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タカシの外資系物語

No ? Yes ! New York !!(その3)2017.06.27

『ミス・サイゴン』幕間に起こった事件とは?!


(前回の続き) 久しぶりのニューヨーク出張! 仕事を終えて、楽しみにしていたミュージカル『ミス・サイゴン』の観劇中、私は何ともいえない体験をしたのです・・・
 

感動の第一幕を終えて、第二幕を待っている間、私は会場の様子を窺っていました。私が座っているメザニン席(中二階のバルコニー席)や一階のオーケストラ席などの高額な席は、やはりその大半を白人が占めていました。私を含め、アジア人や黒人はチラホラという感じ。これは、本人の経済力とは相関していないように思います。つまり、そういうライフスタイル=平日の仕事の後に観劇をするという習慣が、白人以外にはあまりない、ということ。ま、だからといって、何十年も前の白人至上主義の時代ではありません。臆することなく、素晴らしいエンターテインメント楽しむ権利は、肌の色を問わず、だれにだってあるはずです!
 

少し蒸し暑くなってきたので、私は自分のジャケットを脱いで、きれいに畳んで、膝の上に置いて座っていました。と、隣の白人カップルの男性も、同様に、ジャケットを脱いだのです。「やっぱり、ちょっと蒸し暑いのね・・・」と思ったその瞬間、彼は信じられない行動に出たのです! なんと、彼は自分が脱いだジャケットを、私に渡したのです!!
 

私は何が起こったのか理解不能状態に陥ったのですが、意識のどこかで、どのような反応で切り返そうか、考えていました。
 

(1)「はいはい、脱いだ洋服は、洋服係のタカシじーさんに渡してねーー、って、なんでやねんっ!!」と、ノリツッコミをする
 

(2)「何しとんねん、このおっさん!!」と即座に投げ返す

(3)そのまま洋服を預かって、何事もなかったかのように過ごす

白人のおっさんは、何がしたいのか?!


私は(3)にしました。(1)はいわゆる関西のノリですから、場の空気と巧みなコミュニケーション能力を有します。英語ではまず無理ですね。(2)は単純に、トラブルになったら困るということで却下・・・。
 

で、私にジャケットを預けたこの白人のおっさん、私がそのまま何もしないのを見てどうしたか?

Oh !  Sorry !!
 

と大げさなアクションをして、自分のジャケットを私の膝から取り戻しました。幕間で会場全体が騒がしかったのか、周りの観客は、無反応でした。
 

結局、何だったのか? おそらくは、いわゆるアメリカン・ジョークというやつなんでしょう。他愛のない話だといえば、その通り。
 

一方で、私がもし白人だったら、彼はそんなしょうもないアメリカン・ジョークを仕掛けてはこなかったでしょう。背の低い、いかにも日本人という風情の男が、隣でジャケットを丁寧に折りたたんで、膝の上に置いている。それはあたかも、ホテルのボーイのようないでたちで・・・
 

正直、私はかなりムカついたんですけど、とはいえ、ここで怒っても勝ち目はない。その前に、英語で何ていえばいいのかわからない。実はそれ以上に、くだらんアメリカン・ジョークを放ったこの男性が、哀れで仕方なかったのです。ウケる、ウケない、ではなく、純粋に、このアメリカ人に対して悲哀の感情を持ったのです。

『アメリカン・ドリーム』の終焉


『ミス・サイゴン』に、こんなシーンがあります。ベトナム戦争が中途半端に終結した後、アメリカに戻った元米兵クリスは、米国人女性のエレンと結婚をします。心中では、ベトナムに残してきたキムのことを思いながら、悪夢にうなされる日々を過ごすクリス。一方で、キムはクリスとの間にできた子供を生きがいに、夜の世界に身を寄せて暮らしています。いつか、クリスが迎えに来てくれることを信じながら・・・
 

数年後、アメリカにおいて、ベトナム戦争時に、アメリカ兵とベトナム人女性との間にできた子供が多数、孤児になっていることが問題になります。クリスもその対象者だということで、クリスとエレンは、キムがいるバンコク(混乱するベトナムから逃げた)に向かいます。
 

バンコクのホテルに到着したクリスは、エレンを部屋に残して、キムを探しに、夜の街にでかけます。ホテルの部屋に一人残されたエレン。そこに、キムがやってくるのです。部屋のドアに立ちすくむキムに、エレンが一言。
 

「ルームメイクは頼んでないわ、出て行ってちょうだい!!」

劇中、エンジニアが歌う『アメリカン・ドリーム』というパフォーマンスは、ミュージカル史上においても、屈指の名場面と言われています。世界中のだれもがアメリカにあこがれ、アメリカを目指す。それは1つの考えとして正しかったのでしょう。
 

そういうアメリカ至上主義の考えがある一方で、ベトナム戦争以降、もうアメリカはそのような存在ではないないことを理解していた人々もたくさんいました。この『ミス・サイゴン』の作者であるクロード=ミシェル・シェーンベルクとアラン・ブーブリルなどは、その代表格だと思います。わかっている人はわかっているし、事実、アメリカは世界一ではなくなってしまいました。

昨年、“アメリカ・ファースト”を標榜する大統領が選ばれました。時代は、アメリカと中国の2強時代にすでに移行しており、10年以内に、中国が覇権を握ることが確実になっています。
 

アメリカにとって必要なのは、『ミス・サイゴン』に描かれるようなアメリカ人の傲慢を、私にジャケットを預けるといった下品なジョークを繰り出すアメリカ人の無神経さを、改めることではないでしょうか。アメリカン・ドリームのメッカであるニューヨークを久しぶりに訪れて、なんだか切ない気分になってしまった、アジアのタカシでした・・・。

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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