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タカシの外資系物語

“ソフトパワー” を売り込むために日本人がすべきこと (その1)2016.01.12

安倍首相が頻繁に会っている要人とは?!

 

最近、安倍首相が頻繁に会談を持っている海外の要人はだれでしょう? それは インドのモディ首相 です。私が把握しているだけでも、ここ半年で5回以上の face to face 会談が実施されています。

安倍首相の目的は、日本の新幹線をインドに売り込むということ。トップセールスの甲斐あって、このほどインド西部の高速鉄道計画への日本の新幹線方式の採用が、両者で合意されました。

新幹線方式の海外輸出は、2007年に開業した台湾に次ぎ、2例目となります。インドネシアの高速鉄道計画は中国に受注をさらわれていただけに、今回のニュースは日本人として大いに溜飲が下がる思いです!

 

さて、日本の新幹線はスゴイ!と言われますが、具体的に何がすごいのか? ・・・なんていう問いかけをすると、多くの日本人は、「技術がスゴイ!」と答えます。しかし、これは違う。“技術” というのは、何らかの 結果 を成り立たせるための 要素・要件・手段です。なので、ここでは 優れた 技術を用いて、どのような 結果 を導いているか? つまり 結果 の方を答える必要があります。

 

今回のコラムの内容にも関係するので、少し補足しておきますと、日本人は 手段 と 結果 を混同しがちです。例えば、最近のIT業界のトピックスに “クラウド(※)” というのがあります(※データやアプリを自分のPCや携帯ではなく、インターネット上に保存しておく方法・サービスのことです)。 “クラウド” は 手段 ですから、何らかの 結果・目的 のために使われます。

 

(手段) ・・・ クラウド

 

(結果・目的) ・・・ コスト削減、拡張の柔軟性、リスク低減(自分のPCや携帯は、紛失する)

 

「わが社は、コスト競争力強化戦略の一環として、クラウドを活用する」という経営戦略はありえます。一方で、「わが社の クラウド戦略 は・・・」というのはありえません。これでは、クラウドを導入することが目的になってしまいます。しかし、日本の有力企業の一部において、「クラウド戦略」という言葉が跋扈しているのです。なんやねん、それ・・・(T-T) 

おそらくそういう企業では、会議をすること が、目的になっている可能性がある。会議は、何かを決めるための手段です。他の代替手段を用いることで、何かが決まれば、わざわざ会議なんてしなくていいのです。日本人が働きすぎることの遠因に、手段 と 結果 の混同が多いに関係しているように思うのは、私だけでしょうかね・・・?

 

日本人の勤勉さを支えるものとは?!

 

話を戻しましょう。日本の新幹線は、何がスゴイのでしょうか? 

 

それは、「安全性」 です。

 

最新技術の粋を集めた車両機器や駅構内の設備、山手線並みの分刻みダイヤをこなす運行技術、ほとんど揺れない快適な乗り心地 等々、強みを上げれば色々あるでしょう。しかし、これら技術は一義的には、「安全性」という大前提を支える 手段 に他なりません。操業以来、1人の死亡事故も出していないという「安全性」を満たした上で、それ以外の観点においても世界一の技術品質を持っている、これこそが日本の新幹線のスゴイところだと思います。

 

では、安全性 というのは、技術だけで成り立っているのでしょうか。答えは否です。どれだけ優れた技術・機器を用いたとしても、ちゃらんぽらんで適当な運用をしたのでは、安全性 は担保できません。JR職員各位の規律ある仕事ぶりは当然のこと、新幹線のターミナル駅に関与する全ての人が安全性に留意するとともに、乗客であるわれわれのモラルも高い。これらの要素があってこそ、技術が十二分に発揮され、高い安全性が実現できるのです。

インドのモディ首相も、このことには注目されているようで、契約合意には、インドで高速鉄道運営に携わる人材育成での協力も盛り込まれています。また、日本側がインド鉄道省職員への訓練や、留学生受け入れも実施する予定とのこと。日本の強みを理解した、非常に的を射た契約内容だと思います。

 

一般に、技術・機器を ハード、運営方法・ルール・モラル・規律を ソフト と呼びます。少し前にブームになった、「おもてなし」 というのも、ソフトの一種ですね。

日本の強みというのは、ハード はもちろんのこと、実は ソフト もかなり強いということではないでしょうか。これまで、ソフトの多くは「勤勉な国民性」という曖昧な表現でしか言われてこなかったものですが、いくら勤勉で真面目だったとしても、放置プレイでは上記のような安全性は確保できないと思います。そこにはマニュアルや教育体系という目に見えるものから、落ちこぼれをカバーする互助制度、ルーティンに文句を言わない耐性なども含まれます。反復作業に文句を言わないのは、小学校の頃にやった計算ドリルが間違いなく役立っている。つまり、日本社会が持つ高度な 仕組み が、真面目で勤勉な国民を、さらなる高次元に引き上げているのです。

 

東南アジア諸国の国民も、真面目で勤勉だといわれます。しかし、それら多くの国では、ハードを生み出す技術力が低く、ソフトを引き出し維持する社会的な仕組みがない。日本との差異は、そういうところだと思います。

 

日本流! グローバルへ売り込め!!

 

安倍首相はじめ、官邸筋を中心に、

 

「日本のソフトパワーを海外に売り込め!」

 

というスローガンを展開しています。私はこの戦略は正しいと思います。「いいモノを作れば、黙っていても売れる」という時代は終わりました。一方で、トリッキーなマーケティング戦略は、日本人の得意とするところではありません。安倍首相の言う通り、日本のソフトパワーは世界一の部分がたくさんあるわけですから、技術力に加えて、それをアピールすればいいのです。

 

日本が官民一体となって、ソフトパワー をグローバルに売り込む上で、超えなければならない ハードル があります。この ハードル、結構 “強敵” でして、多くの日本人が意識改革をする必要がある。その手始めが、前述の 結果と手段の混同をやめるということなんですが・・・ 次回のコラムでは、私が実際に経験した事柄をベースに、日本人に求められる意識改革の内容をお話したいと思います。

(次回続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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