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タカシの外資系物語

外資流! リーダーが備えるべき定量的要件とは?(その5)2017.12.19

リーダー = トランプ大統領、初めての・・・?!


(前回の続き)今回のコラムでは、リーダーが備えるべき定量的要件について、過去に私が実際に評価された指標を紹介していきたいと思います。

本題に入ります前に、最近気になったことを少し・・・。


アメリカで約30年ぶりの抜本的な税制改革が成立間近となっています。法人税減税の20%への引き下げをはじめとする税制改革法案が、来週にも可決の見込みということで、それを好感した株式市場も大きく値を上げています。


アメリカの法人税が下がるということは、マクロ経済に及ぼす影響も大きいということで、各国の政界・財界も注目するところなのですが、この法案可決に際しては、もう1つ重要なことを含んでいます。それは、

 

「トランプ大統領が初めて通した公約事案」である

 

という点です。

 

実はトランプ氏、大統領に就任してもうすぐ1年になりますが、これまでに自己が掲げた公約を1つも可決させることができずに来たんですねぇ。過去に、就任後1年間のうちに、公約を1つも通せなかった大統領とはほとんどいないらしく、トランプ大統領も相当焦っていたとのこと。ま、この法案が通れば、少なくとも財界からの信認は得られるわけで、綱渡りのトランプ政権にしてみれば、首の皮一枚つながったという感じなのでしょう。


政治家の最大の仕事の1つは、「税金の使い方を決めること」です。で、政治家の評価とは、どれだけの公約事案を可決させたか? に求めるべきだと思っています。ここで、政治家をリーダーに置き換えても同じことが当てはまるわけでして、成果の上がらないことで話題を振りまくリーダーなど必要ないわけで、やはり定量的に評価することが重要であることを再認識する次第です。

外資でいう具体化・定量化とは?!


具体的に話を進めるために、リアルな事例をご紹介することにいたしましょう。 以下は、私が過去に所属した外資系企業において、パートナー(役員)昇進時に私のボスが書いてくれた 推薦文(Soundings)です。文中の、“He” というのは、私(タカシ)を指しています。訳はみなさんご自身でトライしてみてください。


[
People Leadership]

He has instilled in his staffs a sense of confidence and trust, so he has actively developed high performing practitioners and addressed poor performance in a timely and constructive way. Also, he has served as mentor for staffs. He has actively engaged not only in recruiting activities but in programs to minimize attrition.

いかがでしょうか? 実は私、この文章に触れるまで “instill” という単語を知りませんでした・・・(T-T)。


外資に勤めていて痛感することの1つに、「フォーマルな英文を知らない」というのがあります。ま、これまでに学んだ経験がないので、仕方ないといえばそうなんですけどね・・・。日本語ほどではないですが、英文にもフォーマルな文語体という感じの単語や文体があります。そういうのは、文章丸ごと覚えてしまうしかないので、機会あるごとに意識的に丸暗記することをおススメします。


さて、この文章自体は、極めて抽象的・定性的な記載なのですが、実はその背後には、具体的・定量的な数字による裏付けがあります。つまり、目標となる数値を達成してはじめて、推薦文を書いてもらえるということです。


具体的な数値の達成なくして昇進なし!・・・ ま、当たり前といえばそうなんですが、日本企業の場合には、必ずしもそうはなっていない。例えば、営業部門なんてのは数値化しやすい一方で、本部や企画部門などは、学閥とか、役員の覚えめでたき人とか、そういう抽象的・定性的な事柄で、昇進が決まってしまうことが多いように思います。ならばいっそのこと、「本部系役員は東大卒であること」と明言すればいい。そうすれば、具体的・定量的になるわけで、条件が明示されているから、だれにでも理解できる。外資でいう具体的・定量的というのは、そういうことなんですよ、実際のところ・・・。

タカシが昇進時に達成したリーダーシップ基準とは?!


では、上記の文章の背後に隠れた具体的な数値目標を見ていきましょう。


(1)   he has actively developed high performing practitioners

・何人の部下を上位レベルに昇進させることができたか

・部門の人員に支払われたボーナスの総額 前年→今年比 = ボーナスが伸びたということは、メンバーのパフォーマンスが高かったということ


(2)   addressed poor performance in a timely and constructive way

・パフォーマンス下位20%の人材のうち、何人を上位の評価に戻すことができたか


(3)   he has served as mentor for staffs

・mentee(私から見て、メンタリングをしている部下)の人数 ← ちなみに私は、パートナーに昇進する直前、100人(!)のmenteeを抱えていました。こういう活動を通じて、緩やかな派閥というかコミュニティを作っていくわけです


(4)   He has actively engaged not only in recruiting activities

・新卒採用、中途採用の面接回数

・自身が紹介した中途採用者(実際に入社した人数)


(5)   in programs to minimize attrition

・パフォーマンス下位20%の人材のうち、何人を解雇できたか ← 寒いわーーっ!


ま、こんな感じですね・・・。組織のパフォーマンス向上から、採用、メンタリングまで、ほぼほぼ網羅されていると思います。かつ、具体化・定量化されている・・・、それが重要なんですよね。


これをお読みのリーダーのみなさん、あなたはどれだけの数値を達成できましたか? 「よくわからん・・・(T-T)」という方、是非来年は、こういう観点で自身のリーダーシップぶりを評価されてはいかがかと思います。では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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