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タカシの外資系物語

日系企業の謝罪会見に見るありゃりゃ・・・(その2)2016.06.07

タカシの法律講座

 

(前回の続き)ここ最近、日本やドイツといった “ものづくり先進国” において、そのリーディング産業ともいえる自動車会社の不正・コンプライアンス違反が相次いでいます。加えて、これら企業に共通するのが、謝罪会見での稚拙さや対応不良に起因するイメージ低下やいわゆる炎上です。今回のコラムでは、日本・ドイツの企業に起こりがちなトラブルについて、米国との比較を通してお話ししたいと思います。

 

日本・ドイツとアメリカ、両者の差異とは何か? 私は、大きな差異が3つあると思っています。1つめは、「法体系の違い」です。

 

法律を少しでも勉強された方ならわかると思いますが、法律には、その記載方法の違いから、2つの体系が存在します。

 

  • ● 英米法 = 文字通り、イギリスやアメリカで採用されている体系。“やってはいけないこと”を記載する ネガティブリスト形式

(例)20歳未満の者は、喫煙してはいけない

 

  • ● 大陸法 = ドイツを中心に、それを模範とした日本でも多く採用されている体系(※)。“やっていいこと” を記載する ポジティブリスト形式

(例)20歳以上の者は、喫煙できる

 

※)ただし、現日本国憲法は、英米法をベースにしている。大日本帝国憲法が、ドイツの大陸法を模範としたため、日本の法体系の多くは、大陸法的な発想で構築された

※※)上記以外にも、英米法 vs 大陸法 の差異は様々あるが、それらについては次の機会にお話しします・・・

 

さて、上記の違いは、実務上どのような影響を及ぼすでしょうか? よく言われるのは、「英米法は、訴訟沙汰になりやすい」 というのがあります。なぜなら、ネガティブリスト形式の場合、禁止事項の全てを網羅する必要があり、少しでも不備があると、そこを盲点として突かれやすいからです。

 

「乾燥機のマニュアルに “ペットは入れるな!” と書いていなかったので、猫を入れたら死んでしまった」

「“サイドブレーキを引かずに、車を坂道に停車してはいけない!” と書いてなかったので、サイドブレーキをかけずに車を離れたら、停車中の車が動いて事故になった」

 

・・・こんなバカバカしい訴状が裁判沙汰になり、時には、訴えた方が勝ってしまうことすらある。アメリカが訴訟社会である一因は、間違いなく、英米法体系における記載方法の限界が影響していると思います。

 

規律のある “大人” 社会ほど、危ない理由とは?!

 

一方で、英米法にはメリットもあります。それは、「第三者がチェックをしやすい」ということです。つまり、やってはいけないことがズバリ記載されているので、それをやっていないかどうかを確認する作業が比較的容易かつ標準化できるのです。

 

逆に、大陸法は、第三者のチェックが難しい。「やっていい」というのは、言い換えると、「やってもいいし、やらなくてもいい。その人の自由です」と同義です。つまり、どうするかは、あなたに依存します、大人であるあなたを信用します、という発想になりがちなのです。

いきおい、大陸法を採用する社会は、規律が取れた状態になります。ま、基本的に、ある程度は個人に任せても、社会規範が維持できるような国民性がないと、大陸法は採用されにくいともいえます。

 

しかし、大陸法社会というのは、ひとたび、社会や組織が間違った方向に動き出すと、自浄作用がききにくい。なぜなら「それはダメ!」と言い出す人がいないからです。第二次世界大戦において、ドイツや日本にファシズムが起こり、だれも止められなかった・・・というのは、その最たる事例でしょう。

 

私は、今般の自動車会社における不正問題にも、同じ印象を持っています。日本・ドイツの代表企業がやっているのだから問題ないだろう、大人なんだから法令違反なんて犯さないだろう・・・、こういう意識が、われわれ国民の中にもある。客観的なチェックが入らないばかりか、組織内部から 「それはダメ!」とspeak up する人もいない。当事者自身も、悪いことをしている意識が薄い。英米法を基準とするグローバル・スタンダードの目が入ってはじめて、「しまったーーっ!・・・(T-T)」と慌てるが、後の祭り・・・という感じではないでしょうかね。

 

いいモノを作っていれば、それでいいのか・・・?!

 

日独とアメリカ、2つ目の差異とは、“品質” に関するスタンスの違いです。

 

日本とドイツは、基本的に品質至上主義をとります。つまり、

 

「いいモノを作っていれば、それでいいだろ!」

 

的な発想です。一方、アメリカはかなり違います。アメリカの場合、日独のような品質至上主義とは異なり、

 

「ヒトがモノを使うとき、どのような価値を生み出すか? - それを最大化することが最重要」

 

がポイントとなります。言うなれば、(結果としての)提供価値至上主義という感じでしょうか。

 

アメリカ的発想においては、品質は1つの要素に過ぎず、デザイン・活用シーン・イメージ・CM・キャンペーン・・・ 等々、様々な要素が評価基準となります。中でも、商品イメージ・企業イメージというのが非常に重要でして、品質よりも重視される場合が多い。「品質はどうってことないけど、タレントの○○も使っていて、COOL!」なんていう理由で、バカ売れしたりしますよね? 要は、それを購入した消費者の満足度が高ければいいわけで、そのための手段ならば、何でもする、ということです。

 

アメリカ企業においては、場合によっては、品質や性能を毀損してでも、イメージを死守する策をとることは珍しくない。イメージ戦略では、不正やコンプライアンス違反なんて論外ですし、万が一、謝罪会見を実施するような羽目に陥っても、プロの “会見コンサルタント” などを雇って、徹底的に対応します。よって、稚拙な会見で、大炎上!・・・なんてことも、ほとんどないというわけ。

 

次回のコラムでは、日本ではまだまだ珍しい “会見コンサルタント” のエピソード(実話!)と、日独 vs アメリカの3つめの差異についてお話ししたいと思います。では!

(次回続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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