Global Career Guide
先週、日本の人口が15年連続で減ったというニュースが英語圏のメディアでも流れていました。同時に、外国人居住者が前年比11%増で、人口全体の3.4%となり、過去最高に達したということも。
数年前には、「日本は移民大国」と国内メディアが騒いでいましたが、海外では、今でも「日本には移民なんていない」「外国人居住者は人口のわずか3.4%。いないに等しい」といった声が少なくないです。(また「日本は外国人が永住権や日本国籍を取得することを許していない」と信じている人が多数。)
国際移住機関(IOA)によると、移民流入の数では、アメリカがダントツ最多で、次いでドイツで、日本はトップ20にも入っていません(使われているデータがコロナ中のもので、日本は2022年まで”鎖国”してたのも関係?)。
ただし、移民(immigrant)の数え方は各国バラバラで、IOAが使っている国連経済社会局(DESA)の定義は「移民とは生まれた国と違う国に一年超住んでいる人」で、留学生や駐在員なども含まれます。アメリカでも、辞書には「永住するために外国に移住する人」と定義されており、多くの人が「移民」というと、そうした人を思い浮かべるのでしょうが、統計上は、そうとは限りません。
元々、移民をベースに始まった国と日本を比べても仕方ないのですが、アメリカでは外国生まれ(4600万人)の割合が、2022年時点で全人口の14%でした。なお、このうち、帰化してアメリカ国籍を取得している人は49%で、永住権取得者が24%、短期合法移民は4%、不法移民が23%(1100万人)です。
日本の「外国人居住者」には帰化した人が含まれていないので、日本の国籍取得者数を見てみると、年間1000人に満たず、過去10年でも8500人ほどなので、やはり”移民立国”とは比べものにならないです。(不法移民の数も桁違い。)
ちなみに、人口における移民の割合が世界で一番多いのは、アラブ首長国連邦(UAE)で、2017年時点で88%超でした。その他、クエートやカタールなど中東の国が上位を占める中(かつリヒテンシュタインやモナコなどのヨーロッパの小国)、シンガポールが9位で49%でした。
今月行われたEURO 2024で、選手の平均年齢(28.5歳)が一番高かったのがドイツですが(日本の方が若い)、少子高齢化による労働力不足を補うために、日本以上に外国人労働者の受け入れに躍起です。
外国からドイツに移住した人は、2022年時点で1530万人(全人口の18%)、かつ両親ともが移民という人が490万人(全人口の6%)で、両方併せると2020万人で、全人口の24%を占めています。
ちなみに、今年5月には、ドイツ国籍取得の条件が、在独8年から5年に短縮されました。学校の成績がよかったり、業績を収めた人の場合、さらに短くて3年で可能です。また、これまで、片方の親がドイツ国籍でない限り、子供はドイツ国籍を取得できなかったのですが、どちらかの親が在独5年以上で、永住権を取得していれば、子供もドイツ国籍を取得できるようになりました。さらに、ドイツ国籍取得後、元の国籍を放棄する必要がなくなり、かつ親が外国籍の子供は18歳になると、ドイツか親の国か、どちらかの国籍を選ばなければならないという規則も撤廃されました。
ドイツ政府では、帰化人数を年間2万人に倍増することを目標としています。(ただし、実際には、申請しても処理されるまで何年もかかるようで、今回の条件緩和で、さらに申請数が増え、処理時間が延びる可能性アリ。)
なお、日本の帰化申請の条件は、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」かつ「そのうち、就労した経験が3年以上あること」というものです。
今年、中間選挙(midterm election)を迎えるアメリカでも、移民政策が争点の一つとなっています。過去数年、事実上の国境開放で、メキシコとの国境に大量の不法入国者が押し寄せ、2023年には、不法入国者が240万人を超えて、史上最高に達しました。
今年6月に行なわれた世論調査では、回答者の55%が「移民数は減らすべき」と答え、昨年に比べ14ポイント上昇し、20年ぶりに「移民数は減らすべき」というアメリカ人が半数を超えました。(過去最高だったのは6割を超えた1993年と1995年。)
歴史的に、移民に反対するのは保守の共和党支持者ですが、「移民は減らすべき」という共和党支持者は88%にまでのぼっています。「メキシコとの国境の壁は拡大すべき」という人も、調査開始以来、初めて半数を超えましたが、共和党支持者では91%に達しています。「不法入国者は全員、強制送還すべき」という人も、共和党支持者では、2019年から21ポイント増え84%にのぼっています。
ただし、不法入国者にも、「ある程度、年月が経ち、一定の条件を満たせば、アメリカ市民になるチャンスを与えるべき」という人が70%もいます(共和党支持者では46%のみ)。子供のときに親に連れられて不法に入国した人に対しては、81%と、さらに高いのです(共和党支持者では64%)。
一方、日本では、2023年10~11月に政府が日本人を対象に「外国人との共生に関する意識調査」を行なったところ、回答者の62%が「働く外国人は増えたと思う」と答え、「地域社会に外国人が増えることに対する感情として」、「好ましい」が29%、「好ましくない」が24%でした。(しかし、「どちらともいえない」という人が47%というのは、どういうことなのか?「メリットもデメリットもある」というのか、「わからない」というのか…)
2020年にNHKが行なった世論調査では、「日本に外国人が増えること」に賛成という人が70%、「自分の住む地域に外国人が増えること」に賛成が57%で、昨年の政府の調査に比べ賛成が倍の割合でした。* (3年で、これだけ差があるのは、調査方法の違いによるものなのか、コロナ後、外国人が急増して否定派が増えたのか…)
ただし、NHKの調査でも、「外国人労働者の家族帯同を今より広く認めるべき」という人は33%に留まり、若い人でも半数を切っていました。つまり、日本人は「外国人労働者には来てもらってもいいが、用がすんだら帰ってほしい」「永住はしてほしくない」ということなのでしょうか。これが、日本政府が「日本も永住目的の移民を受け入れている」とは口が裂けても言えない所以なのでは…
私は予々、今のように、政府が「移民」という表現を使わずに、国民の合意を得ず、外国人労働者を増やし続けることが問題だと思っています。まずは、政府が移民政策に対して国民の意思を確認すべきですよね。「今後、人口が減って小国となっても、従来の日本文化、日本らしさを保つべき」というのか、「これまでの日本ではなくなるが、人口を増やして国を保つべき」というのか–私は、今後10~30年で、この世からいなくなる世代ではなく、若い世代が決めるべきだと思っています。
* どちらの調査も、回答者の45%~53%が60歳以上、63%~68%が50歳以上で、年齢が偏っている。NHKの調査では、18~29歳の95%が「賛成」で、若い世代の方が寛容。が、一番「賛成」の割合が低い70歳以上でも「賛成」が60%弱。 ただし、どちらの調査も、実際に外国人と接したことのある人は半数以下で、実際に接すると意見は変わるのかも。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。