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先週、米ウォルマートが「関税引き上げの影響で値上げせざるを得ない商品が出る」と発表しました。他の小売店も、次々に値上げを発表しています。*
そのウォルマートに対し、トランプ大統領はソーシャルメディア(Truth Social)に下記のように投稿しました。
Walmart should STOP trying to blame Tariffs as the reason for raising prices…. <中略> Between Walmart and China they should, as is said, “EAT THE TARIFFS,” and not charge valued customers ANYTHING.**
(ウォルマートは、値上げの理由を関税のせいにするのをやめるべきだ。ウォルマートも中国も、関税は自分たちで負担するべきで、大切な消費者に転嫁するべきではない。)
トランプ大統領就任後、英語ニュースで”tariff”(関税)という言葉を聞かない日はありません。
一方、空港の免税店の”duty free”の”duty”も税金のことです。”Duty-free shop”は、日本語では正確には「保税免税店」というようで、保税とは輸入品にかかる関税を一時保留することを指します。この”duty”には、”customs duty”(関税)だけでなく、酒税やたばこ税(excise duty)なども含まれます。
それに対し、街中のドラッグストなどでは“tax free”を掲げていますが、こちらは「消費税免税」という意味になります。
このように、英語では、日本語の「税金」にあたる単語が複数あり、その違いについて書きたいと思います。
米税関国境警備局(CBP)では、”customs duty”(関税)を下記のように定義しています。
Customs Duty is a tariff or tax imposed on goods when transported across international borders.
(関税とは、国境を超えて輸送された製品に課せられる税金のこと。)
「関税」という意味では、“tariff”と”(customs) duty”は、ほぼ同じ意味で使われています。
The 25% tariff on imported vehicles and auto parts will remain, but automakers won’t be subject to the additional 25% import duty on imported steel and aluminum.
(輸入自動車および自動車部品に対する25%の関税は継続されるが、自動車メーカーは、鉄鋼・アルミ製品に対する25%の追加の輸入税は課税されない。)
先述のように“duty”は、”customs duty”に限りません。たとえば”excise duty”(物品税)は、特定の製品に対し、製造時に課される間接税のことで、日本では、贅沢品や嗜好品に対して課されていましたが、(消費者に課税する直接税である)消費税導入に伴い廃止されました。
アメリカでは、ガソリンやアルコール、たばこなどに課され、(販売時に加算されるsales taxとは異なり)販売価格に含まれています。口座残高に応じ、銀行が口座保有者から”excise duty”を回収して納めるという国もあります。
なお、“tariff”には「料金表」という意味もあり、電力ガス会社やホテルなどの料金表という意味で使われます。
Electric and natural gas vendors must submit their tariffs to the government for approval.
(電力・天然ガス供給業者は、政府の了承を得るために料金表を提出しなければならない。)
皆さんもお馴染みの“tax”は、一般的な税金という意味で、「関税」が「税金」の一種であるように、英語でも”tax”は広い意味の税金であり、”tariff”や”duty”も含まれます。
たとえば、アメリカの通関に関するページでは、下記のような説明文があります。
Import taxes include tariffs (direct taxes on products), customs duties (indirect taxes) and other fees collected by government agencies.
(輸入税には、製品への直接税である関税と、間接税である関税、かつ政府によって回収される他の税金が含まれている。)
ちなみに、日本でも「輸入税」という言葉がありますが、これには関税と輸入消費税(consumption tax)が含まれています。
皆さんの身近で”tax”が使われるのは、“income tax”(所得税)、”local tax(es)”(地方税)、”city tax”(市民税)、”corporate tax”(法人税)などでしょう。
なお、「確定申告」は、英語では”tax return”です。アメリカの場合、連邦政府とは別に、州政府の確定申告もあるので(州所得税のない州では不要)、通常、”tax returns”と複数形で使われます。
I haven’t filed tax returns yet.
(まだ確定申告を行ってない。)
* 元々、ウォルマートは、それほど安くない。本当に安かった99セントチェーンは、昨年、倒産して全店閉店。やはり中国製品だらけのDollar Treeは、数年前に、インフレのため商品価格を1ドルから1.25ドルに引き上げたが、今後、さらに値上げすると見られている。ただし、インフレで低所得者以外の顧客も獲得しており、同社の株価は上昇中。なお、アメリカでは、数年前から、小売および飲食の大型チェーン店が大量閉店や倒産に追い込まれている。
** この”eat”は、「支出や損失を負担する」という意の口語。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。