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タカシの外資系物語

夏休みは本を読もう! タカシの“日米”読書考(その3)2017.08.29

君はポーターを読んだか?!


(前回の続き)さてさて、みなさん、“宿題”はやってもらえましたかねぇ~・・・


経営戦略や組織改革、リーダーシップに関するビジネス本には、以下の通り、いくつかの“類型”が存在します。
 

(1)重厚長大型 ・・・ 経営学者などが、自己の理論を解説したもの

(2)やさしく解説型 ・・・ (1)の解説本

(3)最近のトピック型 ・・・ ビジネス業界における最新トピックに特化して紹介

(4)ドキュメンタリー型 ・・・ 実際に起こった事実に基づいて、知見や教訓を紹介

(5)寓話型 ・・・ フィクション の話に基づいて、知見や教訓を紹介
 

さて、読書を進める上で、どの類型を、どの程度読み進めればいいのか? 私の場合は、
 

(1)(3)(4)をバランスよく読み進め、ときどき(5)にも手を出す
 

という感じでしょうか。ポイントは 「(1)を避けない」「(2)には手を出さない」ということです。
 

例えば、マイケル・ポーターの競争戦略理論を理解したければ、原著の『競争の戦略』(ダイヤモンド社)をきちんと読め! と言っています。
 

「えーーっ! そんなのかったるいじゃん、結局のところマイケル・ポーターといえば“バリューチェーン”の話なんだから、簡単に解説してある本で十分だと思うけど・・・」
 

というアナタ、残念ながら、そのような読書スタイルでは、大した知識は身に付かないし、定着もしません。仮に、「マイケル・ポーターといえば?」「バリューチェーン!」といった感じで、早押しのクイズ番組に出ることが目的ならそれでもいいでしょうが、そんなしょうもないことを目的にしている人はいないはずです。

腱鞘炎になってでも、原著を読む理由とは?!


(1)を読むうえで、重要なことは、

 

「経営理論と実際のビジネスケースとを相互にリンクして理解する」

 

ということ。どんなケースをもとに当該理論が考案され、他のケースも応用する。留意すべきは、これこれだ・・・ということが、(1)には書かれています。それを理解した上で、実際に、自分が関与している事業に当てはめることができなければ、ほとんど意味がありません。受験勉強や資格試験をやっているわけではありませんからね。

 

この手の原著は分厚いし、電子書籍化もされていないことが多い。通勤電車の中で、気軽に読めるようなものではありません(手首が腱鞘炎になる!)。よって、自宅や会社の休み時間に読む。数週間、数か月かけて読む、そういうスタイルで臨むことが重要です。


(3)(4)は、どちらかというと、“賞味期限”が短いものが多い。一方、ビジネス上の宴席などで、話題になることもある。よって、必要なものは読んでおいた方がいいと思います。(3)(4)についても、可能な限り、解説本には頼らない方がいいと思います。解説本といいのは、前回のコラムでお話ししたおススメ本と同じでして、結局は、書いた人独自の興味や視点に依存します。自分なりの視点で内容を消化する練習をするためにも、自力で原著を読みましょう。

 

さて、(5)の分野って、何でしょう? これは、架空のストーリーを使って、やや難解な経営理論や学説を説明するというものです。フィクションとはいえ、経営理論を実際のケースにリンクして説明しているので、非常にわかりやすい。また、自分自身のケースに応用する際にも、イメージがつきやすいという意味で、私もよく読んでいる分野の本です。(1)の敷居が高いなぁ、と思う方は、ぜひトライしてみてください。

 

この夏、(5)の類型に当てはまる本で、出色だったのが、宿題に出しておいた『ナディアが群れを離れる理由』(ダイヤモンド社)というわけです。

タカシのおススメ 寓話本


みなさん、この本読まれました?! ま、ストーリー自体は大したことはないのですが、この本が素晴らしいのは、コッターのリーダーシップ論を非常にわかりやすく説明している点です。

 

コッターのリーダーシップ論というのは、「変革を成功に導く8段階」が有名なんですが、実はこの理論、日本ではあまりメジャーではない。少なくとも、ポーターは知ってても、コッターはよくわからん・・・ という人が、日本には多いように思います。一方で、アメリカに行くと、ポーターよりも、コッターの方が有名です。コンサルだけではなく、一般のビジネスパーソンも、コッターのリーダーシップ論というのは、それなりに理解している、そんな印象が強いです(コッターの「変革を成功に導く8段階」については、別の機会にお話しします)。で、日本でもコッターを有名にしたくて、この本を紹介した次第。帯には、小池東京都知事の推薦文も入っているので、それなりの人は、やはりこの本を読んでいるのです。ちなみに、コッターの寓話本としては、『カモメになったペンギン』(ダイヤモンド社)もおススメです。

 

従来、(5)寓話型は、欧米が先行していました。『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン 扶桑社)、『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャーインスティチュート 大和書房)なんてのが有名で、私もこれまでに数回読んでいます。

 

最近、日本でも寓話型の本が、ビジネス本の主流カテゴリーになりつつあります。最近では、アドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』(岸見一郎 ダイヤモンド社)が大ベストセラーになりました。ドラッカー理論の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』も、センセーショナルでした。広い意味では、『夢をかなえるゾウ』シリーズ(水野敬也 ミズノオフィス)も寓話型の名作です。

 

ちょっと毛色は違うのですが、私からのおススメ本としてもう一冊『「アポロ13」に学ぶITサービスマネジメント』(谷誠之・久納 信之 技術評論社)をご紹介したい。この本は、トム・ハンクス主演の「アポロ13」という映画を見ながら、ITサービスマネジメントの一連の流れを説明するという画期的なものでして、実は、私のチームでの必読書に指定しています。是非みなさんも、手に取ってみてください。では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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