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タカシの外資系物語

英語で “デザイン・シンキング” しよう!(その4)2016.10.04

滝が流れるように開発する?!

 

(前回の続き)転職後初の英語研修は、今話題の “デザイン・シンキング”。徹底的に顧客視点に立った、この開発方法論は、私が専門とする金融業界でいうと、FinTech(フィンテック)と呼ばれる スタートアップ企業・ベンチャー企業が活用し、成功を収めています。一方、大企業においては、ほとんど活用されていない・・・大企業に “デザイン・シンキング” を導入し、定着させるのに必要なポイントとは何なのか? タカシのグループでは、この課題に関して、議論が展開されていきました・・・

 

「大企業が顧客視点に立って、デザイン・シンキングを取り入れるためには、どうしたらいいのだろう? 次は、この点について議論してみよう!」

 

システム開発の方法論に、「ウォーターフォール型(water fall)」というものがあります。これは、以下のような開発工程を、順番通り、厳格に進めていく手法です。

 

①    要件定義(システムで実現したい内容を決める)

②    詳細設計(プログラムの‘動き’までを規定した設計書)

③    開発(プログラミング)作業

④    システムテスト

⑤    データ移行  などなど

 

ここで、“厳格に” と言っているのは、「①が完全に終わってから②に進む」 という意味です。①の流れ・終わり → ②の流れ・終わり ・・・というのが滝の流れる様に似ていることから、この名称がついています。過去30年にわたるITシステムの歴史において、このウォーターフォール型開発は超・主流の地位を占めていましたから、世の中にあふれる大半のシステムは、この手法で作られたと言っても過言ではありません。

 

ウォーターフォール型開発手法のメリットは、各作業・担当者について、統率(ガバナンス)を効かせながら進めることができる点でしょう。システム開発というのはチーム作業ですから、各担当者が勝手気ままに仕事を進めてしまうと、わけがわからなくなってしまいます。各チームの進捗状況を確実に管理して、トラブルを未然に防ぐ・・・これこそが、ウォーターフォール型開発の大きな目的の1つなのです。

 

システム部門に多数のスタッフが必要となる理由

 

一方で、ウォーターフォール型には、いくつかのデメリットが存在します。1つは、管理するために多数の要員を必要とする点でしょう。開発プロジェクトに関わる全ての人々の動きを管理し、問題があれば是正する・・・これを実現するためには、相当数のスタッフを必要とします。

 

読者のみなさんの中にも、

 

「システム部門って、どうしてあんなにスタッフが必要なんだろう?」 

 

と不思議に思っている人が多いのではないでしょうか?システム部門が多数のスタッフを必要とする理由の1つが、ウォーターフォール型開発を実践するための管理要員だということです。

 

それと もう1つ、開発に時間がかかりすぎる という点が上げられます。上記の開発工程 ①~⑤ を終えるのに、最低でも半年以上はかかります。大きなプロジェクトになると、数年かかるものも、普通に存在します。営業部やマーケティング部が、「これをやりたい!」と起案したものが、実現するまでに数年かかるようでは、スピード感を必要とするこの時代、話になりません。ということで、「時間がかかりすぎる」という ウォーターフォール型の欠点を改善するために、新たな開発手法が生み出されることになったわけです。

 

大企業の仕事の進め方は、アジャイルの良さを打ち消す?!

 

新たな開発手法は、「アジャイル型(agile)」と呼ばれています。 Agileというのは、“すばやい” “俊敏な” という意味で、時間がかかりすぎるというウォーターフォール型の欠点を是正する手法として注目を浴びています。作業としては、ウォーターフォール型の各工程王を超・高速でぶん回す!というイメージで進めます。超・高速で進めることを最重視するため、以下のような点を犠牲にしてもいい・・・と考えています。

 

(アジャイル開発において、“スピード”に劣後する点 = “犠牲にしてもいい点”)

・    文書化 → しっかりした文書を作っている時間が惜しいので、フリップチャートに多数のポストイットを張り付けて写真に撮った画像とかで代替することもあります

・    結論が出なくても、先に進める → とにかくスピード感重視なので、「じゃ、今から10分で考えて!」とか言いながら、ガンガン進めます

・    万人にウケなくてもいい → 少数の尖ったユーザーにウケることを目指します

 

勘のいい読者のみなさんなら、既にお気づきだと思いますが、アジャイル式は、デザイン・シンキングと、ほぼ同義です。となると、「大企業にデザイン・シンキングを導入する」というのは、「大企業にアジャイル式を導入する」とも同義となります。で、結論から言うと、大企業にアジャイル式は、なかなか導入できません。なぜか?

 

その理由は、上記で述べた “犠牲にしてもいい点” について、大企業ではそうはいかん!=犠牲にできない!から です。大企業では、文書に残さない作業などありえませんし、結論が出なくても先に進める、などということはしません。製品・サービスも、より万人ウケするものを狙っています。つまり、アジャイルの良さを、全て打ち消すような形で仕事を進めるわけですから、アジャイルが受け入れられるわけはないのです。

 

また、アジャイルでは、考えながら、議論しながら、実際に動くもの(例えば、アプリ)を」作っていくので、凄腕のエンジニアも必要となります。となると、そういう人財を、社内に抱えておかなければなりませんが、そういう凄腕エンジニアは大企業にいません。そもそも、大企業などに入社しないし・・・。これも、大企業でアジャイルやデザイン・シンキングが定着しない理由の1つです。

 

大企業において、アジャイルやデザイン・シンキングを導入・定着するために必要なのは、社内の意識変革をすることに尽きると思います。それも、役員・管理職層の意識を変えなければなりません。意識を変える際には、危機感が共有されなければ絵に描いた餅で終わります。アジャイルやデザイン・シンキングで開発された製品やサービスにより、大企業がいかにして駆逐される可能性があるのか?それを頭の固い役員連中に理解させることから始める必要があるように思います。

 

次回、このシリーズの最終回として、デザインンキングに関する私なりのまとめと番外編として、英語の研修をうまく受講するTips(ヒント)についてお話しすることにいたしましょう!

(次回続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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