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タカシの外資系物語

外資流 タレント育成方法(その5)2018.10.23

グーグルと日本企業 その思考回路の違いとは?!


(前回の続き) 従来、人事業務、とりわけ人材育成や採用に関する分野は、人間にしか対応できないと思われていました。しかし、AI全盛時代を迎えた昨今、人事業務は自動化対象の筆頭とも呼べるほど、高度にITが導入される分野となっています。以下では、HRテック = 人事の先進IT化 に関する最新の動向を説明する前提として、みんなが知っている世界的なIT企業の取り組みからお話ししていくことにいたしましょう。
 

世界で初めて、HRテックを人材育成や採用分野に活用した企業は、かの グーグル と言われています。グーグルには、ピープル・アナリティクス(People Analytics)という部署があって、全ての人事決定にAIをベースにしたデータアナリティクスが組み込まれています。

 

「グーグルでアナリティクスって、当たり前じゃね・・・?!」と思われたアナタ。そんな単純なもんじゃない! グーグルは、日本人から見れば外資系です。外資系企業(というか、日系企業以外と言った方がいいかも?)は、意味のないことに、リソース(ヒト・モノ・カネ・時間)を使いません、絶対に! だから、グーグルの思考回路というのは、

 

人の経験と勘だけに依存した人材育成や採用はよろしくない! 企業価値を最大化できない!
AIをベースにしたデータアナリティクスを組み込んでみよう → 企業価値が大きくなりそうだ!
∴ HRテックを積極活用しよう!

 

となるわけです。グーグルをはじめとする外資系企業では、AIやデータアナリティクス、HRテックといった “手段” が先に来ることは、決してない。企業価値増大(ex. 収益拡大、顧客満足や従業員満足の向上)という “成果” が伴ってこその施策なわけです。

 

一方、伝統的な日系企業の多くは、残念ながら、以下のような思考回路を取るところがほとんどです。

 

AIをベースにしたデータアナリティクスが流行っているぞ! 
これに取り組んでおかないと、イケてない企業だと思われそうだぞ!
成果はよくわからんけど・・・、ま、グーグルとかもやってるし、なんかいいことあるっしょ!
∴ HRテックを積極活用しよう!

 

やや大げさに書いているものの、大枠は、こんなもんです。これではいかんですわな・・・、(;´д`)トホホ。

 

グーグルの強さというのは、成果のあるなしをはっきりさせることができるレベルのデータの蓄積・技術力・分析力があることに加え、上記のような思考回路を、リーダーだけではなく、現場にいるメンバーに至るまで有している点が大きい。伝統的な日本企業は、大きく周回遅れとなっていると言わざるを得ないでしょうね・・・。

グーグルを変えたある実験とは?!


話を戻しましょう。上記で述べたことも一例ですが、グーグルでは、経営者のみならず、現場の末端にいたるまで、物事の本質を追究しようという強い思い = パッションが存在します。例えば、数年前に、グーグル社内で流行った命題に、以下のようなものがあります。

 

人々がどのように決断を下し、結果、その決断は最善のものとなっているか?

 

これを、人事の採用業務に置き換えてみましょう。世界有数の頭脳が応募してくるグーグルの採用において、これまた、世界有数の能力を持った人事担当者が、多数の書類審査や面接を経て採用した社員が、当初の目論見通りに高いパフォーマンスを発揮してくれているか否か? もしかしたら、変なバイアスがかかって、歪んだ意思決定をしているのではないか? ・・・ そういった懸念を、ITを使って客観的に分析しようというのが、グーグルにおけるHRテック活用施策の始まりでした。

 

実は、グーグルの人事部門における上記のような活動が盛り上がりは、ニューヨークタイムズ紙に取り上げられた ある実験がきっかけでした。

 

【実験内容】

学歴やこれまでのキャリア、資格などは全く同一のスペックを持った、男性と女性2通りの履歴書を作り、アメリカトップクラスの企業や大学の研究所に同時にアプライ(中途採用の募集に応募する)した場合、どのような反応が返ってくるか?

 

【結果】

・男性の方が採用される率が高かった
・オファーがあった場合についても、男性の方が、報酬が高額だった
・さらに、オファーがあった場合について、男性の方が 「このポストに適切な人材である」「是非一緒に働きたい」「彼のアドバイザーになりたい」といった、定性的な評価が高かった

 

男というものは・・・、本当に了見が狭いなぁ・・・


みなさん、いかがでしょうか。この実験結果の中で、私は3つ目の記載「(男性合格者の方が)定性的な評価が高かった」に、すごく衝撃を受けました。上2つ、(男性の方が)合格率そのものが高い、報酬が高い、というのは、アメリカ社会であっても、現時点はそうなのかな、と思うのです。それ自体、決して、良くはないのですよ、だからフェアになるよう、是正しないといけない。でも、現実問題として、現時点ではよくない歪みが依然として存在するのは事実だと思うのです。

 

3つ目がショッキングなのは、多分、男性というのは、無意味でどーでもいい定性評価を追加することによって、

 

ビジネス社会における自分(男性)の既得権益を守っている

 

のです。男性の私が言っているのだから間違いない、この定性評価は、男性の自己保身以外の何物でもない! なんとまぁ、了見の狭い、こっすい話じゃありませんか! 女性の採用率や昇進率が上がっても、組織にのさばる、定性的かつ旧態依然としたしょうもない考え が変革されなければ、真のダイバーシティって実現しないと思うんですよねぇ。

グーグルではこれを、
 

Unconscious Bias (無意識の偏見)

 

と呼んで、企業価値を損ねる阻害要因と捉え、徹底的に排除することを従業員や株主に約束しています。その排除する手段の1つが、HRテックを使った、恣意性の排除というわけです。なんと、カッコいいじゃないっすか! グーグルって、テクノロジーやビジネスモデルもすごいんですが、私はこういう企業姿勢がすごく優れていると思っています。

 

次回のコラムでは、具体的なHRテックの取り組みを、グーグル以外の先進企業の実例で見ていきたいと思います。では!

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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