有し、賃貸経営をしていましたが、(中の中から中の下の層の)借家人の9割が共働きでも片方の給料が入らなくなった途端、家賃が払えなくなるのが常です。給料どころか「車の修理が必要だったので」「医療費がかさんで」という理由で、すぐに家賃が払えなくなるのです。(たとえば、年収9万ドルの借家人が、800ドルの特別な出費があった月に1400ドルの家賃が払えなくなるというのが実態)
このように、入ったお金がすぐに出ていくカツカツの状態を英語では”paycheck to paycheck”と言います。”Paycheck”とは「給料を支払う小切手」という意味です。今では小切手で支払う雇用主は極小企業や個人商店くらいですが、今も「給料支払」という意味で”paycheck”が使われます。
”(Living) paycheck to paycheck”というのは「給料から給料」、つまり「毎回、受け取った給料をすべて生活費として使ってしまい、次の給料までお金がない」「まさかの時のための貯えもない」という意味です。
実際には、それどころか給料を前借りする人もいるので(給料を前借りできる銀行サービスもあり)、給料が払われた途端、前借り分を返すことになり(振り込まれた給料から前借り分と手数料が引き落とされる)、また次回の給料を前借りすることになるという悪循環です。
Many Americans live paycheck to paycheck.
(多くのアメリカ人がその日暮らしをしている。)
Even some high-earners are trapped in a paycheck-to-paycheck cycle.
(高所得者でもその日暮らしの人たちがいる。)
I’d like to break the paycheck-to-paycheck cycle.
(その日暮らしの悪循環を断ち切りたい。)
今年4月にアメリカで行われたアンケート調査では、回答者の57%が「paycheck to paycheckの暮らしをしている」と答えました。その割合は若い世代の方が高く、Z世代では72%、ミレニアル世代では65%でした。
また今年行われた別の調査では、年収30万ドル~50万ドルの人の41%、50万ドル以上の人の40%が「paycheck to paycheck暮らし」と答えています。物価の高い東西海岸では世帯収入が20万ドルあっても楽な生活はできませんが、所得が多ければ多いほど出費も多くなり、年収30万ドル以上となると一度上げた生活レベルをなかなか下げられなくなるのかもしれませんね。
日本の人は、「アメリカ人は給料が高く裕福だから日本や他国に旅行できる」と思っていますが、彼らの多くがクレジットカードを使って渡航費や宿泊代を払っているのです。
アメリカのクレジットカードはすべて元金定率リボ払いで、毎月、最低支払額さえ払っていれば、与信枠内でカードを使い続けることができます。ただし、金利は22%超なので、残高は雪だるま式に増えていきます。
多くの人がほぼ永遠に残高を抱えている状態で、平均的な世帯が抱えているクレジットカードの負債は9,100ドルを超えています。
残高を抱えていることが当たり前なので、「私は毎月完済するので、残高はない」ということを周りの人に言い出しにくいくらいです(話がかみ合わない)。クレジットカード会社の顧客サポートに電話をすると、必ずのように「別のカードに残高を移しませんか?」と勧誘してきます。
大半のアメリカ人は、借金をすることに抵抗がありません(そもそもクレジットカードの残高を借金だと思っていない)。元々、”Spend now, worry later”(今を楽しんで、心配するのは後で)、”instant gratification”(長期的なプラス面よりも瞬時の満足感を追及)の文化ですから。
なお、大家として借家人審査の際に応募者のクレジットレポートを見ますが、ほとんどの応募者がクレジットカード残額をチャージオフ(charge-off)しています。* つまり、彼らはクレジットカードの借金を踏み倒しているということです。(ちなみに、大半の借家人が医療費も踏み倒している。)
* チャージオフとは債権者が延滞負債を回収不可能として損失計上すること。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。