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日ごろから「日本のメディア(日本人)は、どうしてこんなに他国(世間)にどう思われているのかを気にするのか」と思っていましたが、W杯に関する「海外のメディアが○○と報じている」という日本での報道は異常!
そもそも「他国のメディア記事を要約して記事にすることが報道と言えるのか?」という点は、今回さておき。各社、日本について書かれた記事を探すためにエゴサーチでもしてるとしか思えません。
さらには、ポーランド戦に関し、わざわざ日本の過去の監督や他国の監督、セネガル選手にまで取材に行って、答えたがらない相手にも無理やり答えさせ、「不公平だと思いますか?」と否定的な答えを出させようとする。他国のメディアはエゴサーチ的な取材はしないし、そもそも他国にどう思われているかなど気にしていません。
「世界中のメディアが」と書いているライターもいましたが、世界190ヵ国以上のメディアをすべてチェックしたというのでしょうか?(ちなみに出場チームは32ヵ国。)内容からして、「世界を敵に回した」「世界から非難ごうごう」と発言した報道関係者も、海外から外国語で情報を得ているのではなく、日本語メディアを通じた日本語による”また聞き”情報を基に発言しているとしか思えません。
良くも悪くも、世界はそれほど日本に注目していない!自意識過剰すぎ!!
日本でよくある「海外でこんな風に報道されている」というとき、新聞の一面にでも大々的に載っているような感じで騒がれますが、サッカーに限らず、日本に関する報道のほとんどは、新聞でいえば「国際」欄や「アジア」欄に載るんです。飛ばして読む人も多い欄。*
「W杯の歴史に残る汚点」みたいなことを言っていた人もいますが、日本国内で叩き合いをやっている間に、”世界”の関心は、すでに”本番”の決勝Tに移行。決勝Tが始まれば、ネイマール劇場(Neymar-esque)あり、マラドーナ劇場あり、レスリングかと思わせるファウルをしながら球蹴るより審判への抗議に忙しく「一番汚い」と非難されるチームなど、日本のパス回しなんて”世界”では忘却の彼方。
パス回しの件、「ロシア人は何とも思ってない」とロシアに観戦に行っていた日本人サポーターが発言していましたが、私の周りでもプレミアリーグの(熱狂)サポーターは「何が問題?」
一番辛口だったBBCの批判記事の読者コメント欄でさえ、日本チームの判断を擁護する意見がほとんどでした。
「日本はルールに乗っ取ってやっただけ。誰もズルしたり、ルール違反してない」
「典型的な英メディアだ! イングランドの監督だって同じ立場だったらやってる」
「(日本を批判した北アイルランド代表監督)M・オニール、恥ずかしいと思わないのか!自分が同じ立場だったら同じことやってるくせに」
「神より偉い自称専門家の奴ら、なんて偽善だ。<中略> 日本は賭けに出て勝ったんだ」
「我がイングランドチームも(二回戦でブラジルにあたらなくていいよう)ベルギーに勝たせたくせに、日本がやるとダメなんだ」
「日本が攻撃して失点してたら『日本は青臭いな。そんな間違いを犯す欧州チームはない』って言ってたくせに。偽善者!」
「欧州代表チームが何度もやってきたことなのに、人種差別?」という人さえいました。
米大統領選挙時の日本の報道も目に余るものがありました。日本のメディアは、アメリカの社会背景はもちろん、選挙の仕組みすらちゃんと理解せずに、(偏った)米メディアの報道をコピペするか、頓珍漢な報道ばかり。誤情報もあるし。
「トランプどうのこうの」という人の中で実際に同大統領の演説などを聞いた人はどれくらいいるでしょうか?やはり99%が日本メディアが「トランプ大統領が○○と発言した」という報道をベースに、どうのこうの言ってるだけ。
実際に海外のメディアから情報を入手している人は国民の1%もいないのではないかと思います。”また聞き”情報で世論が築かれていくのが恐ろしいです。日本語だけの世界では、大本営公表みたいなフェイクニュースを流して扇動するのは簡単そう。
以前にも書きましたが、世界の動きが知りたいなら、日本語だけでは無理です。とくに海外を目指している皆さん、そろそろ”また聞き”はやめませんか?
* オウムの件も「7人の死刑執行 世界に衝撃」って、衝撃走ってません。ちょっと注目を浴びたとすれば死刑反対のEUの一部、信者がいたロシアくらいでは。アメリカ人の9割が、この件を知らない。「世界を敵に回した」と同じ大手新聞社ですが、米スーパーのレジの横に並んでる タブロイド紙並みのタイトル。「衝撃!私は宇宙人に連れ去られた」みたいな。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。