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先週、駐日米軍基地からのPFAS流出問題が報道されましたが、PFASの汚染問題は世界的に大きな問題となっており、英語ニュースでは、毎日のように見聞します。
PFASとは、”per- and polyfluoroalkyl substances”(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)の略で、その撥水撥油性(water and oil repellency)から、フライパンのフッ素コーティング、食品パッケージ、テキスタイル、化粧品、電子製品、自動車製品など様々な製品で使われています。
PFASは水溶性のため、水を通して広範囲に拡散しやすく、汚染とは無縁そうな北極でも、ホッキョクグマや他の動物の体内からも検出されていますが、年々、検出量が増えているそうです。今では、地球上のほぼすべての生態系が汚染されていると考えられています。
先月には、アメリカで雨水にも含まれていることが判明しましたが、PFASは世界各地の水道水、飲水(drinking water)でも検出されています。今年、日本でも一部のミネラルウォーターからPFASが検出され問題になりましたが、今月に入りヨーロッパ中で市販のミネラルウォーターの7つのブランドにも、その副産物(by-product)が規定値以上含まれていることが判明しました。(たとえば、フランスのVittel等。一番含有量が多いのはベルギーのVillers。含有量が規制されているのはPFASであって副産物ではないので)
先週には、スマートウォッチのバンドでも、結構な量のPFASが検出されたことがニュースになりました。汗に強いフッ素エラストマー合成皮(PFHxA含有)が使われているためで、とくに30ドル以上のバンドの方が、15ドル以下の安価な物よりPFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)の含有量が多いそうです。
人の血液からも検出されており、健康被害や環境汚染の観点から、各国で規制が進んでいます。2001年には、POPs(persistent organic pollutants = 残留性有機汚染物質)に関する国際的条約(POPs条約)が採択され、POPsの製造や使用の廃絶・制限、排出の削減などが規定されましたが、その後、PFOS(2009年)やPFOA(2019年)など一部のPFASが対象物質に含まれ、各国で、これらの物質の製造や使用が禁止されました。(1万種類以上あるといわれるPFASがすべて対象物質なわけではない)*
同条約は、2004年に発効され、日本を含む186ヵ国が批准しています。日本では、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で両物質の製造や輸入が禁止されています。
もう何年も前に、各国で各種PFASの製造が禁止されているにもかかわらず、北極でまでも検出されているのは、PFASが分解するのに何百年とかかり、環境に残留するからなのです。ほぼ永遠に残留するため、PFASは英語では“forever chemical”(永遠の化学物質)とも呼ばれます。
PFAS are called “forever chemicals” because they’re persistent in the environment for hundreds of years.
(環境に何百年も残留することから、PFASは”永遠の化学物質”と呼ばれる)
Here’s how to reduce your exposure to forever chemicals.
(PFASへの曝露を減らすには、これらの方法がある)
In the US Congress, a bill called the Forever Chemical Regulation and Accountability Act was has been introduced to phase out production of nonessential use of PFAS.
(米議会では、PFASの必須ではない製造をフェーズアウトするために、「永遠の化学物質規制および説明責任法」という法案が提出されている)
In many parts of the world, residents are fighting forever chemical pollution.
(世界の各地で、住民らがPFAS汚染と戦っている)
最近、研究者らが飲水からPFASを除去する物質を開発したというニュースが流れていますが、今後は環境からの除去を可能にする技術が進むことを期待するしかなさそうです。
本コラムは今回が今年最後となります。2024年も、ご愛読ありがとうございました。
Happpy New Year! #HNY(よいお年を!)
* PFOS(perfluorooctane sulfonic acid)は、テキスタイルの撥水撥油剤として、PFOA(perfluorooctanoic acid)は、フライパンのコーティングなどに使われていた。原料はフッ素で、アメリカの主要メーカーは3Mや(テフロン™ で有名な)DuPont、日本ではダイキンなど。3MとDuPontは、両物質による健康被害に対し、今でもアメリカ国内で数々の提訴を受けている。実は私は昔、PFOSやPFOA関連の仕事に関わっていたのだが、その間に、3Mが健康リスクの懸念から自主的に製造を中止したのを皮きりに、他のメーカーも中止。
PFOSやPFOAの代替物質として使用されているPFHxAは、現時点ではPOPsの対象物質ではないが、EUでは2026年から規制施行。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。