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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(72)–  Calm…Concerns (タイ経済)

ミャンマー震源の地震でタイにも被害が出ており、観光地として世界的に人気のタイには大きな影響が出ています。中国や欧米では「今、タイに旅行しても大丈夫?」と心配する声が多く、タイの経済団体は「政府は状況を注視し、建物の総合的な安全点検を行っており<中略>、タイは依然、安全な旅行先です」「点検した建物はすべて、地震工学基準に従って設計されているので、耐震性を示しています」といった声明を発表しています。(地震後数日で、どれくらいの建物を点検できたというのか…)

タイ観光業界に打撃

今週から始まるソンクラン(旧正月)のお祭りも、タイ政府は例年通り開催するそうで、観光局はこの時期の観光客は、昨年より増えると強気です。しかし、旅行業界の懸念は大きく宿泊施設に対するアンケート調査では、バンコックやチェンマイ、プーケット、クラビなどの7都市ではその期間の宿泊予約が昨年に比べ25%少ないそうです。航空業界でも、地震後2日で飛行機の予約が40%以上減少し、中国に至ってはチャーター便がキャンセルされたり、60%の減少となっています。

一方、「タイ行き航空券が大幅値下げ」ということで、急遽GWにはタイに行くことを決めた日本人もいるようです。(ミャンマー国境から離れた地域で、高層ビルに泊らなければ心配いらないのでは。タイ南部の数ある島に行けば、低層しかない。)

Calm One’s Concerns

上述のように、タイ政府も旅行業界も誘拐事件に続く地震被害で「タイは危ない」というイメージの払拭に必死です。英語では、「不安を鎮める」という意味で“calm…concerns”という表現が使われています。”Calm”には、「静かな、落ちついた」という意味の形容詞以外に「静める、落ち着く」という動詞の用法もあります。

The government and tourism operators are rushing to calm travelers’ concerns about the structural integrity of Thai high-rises.
(政府と観光業界は、タイ高層ビルの構造健全性に対する旅行者の不安を急いで鎮めようとしている。)

日本であれば、現在、テレビ局が火消しに必死ですが、たとえば、不良品や食中毒、データ漏洩など を起こした場合に「顧客や社会の不安を鎮める」にも使えます。

The media company is having a hard time calming public concerns over its handling of the scandal and its corporate culture.
(そのメディア企業は、スキャンダルの扱いと企業風土に対する世間の懸念を抑えるのに手こずっている。)  

How do you calm your customers’ concerns at the time of a data breach?
(データ漏洩時には、どうやって顧客の懸念を払拭するのか?)

米関税も加わり経済悪化

観光業がGDPの12%を占めるタイでは、観光収入の低下は経済に大きく影響します。誘拐事件などですでに中国人観光客が減少していたところに、今回の地震で、経済損失は300億バーツ(1260億円)にのぼると見積もられています。これは、能登地震による経済損失を少し上回るものです。(崩壊したのは、あのビルだけなのだが、映像が衝撃的すぎたか。)

タイ経済は2月にすでに減速していたのですが、 不動産市場もすでに鈍化していたところに、今回のビル倒壊で高層マンションの売れ行きに影響が出ているとのことです。

さらに、今週から発動予定のタイ輸入品に対する米関税(36%)が大きくのしかかり、今年度のGDP成長予測が2.4%から1.4%に下方修正されています。

2024年、アメリカはタイにとって最大の輸出先だったのですが(最大の輸出品は機械)、東南アジアではベトナムに次いでタイに対してアメリカの貿易赤字が大きいのです。(ベトナムは、中国、メキシコに次いで世界3位で、タイは11位。日本は7位。)

タイは貿易不均衡是正のために、アメリカから原油や農産物などの輸入増を計画していますが、武器を購入すべきという声も出ています。

国内旅行需要喚起

タイはコロナ後の経済回復が遅れており、世界189ヵ国中162位に甘んじています。タイを訪れた中国人観光客も2024年には670万人で、コロナ前の1100万人から4割減のままなのです。(それで中国人観光客誘致に躍起。)

タイ政府では、先月地震が起こる以前からオフシーズンの5~9月に国内旅行需要を喚起するための政府支援による旅行キャンペーンを予定していました。2020年、(日本の「Go To トラベル」と同様の)コロナ禍で提供されたキャンペーンの刷新版です。政府が宿泊費用の最高50%を負担するというもので、対象はタイ国籍保有者で平日の宿泊に限定されます。

人気観光地外の地域の観光を促進するために、人気地域とそうでない地域を組み合わせるような(たとえば、チェンマイに宿泊したらチェンライも訪問しないといけない)ことを考えているようです。

なお、タイでは、今年1月から同性婚が合法となり、LGBTQ観光客の誘致も期待されています。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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