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タカシの外資系物語

日系企業の謝罪会見に見るありゃりゃ・・・(その1)2016.05.31

大きな差異がなければいいのか?!

 

ここ最近のこと、自動車会社の不正問題が大きく取り上げられています。自動車に関する様々な情報(規格や性能など)のことを、「諸元(しょげん)」と言うのですが、この言葉、あまり聞きなれないですよねぇ・・・。ワープロの変換でも、候補にさえ出てこないレアワードなんですが、自動車のカタログには必ず掲載されています。英語でいうと “specifications”、こっちの方がイメージしやすいかもしれません。

 

今回問題になったのは、諸元のうちの燃料消費率、いわゆる “燃費” というやつです。燃費とは、「1リットルのガソリンで、何km走るか?」という数値でして、当然のことながら、数値が大きければ大きいほど良い! メーカーやデザインにそれほどのこだわりがなければ、燃費こそ、自動車を購入する際の、最大の判断基準となるわけでして、統一的な尺度で測る必要がある。具体的には、「国土交通省審査値」という統一基準があり、各メーカーはその基準に従って燃費を計測しています。今回の不正は、その数値を改ざん、ないしは、適切な計測方法を取らなかったという点について指摘されています。

 

今回の事件の背景や経緯、各社経営層の記者会見を見ていて、私はいくつかの違和感 を感じました。以下で、その違和感をお話ししていきますが、あくまでも私の感覚、意見ですので、それが正しいというものではありません。ただし、長く外資系企業に勤務した経験から、「ありゃりゃ・・・、この部分は誤解を与えかねないなぁ・・・」という点では共通点のあるものだと思いますので、是非参考にしてください。

 

  • ● 1つめの違和感 = 「数値を改ざん、ないしは、適切な計測方法を取らなかった」ということと、「正しい方法で計測した燃費と大きな差異はない」ということを混同している

 

ルール違反というのは、結果がどうであろうと、やってはいけないのです。大きな差異がないから、少しちょろまかしてもいいではないか・・・という発想がまかり通ってしまうと、「100万円盗むのは泥棒だが、100円ならいいではないか」「相手に怪我をさせるのは傷害だが、悪口を言う分にはいいではないか」・・・と同じになってしまいます。

 

ルールは、それを破った瞬間にNG、結果オーライというのは絶対ありえない。両者を混同してはならない。当たり前のようですが、これを肝に銘じて、記者会見等に対応する必要があると思います。

 

経営者が謝罪すべき対象とは?!

 

  • ● 2つめの違和感 = 「特定の社員がやってしまった行為」に対する謝罪と、「それを管理・統制するプロセスが機能しなかったこと」に対する謝罪が混同している

     

    経営者が記者会見の場で述べるべきは、間違いなく「管理・統制プロセスの不備」の方です。もちろん、「特定の社員がやってしまった行為」についても、謝罪は必要です。しかし、そのことを延々と話しても、建設的な話にはなりえない。ごめんなさい! と言う以上の話にはならないんですよね。

    一方、不正を未然に防ぐプロセスを構築することは、株主や消費者などのステークホルダーが、経営者に期待する役割です。だから、そっちに重点を置かなければ、そもそも、おかしい。

     

    グローバル基準では、経営に “情” は不要です。その企業にとって、不利な状況にあるときであればなおさら、状況を客観的に判断した上での “理” が必要だということではないでしょうか。

     

日本はダメでも、海外はOK!は通じない?!

 

3つ目の違和感をお話しする前に、今回問題となった企業が開いた記者会見の内容の一部を例示したいと思います。

 

(日本における燃費計測に関してやりとりがあった後で・・・)

―― マスコミ: 海外で販売している車についてはどうか?

―― 経営陣: 海外は現地のルールに従い、きちんとやっている。たとえばA国では立ち会いのもとに計測している。

 

とかく、記者会見やインタビューのたぐいは、特定の一部分だけを切り出して、センセーショナルに報道される傾向があります。ですから、読み手のわれわれも、マスコミの情報操作に乗せられることなく、冷静な判断が求められます。 とは、言うものの・・・、上記のやりとりは誤解を与える可能性が極めて高い、危険なやりとり、と言わざるをえません。

 

上記のやりとりを見た外国人が、ごく普通に抱く印象は、以下のようなものでしょう。

 

(1)   本社がある母国(日本)において法令違反を犯した企業が、海外は問題ない、と言ってみたところで、それを信用しろ! ちゅうのは、無理がある

(2)   燃費計測の現場に立ち会うA国が当たり前なのであって、日本の当局は、そんなこともしないのか? → 日本の製造業における ガバナンス とは、こんなにレベルが低いものなのか?? 日本の製造業って、本当に大丈夫???

 

(2) については、アメリカ人の同僚から指摘されたものです。ま、そう思われても仕方ないわけで、グローバル的視点では、そういう烙印を押されているということを、われわれ日本人は理解しなければなりません。

 

昨年、同じようなことが、ドイツの大手自動車メーカーでも起こりました。こちらの方は、ある計測をするソフトが法令違反だった、というものです。実は、ドイツと日本の自動車メーカーが陥った問題の原因、その根本は全く同じ原理で起こっています。一方、アメリカやイギリスの企業は、そういう問題は起こりにくい。なぜか?それは、法律に関する考え方の違いに求められます。続きは、次回のコラムでお話しすることにいたしましょう。

(次回続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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