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タカシの外資系物語

外資流! “コンプラ違反” をなくす方法(その1)2017.11.07

コンプラ違反を整理しよう!


最近、企業の大規模な “コンプライアンス違反” が話題になっています。コンプラ違反を犯した企業は、社会的信用を失うばかりでなく、取引の激減・株価急落などの事態を招き、一気に経営危機に直結する場合も多く見られます。

一方で、外資系企業に勤務していると、日本企業や日本社会における「コンプライアンスに対する考え方・対応」に関して、違和感を抱くことが少なくありません。今回のコラムでは、その違和感を明らかにするとともに、日本企業が取るべき方策について、考えてみたいと思います。

話を進める前に、少し整理をしておきたいと思います。“コンプラ違反” と一括りに言われますが、内容については “2つのレベル” が存在します。それは、

「(1)(明らかな)法令・規則違反」と「(2)モラル違反」

です。実は、この2つは複雑に絡み合って存在するため、ごちゃまぜにして議論される傾向が強い。最近話題になった、政治家の事例で説明したいと思います。

秘書に対する暴言・暴行(したかもしれない)事件 ・・・ 「この、ハゲーーーっ!」で有名になった事件ですが、事の本質はハゲではなく、暴行(したかもしれない)にあります。暴行は犯罪ですからね。よって、この事例は、(1)法令・規則違反に該当します

不倫(したかもしれない)事件 ・・・ これは、“法令・規則” ではなく、“倫理” ですので、(2)モラル違反に該当します

もちろん、どちらもよろしくはない! しかし、強いて言うなら、よりヒドイのは(1)法令・規則違反の方でしょう。明文化されている法律・規則・ルールというものを、万人の前で破っているのですから。また、消費者や取引先などのステークホルダーに対して、悪影響を及ぼす可能性が高いのも、(1)の方が大きいといえます。以下では、(1)について議論を進めたいと思います。

ちなみに、個人的には、(2)も許せないと思っています。(2)が悪質なのは、モラルというのは明文化できないので、それをいいことに、居直ったり、あいまいにしたりするケースが多く存在する点です。モラル違反というのは、選挙に勝ったからと言って、消えるものではありません。それを胸に刻んで、真摯に政治活動を行ってもらうことを願ってやみません。

さらに整理して・・・、見えてくるものとは?!


「本当に、申し訳ございません・・・!」

報道陣を前に、大企業のトップが深々と頭を下げる様・・・、見ていて、あまり気持ちのいいものではありませんよね。ここ数か月ほどの間にニュースになったコンプラ違反(法令・規則違反)を、以下に列挙してみましょう。

(1) 危機対応融資(震災で被災した企業を支援するため、優遇金利を適用した融資制度)の不正問題(大手金融企業)
(2) 品質改ざん問題(大手鉄鋼会社)
(3) 新車検査において、無資格の検査員が対応していた問題(大手自動車会社複数社)

さて、上記(1)~(3)はいずれも法令・規則違反に該当するわけですが、全てが同じというわけではありません。では、どれが違うカテゴリーに分類されるでしょうか? これは正解という類のものではないので、あくまでも意見として聞いていただきたいのですが、上記(3)は、ある点において(1)(2)とは大きく異なります。

まず、(1)(2)は、既に実害を与えています。(1)は、制度に税金が使われており、本来適用されるべきでない企業に対して、税金による補助がなされたことになります。(2)は、品質数値の改ざんですから、悪質性は明らかでしょう。

一方、(3)は他の2つとはちょっと違う。もちろん、無資格の検査員が対応していた点は問題なのですが、だからといって、すぐに何か問題が起こるかといえば、そうではない。対象となる自動車は、今日もビュンビュン公道を走っているわけです。

反省しつつ、リカバリをはかる


現実には、無資格の検査員が新車検査に関与していたとしても、実害はあまりないのだと思います。そもそも新車を検査する完成検査員というのは、“自社認定” なので、公的な資格というわけではない。自動車会社が能力のない人を自社認定していたとしても、われわれ消費者には認識できないわけです。

 

「これはルールの問題だよ。ルールが現実的でないのだから、それを変えるべきだと思う」

 

これが、アメリカ人同僚の意見です。もちろん、あるルールが存在しているにもかかわらず、それを遵守しなかったことは、猛省すべき事項です。しかし、何らかの出来事を通じて、ルールが実態を正しく表現していないことがわかったならば、“ルールそのものを変更する” ことも考えた方がいい。これが、グローバルの発想です。

 

実際に、何十万台の車に対してリコールを実施したとして、そこには多大なコストがかかります。これは、GNPにヒットしない、言うなれば無駄なコストです。ならば、1つの発想として、起こったことは真摯に反省すべきも、このコストを、もっと有意義なことに使ってはどうか。例えば、社会をお騒がせしたお詫びとして、寄付や社会貢献にお金をかけるとか、そんな対応があってもいいと思います。少なくとも、私がユーザーなら、その方がうれしいと思うので。

 

とかく、日本企業は、コンプラ違反を出した際に、過度に凹みがちです。もちろん、凹んで、反省してもらわないと困るのですが、一方で、前向きな発想でリカバリをはかるという観点がほとんどない。これが、日本社会における、コンプラ対応の問題点の1つだと思います。

 

次回のコラムでは、コンプラ違反を出さないための方策について、話を進めたいと思います。

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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