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タカシの外資系物語

トランプ大統領と外資系における “役割” (その1)2016.12.06

トランプ大統領誕生に対する雑感


ここ数か月、転職後初のプロジェクトを組成し、日本とシンガポールを往復していました。48歳にしての転職・・・、口ではカッコいいことを並べてはいたものの、正直言うと、めちゃくちゃ心配でした・・・(T-T)。ま、なんとか首尾よく転職後の立ち上がりをこなしたことに安堵しながら、久しぶりの海外プロジェクトに戸惑いながら、日々を過ごしています。

 

さて、私が仕事で悪戦苦闘している最中に、おそらく今年の “世界10大ニュース” で、ぶっちぎりの1位となるであろうニュースが起こりました。そう、トランプ大統領の誕生です。

 

トランプ大統領の評価については、今はなんともいえません・・・、少なくとも、これが私のスタンスです。なぜなら、政治家の評価というのは、結果で測られるべきであって、予断は意味がないからです。選挙中に暴露された、女性を軽視するような過去の発言については許されないことであり、彼は大いに反省すべきだと思います。ただ、あの音声自身が盗聴であったことについてはあまり取り上げられていない。発言は品性の問題ですが、盗聴は犯罪ですからね。個人の品性を暴くために、盗聴しちゃいかんだろう。そして、マスコミがその犯罪性を無視するのもいかがなものか、と思います。

 

また、クリントン氏の私用メールの問題は、国家の存亡を揺るがす可能性もあるわけで、これもレベルが違う(韓国の朴大統領の問題も、根本は同じ・・・)。私はトランプ氏の支持者ではありません(というか、どちらかというと嫌いです・・・)が、彼を貶めようとしたキャンペーンで使われた策や、クリントン氏の私用メール問題との不釣り合いな(ピントをはずした)比較については、苦々しいものを感じていました。

 

違う見方をすると、アメリカ国民は、そんなネガティブ・キャンペーンに流されなかった、ということです。アメリカの大統領選を見ていて、毎回驚かされるのが、アメリカ人の政治参画に対する積極性です。老若男女問わず、国民全体が、自分たちのリーダーを選ぶという行為に、真剣に向き合っている。結果、候補者が拮抗する場合には、本当に僅差で結果が決まる。

 

一方で、わが日本はどうか?トランプ大統領の誕生を嘲笑している人たちのうち、果たしてどれだけが選挙に行って投票をしているのか?政治家に解決を託すべき社会問題に、どれだけが正面から対峙しているのか?自民党をぶっ壊そうとした小泉政権や、民主党が与党に取って代わった歴史的事実を踏まえても、結局は、評論家よろしく批判しかできない国民性に、半ば諦めのような感覚を覚えてしまうのは、私だけではないでしょう。

 

“役割” と “リーダー” について


さて、今回のコラムでは、“役割としてのリーダー” について、考えてみることにしましょう。ここで注意いただきたいのですが、“リーダーとしての役割” とは違う、ということ。以下にその違いを示します。

 

  • ●  役割としてのリーダー ・・・ 部長、課長、係長、といった職位。体制図に記載されるBOXに近い概念
  • ●  リーダーとしての役割 ・・・ リーダーがすべき仕事、人事、差配、目標設定 等。リーダーが身に付けるべき素養、責任感、大局観、包容力 等

 

いわゆる “リーダーシップ論” で語られるのは、後者です。リーダーたるもの、どうあるべきか? リーダーを育成するには、どうしたらいいか? 云々・・・

 

前者については、日本においては、あまり話題にされることがありません。もちろん、部長、課長等、それぞれの役割は、固有の職務分掌や権限を有しており、“できること” “すべきこと” について詳細な定義がなされています。ところが、“その役割には、どういう人がアサインされるべき” という定義はされていない。なぜなら、多くの日本企業、というか、日本の組織全般において、上位のBOXには、その組織において、より長く、かつ、それなりの実績(というか、失敗をしなかった経験)を積んだ人がアサインされるということが、暗黙の了解で決まっているからです。

 

一方、外資においては、当該組織に長く所属していることと、上位のBOXにアサインされることの間には、ほとんど因果関係がない。むしろ、トップに近いような、最上位のBOXに位置する人ほど、外部から招聘されることが多いのが普通です。

 

“プロ経営者” と “大統領”


最近、“プロ経営者” という言葉が、日本でも取り上げられるようになってきました。その背景には、サントリーの新浪さんや資生堂の魚谷さんのように、その企業での経験が一切ない方が、企業のトップとしてアサインされる事例が増えてきたからです。最上位のBOXに、外部からの招聘者がアサインされる・・・、というのは、こういうことを指します。

 

もちろん、“プロ経営者” という文脈では、ユニクロの柳井さんや、富士フィルムの古森さんなども話題になることが多い。これらの方は、当該組織の設立者であったり、当該組織に長く在籍されたりという方々です。よって、外からか、内からか・・・という議論ではなく、“その役割には、どういう人がアサインされるべき” という定義を満たした方と捉えるべきなのでしょう。

 

翻って、トランプ大統領について再度考えてみると、日本人がトランプ氏に抱く印象の1つに、「政治経験がない素人」というものがあります。日本の場合、衆議院議員としての当選回数が一定以上である人しか、首相になったことがない。その背景には、当選回数 = 政治経験という暗黙の了解があるのです。一方、アメリカには、それがない。政治家としての経験があろうがなかろうが、そのタイミングにおいて、最も適した人が選ばれる。この違いは、非常に大きい。

 

【日米における国家トップの要件】

・日本の首相 ・・・ 衆議院議員当選回数 ○○ 回

・アメリカの大統領 ・・・ そのタイミングにおいて、最もふさわしい(変革してくれそうな)人

 

次回のコラムでは、“役割としてのリーダー” に関する、日米ビジネス社会での考え方の違いを例示し、それぞれのメリット・デメリットと、外資に所属する場合の留意点についてお話ししたいと思います。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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