グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

PDCAの本質と外資系(その1)2017.05.16

ブームとしてのPDCA


“PDCAサイクル” という言葉、みなさんも耳にしたことがあると思います。今回のコラムでは、この “PDCA” に関し、特に日本企業において明らかに欠落していると思われる要素 = 日本人の誤解についてお話ししたいと思います。

 

PDCAサイクル(または単にPDCA)というのは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する管理手法のことを指します。以前からそれなりに有名な概念ではあったのですが、ビジネスパーソンのほぼ全員が知っている・・・とまではいかないレベルにとどまっていたように思います。言葉を知っていても、内容に関しては十分に理解されていませんでした。

 

それがここ最近、PDCAに関する認知度が急激に上がってきました。その理由として、PDCAに関して、いくつかのベストセラー本が出たことが大きいように思います。大きな本屋さんに行くと、PDCAというキーワードだけで、書棚が一列埋まる程度の本が発行されており、認知度を高めるのに一役買っているのがよくわかります。

 

それともう1つ、いわゆる業界団体のような組織が、このPDCAという言葉を使うようになったことも大きい。例えば、私がサービスを提供している金融業界では、その監督官庁である金融庁が、数年前からPDCAという言葉を積極的に使うようになりました。するとゲンキンなもんでして、それから1年も経たないうちに、金融機関もこぞってPDCAを使うようになってきた。

 

ま、これはこれで、私はいい動きだと評価しています。その業界を牽引する監督官庁やリーディング・カンパニーが、優れた経営手法を積極的に紹介し、取り入れていくことで、業界全体の底上げをはかっていくというのは、1つの経済発展モデルに相違ないからです。

鬼速の前に重要なこと


さて、以上のようにPDCAが一般化されていくと、その概念が内在しているリスク = 誤解を孕んだまま理解される等も、一般化していくことになります。特に、PDCAのような経営手法の場合、その概念は、文字として、抽象的にしか伝播させることができません。このような場合、それが伝わるプロセスにおいて、そもそもの重要な概念が軽視され、聞き手・受け手にとって耳触りのいい部分だけがことさらに強調されるようなことが起こる。私はこれを “概念のガラパゴス化” と呼んでいるのですが、PDCAに関しても、明らかにそのような状況が起こっているように思われます。

 

例えば、PDCAサイクルを回すスピードについて。そもそも、日本の組織は管理サイクルが冗長で遅い、という欠点があるものですから、PDCAサイクルを回す際にも、スピード感が重要であるという論点が出てきます。これはこれで正しい。企業経営にとってみれば、いいこと = 顧客のためになる、従業員のためになる、収益が上がる、株主のためになることは、できるだけ速くやった方がいいに決まっています。日本企業は欧米企業に比して、何事に関してもスピード感に劣るのは確かですから、スピードに十分留意して進めることが必要でしょう。

 

だから “鬼速” なんていうキーワードが出てくる。従来では考えられなかったような、目にも止まらない速度でPDCAを回せ・・・、ということなんでしょう。これも正しい、ある “前提条件” が満たされていれば・・・。

 

その “前提条件” というのは、「正しいPDCAを回す」ということです。PDCAを正しく回す、という前提においては、スピード感も重要だということ。わかりやすく言い換えますと、PDCAを回すということにおいて、“正しく(正しいプロセスで)回す” と “高速で回す” は、双方とも重要だが、どちらがより重要かというと、“正しく(正しいプロセスで)回す”方だ、と言っています。

 

「そんなの当たり前だろ?!」という読者のみなさん、本当に当たり前でしょうか?PDCAを高速で回す以前の問題として、正しいPDCAのプロセス = PDCAという概念の “肝” を理解していない方が非常に多い。本質を理解せずに、表層的な概念を高速で多数回してみても、それは「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」以上のことにはなりません。無駄とは言いませんが、効果が上がる可能性という観点では、極めて低いと言わざるをえないと思います。

H先生のPDCAは、一味違う?!


では、PDCAにおいて、スピードよりも重要な、“肝” = 本質とは何か?私はこれを、トヨタ自動車の元幹部から聞きました。そのときのお話をしたいと思います。

 

その日私は、あるセミナーで、「トヨタ生産方式」に関する講義を受けていました。以前からお話ししている通り、私は自分の現業に直接関係のないセミナー等は、休暇をとって受講する/費用も自腹というポリシーですので、このセミナーも自腹で受けていたと記憶しています。自腹だから、絶対に忘れないんですよ、聞いたことは。

 

講師の方は、トヨタの工場、つまり生産現場に長く勤められた方でして、お世辞にも、それほど有名な方ではありません。本とかも、書いていらっしゃらないし・・・。だからこそ、私はこの方のセミナーに興味を持ったんですがね。

 

コンサルティング業界に身を置いていると、世間の方が抱いているであろう、ある勘違いに気付きます。それは、「本をバンバン出している人が、その内容の本質を理解している可能性は、極めて低い」ということです。どういうことか?ちょっと補足しましょう。

 

コンサルタントの場合、本を何冊も出している人は、以下のいずれかに該当します。

 

①     実務や経験が豊富で、本業でも超売れっ子なんだが、夜間とか休日に、ヘロヘロになりながら本を書いた人

②     自分はほとんど書かずに、部下に書かせた人

③     自分で書いているが、実務や経験はほとんどなく、既出情報を単にまとめただけの人

 

残念ながら、世の中の大半のコンサル本は、①ではなく、②か③です。で、②の場合には、その人本人よりも、その人の部下に話を聞いた方がいい。③の場合は、話を聞く意味なし・・・・、ということになります。

 

ということで、私は、本を出しているような有名人の話には、あまり興味がありません。この日の講師の方は、本などは書いていないですが、明らかに実務と経験が豊富だったので、自腹で会社を休んででもお話を伺おう、という気になった次第です。

 

で、その講師、ここでは仮にH先生としますが、H先生の講義において、頻繁にPDCAということ言葉が出てきました。なるほど・・・、やっぱり、トヨタの生産現場でも、PDCAというのは重要なんだろうなぁ・・・と感心していると、あることに気付いたのです!それは、H先生がホワイトボードに書くPDCAという文字のうち、最後のAだけが、他の文字よりも1.5倍程度大きいんです!

 

私 「先生、1つ質問なんですが・・・そのPDCAのAが大きいのは、重要だということを表しているんですかね・・・?」

H先生 「あ、これね。2つあるんだよ・・・」

私 「ふ、2つ ある・・・って、何が?」

H先生 「2つあるの、Aが!だから、大きくしているの。もっとわかりやすく書けば、PDCAAっていうこと!!」

 

ガビーーーーーーーーン! 緊迫の次回に続く・・・。あ、ヒントを言っておきますね。Wikipedia のPDCAの説明を読むと、Aが2つの意味がわかるかもしれませんよ!では。

(次回続く)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム

合わせて読みたい

---