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「日本だけ」症候群 ー 日本語オンリー世界の弊害?

今年は、世界各地で酷暑がニュースとなりましたが、いまだに「こんなに暑いのは日本だけ」「湿度が高いのは日本だけ」「日本は世界一暑い」と思っている人たちが日本にいるようで… [i]  ネットの日本語検索予測で「暑いのは日本だけ(なのはなぜ)」と出てくるのにはビックリします。海外はどうなのかを調べるのも日本語で?!

近年、異常気象は、世界各地で起こっておりニュースになっていますが、これも「日本だけ」と思っている人たちがいます。極暑だけでなく、極寒・豪雪も世界各地で起こっているのに、日本では零下30度、降雪2メートルになるところは少ないからか、極寒は話題にならないようで。(極暑でないところには極寒のところが多いけど「極暑の日本だけが悲劇のヒロイン」思考。)

アメリカでは毎年ある竜巻や山火事も、日本には馴染みがないからかニュースにならないし。(今年は熱波で米西部では100以上の大規模山火事が起こり、何万人もが避難を余儀なくされ、カリフォルニアだけでも1000軒以上の住宅が焼失。死者も出ている。)

東南アジアや南アジアでは、洪水は毎年のこと。日本のニュースだけ見ていると、台風は日本だけを襲っているように見えるでしょう。同じ台風が他のアジアの国を襲っても日本では報じられませんから。毎年、台風に襲われるフィリピンは、時折、大きな被害が出て世界的なニュースになりますが、昨年も12月に台風27号(Tembin)で200人以上の死者が出ました。昨年、ベトナムを襲った台風は同国最多の16個にのぼり(日本に上陸した台風は4個)、11月の台風23号(Damrey)では100人以上が亡くなりました。

カリブ海も、毎年ハリケーンに襲われますが、日本から遠いので、よほど大きな被害が出ない限り日本ではニュースになりません。(12月のハリケーンMariaによる死者は3000人近く。)

とにかく、日本語で報道されないことは、多く日本人には「起きていない」ことになっているのです。

「日本だけ」症候群

その他、「セミがいるのは日本だけ」「日傘をさすのは日本人だけ」「いじめがあるのは日本だけ」「花粉症があるのは日本だけ」「歩きスマホをするのは日本人だけ」[ii]「不祥事を隠ぺいするのは日本だけ」「民泊を規制するのは日本だけ」といった勝手な思い込みを山ほど聞いてきました。私は、ほぼすべてに対し具体例を挙げて「日本だけ」ではないことを示すことができます。[iii]

日本語のみでの情報入手が悲観的に?

「日本の生活は悪くないのに、なんでこんなに皆、自国に悲観的なのだろう」と私は、長年、思ってきましたが、これは日本語でのみ情報を入手しているのが一因という説があります。日本のメディアが伝えるのは、当然、日本国内の出来事が中心になります(どこの国でもそう)。だから、日本語だけで情報を得ていると、いろんな事件やスキャンダルが日本でしか起こってないように見えるのでしょう。

「若者は、もっと海外に出るべきだ」という人が少なくない中、私は「行きたくなければ、無理して行かなくてもいい」と思っているのですが、「日本だけ」症候群の蔓延を目のあたりにすると「やっぱり出た方がいいかなあ」と思うこの頃です。


[i]    東南アジア諸国の大半は夏しかなく年中高温多湿。米南部も湿度は70~80%あり、温度も35~40Cに達する。ちなみに熱帯のフロリダ南部よりテキサス(テキサスは砂漠ではない)の方が暑い。アメリカで一番暑い(というより熱い)アリゾナ州フェニックスは年の9~10ヵ月が夏で、真夏には50C近くに達し毎晩が熱帯夜。こうした暑い地域と日本との違いは冷房。暑い地域では冷房がガンガンにかかっている(かつアメリカでは車移動なので、冷房ガンガンの自宅から冷房ガンガンの職場で外を歩かない。)日本の冷房設定温度は、アメリカでなら暴動が起きるレベル。

[ii]   最近、中国で歩道にスマホ専用レーンができたことがニュースになったが、ベルギーでは2015年、ワシントンDCでは2014年にできていた。

[iii]  いじめは、もう何年も前から、多くの国で社会問題になっているが、10年近く前に、のどかなチリの港町の学校の壁に、首をつった少年の絵が描かれ「いじめはやめよう」という標語を見たときには衝撃。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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