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タカシの外資系物語

タカシ、20年の“戦い”を振り返って(その1)2019.01.22

ゴーン氏の“戦略”


日産前会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されてから、はや2か月が経過しました。事件の全容は、今後明らかになっていくことでしょうが、この事件から、われわれ日本人はいくつかの示唆を受けることができます。

 

例えば、去る1月8日に行われた、抑留理由開示請求手続きへの出廷。報道されている通り、この手続きは、裁判官が抑留理由を形式的に伝えるものなので、裁判プロセスに対してはあまり意味がなく、容疑者が請求することはめったにありません。しかしゴーン氏にとっては重要な意味がありました。それは、実際の裁判に影響があろうがなかろうが(実は、そんなことはどうでもよくて)、

 

自分がひどい目に遭っていることを国際世論にアピールしたかった

 

という目的に尽きます。これは私見ですが、ゴーン氏の弁護団は、すでに何らかの罪状に問われるのはやむなしと認識しているのではないか。まともに戦ったのでは効果が薄いと判断し、“ウルトラC”を狙って、国際世論に訴える手段に出たのではないか、と思うのです。

 

実際、この作戦は功を奏していて、日本の検察におけるゴーン氏の扱い等について、フランスのみならず、様々な国や各種団体から非難の声が上がっています。ゴーン氏の行った問題行動とは別の次元で、日本が糾弾されているのです。このことは、広く大衆が目にするメディアでも観測することができます。

フランス風刺画に見るゴーン事件


フランスでは、ゴーン氏の事件について、どのように報道されているか? 先日、私はある雑誌を読んで、衝撃を受けました(週刊新潮 2019/1/24号 『初出廷で再過熱 ゴーン風刺画コレクション』より)。

 

そこに記載されていたのは、海外の新聞などによく出てくる時事関連の風刺画(マンガ)です。2種類の風刺画が出ているのですが、その図柄はほぼ同一で、海の上で、ゴーン氏とクジラが同時に網にかかっている様が描かれています。日本が再開を決めた商業捕鯨と、ゴーン氏の逮捕・抑留を同列に扱い、野蛮な日本文化として皮肉っているのです。

 

【風刺画(1)】

タイトル = 釣り : 心ない日本

ゴーン氏「放せ! 俺は無実だ!」

クジラ「僕だって!」

 

【風刺画(2)】

タイトル = 大漁:日本の伝統の犠牲となったカルロス・ゴーン

ゴーン氏(クジラに対して)「お前も首までどっぷり浸かっていたのか?」

クジラ「サメ(欲張り=ゴーン氏を指している)とは話さないよ!」

 

風刺画(1)と(2)では、ゴーン氏に対して批判的であるかどうか、若干のニュアンスの違いはあるにせよ、日本の商業捕鯨について、奇異な目でとらえ、反対する意思は一貫しています。みなさん、いかがでしょうか?

タカシの20年 = 常識の狭間で七転八倒?!


仮に、われわれ日本人が、海外で逮捕・抑留されたとします。実際に罪を犯していようがそうでなかろうが、海外でそういう疑いをかけられる行動をした自分自身が悪いのであって、逮捕・抑留されるのもやむなし = 「李下に冠を正さず」。その地で逮捕・抑留され、日本の常識では不釣り合いな対応を受けたとしても、それもまたやむなし = 「郷に入れば郷に従え」。これが日本人のスタンダードではないでしょうか。

 

しかし、グローバル・スタンダードは全く異なります。実際に罪を犯していようがそうでなかろうが、そういうことは、一義的には問題ではない。あらゆる手段を駆使して、自分が置かれている逆境からいかにして抜けだすか、これが最重要事項なのです。これは、「李下に冠を正さず」「郷に入れば郷に従え」のオリジナルである中国でも同じこと。外国で逮捕・抑留されて、仕方なし・・・ とか、危ない場所に行ったアンタが悪い、自己責任だ・・・ などと達観したり(または傍観したり)、諦めたりしているのは、世界を眺めても日本人ぐらいのものです。まずは自国民を助ける、これがグローバル・スタンダードなのです。

 

また、日本の商業捕鯨再開について、海外がどのように反応しているか・・・ それを正確に理解している日本人は、果たしてどの程度存在するでしょうか? おそらく、皆無に近いのではないかと思います。多くの日本人は、商業捕鯨の是非については、各人の意見を持っていると思います。伝統的にクジラを食用としてきた日本とそうではないグローバルでは、そもそもの考え方が違う。しかし、日本人というのは、自国の立場を丁寧に説明することを避け、曖昧に過ごしてきたわけです。結果、哺乳類であるクジラに対して、ひどい仕打ちをする民族として、日本人が避難されているわけです。世界中の人が、上記の風刺画を見てうなずいている様を想像してみてください。日本人として、なんだか、悲しくなりませんか?!

 

私が日系の大手銀行から、外資系コンサルティング会社に転職したのは、1997年10月のこと。はや、20年以上が経過しました。そして私の外資における20年の経験は、上記のような、グローバル・スタンダードと日本の常識の狭間で七転八倒する歴史でもありました。

 

さて、みなさん、長く連載してきた『タカシの外資系物語』ですが、次回の掲載をもって、最終回とさせていただきます。突然の終了宣言に驚かれたかもしれません。その理由については・・・、次回のコラムでお話ししたいと思います。では!

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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