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タカシの外資系物語

ノーベル賞W受賞!に思う、日本人の “弱点” とは?!2015.10.13

ノーベル賞受賞者が持つ “条件” とは?!

 

みなさん、うれしいニュースが入ってきました! 今年度のノーベル賞、医学・生理学賞を北里大特別栄誉教授の大村智さん(80)、物理学賞を東京大宇宙線研究所長の梶田隆章さん(56)がそれぞれ受賞されましたーーっ!! いやぁ、自然科学系のダブル受賞ということで、科学立国日本、ここにあり! を世界に示すことができました。本当に素晴らしい!!!

 

前の政権で、「2位じゃダメなんですか?!」と真顔で詰め寄った議員がいましたが、あのときは本当にガッカリしました。ダメなんです!(キッパリ) 科学技術に関しては、「1位総取り」みたいなところがあって、1位 と 2位 では雲泥の差がある。こと、ビジネスについて言えば、特許を取ったもん勝ちですからね。かりにも国政をあずかる立場の人が、そのようなことすらわからない時点で、レベルがわかる。また、取り巻きのブレーンも悪い。この議論が起こったとき、「1位でないことのデメリット」を、理路整然と話す人は、いなかったように思います。短期間であれ、未熟な政治によって、国の “資産” が大きく損なわれそうになったことについては、本当に残念でなりません・・・

 

話を戻しましょう。ノーベル賞を受賞する上で、欠かすことができない “条件” とは何でしょうか? まず 「独創的・画期的な発想」、これは絶対条件ですね。では、次に重要なことは?

 

私は、周囲を巻き込み、事案を推進していく力、いわゆる 

 

PM(プロジェクト・マネジメント)力

 

ではないか、と考えています。ノーベル賞受賞者は例外なく、PM力 がハンパなく強い! 

 

例えば、医学・生理学賞を受賞した大村先生の場合、自身が発見した学術的成果を実用化するために、企業から積極的な資金援助を得る方法を確立しました。一言でいえば、「産学連携」なんですが、大村先生の特筆すべき点は、それを日本で初めて行ったところにあります。それもこれも、成果としての医薬品を、少しでも早く途上国に届けるための手段なわけで、科学者であると同時に、スーパーPMだといわれる所以は、正にこの点にあるわけです。この方法は、「大村方式」と呼ばれ、今や、産学連携モデルのスタンダードになっているようです。

また、物理学賞を受賞した梶田先生の場合、その受賞理由である 「ニュートリノ振動」 は、故戸塚洋二・東京大特別栄誉教授が率いる国際共同プロジェクトで発見され、梶田先生は実験のまとめ役として、推進をリードされたとのこと。ここにも、スーパーPMとして、卓越したリーダーシップを垣間見ることができます。

 

「PM力」を軽視する日本

 

ノーベル賞受賞者には、「独創的な発想」 と 「PM力」 が欠かせない・・・ このことは、当たり前のようですが、日本では少し勘違いされている。それは、「独創的な発想力」にばかり注目が集まり、「PM力」が軽視される傾向にある、ということです。

 

私は今回のノーベル賞に関して、アメリカと中国の友人と話をしましたが、いずれも、受賞者の 「PM力」 について、大いに議論が盛り上がりました。特に、大村先生の 「大村方式」 はアメリカでは有名なようで、その友人は、「Dr.大村の最も偉大な功績は、“大村方式” を考案したところだ!」と言い切っていました。もちろん、その裏には、大村方式によって多くの命が救われたことが前提としてあるわけですが、確かに、大村方式がなければ、どんなに偉大な発見をして、それが多くの命を救うポテンシャルがあったとしても、宝の持ち腐れで終わった可能性もあるわけでして、そういう意味では、アメリカ人の友人がいうのも一理あるといえます。

 

一方、当事者たる日本では、どのマスコミ報道を見ても、友人との会話においても、「独創的な発想」ばかりが脚光を浴びているように思います。ノーベル賞というのは、天才と呼ばれる人が、たゆまぬ努力で新しい理論を発見して、それで終わりなのか? いやいや、そんなことは絶対なく、むしろ大変なのは理論を発見してから・・・、なのであって、それを一般化して世に送り出すことも、発見と同様に、もしかすると、自分ひとりでは成し遂げられないという意味では、それ以上に難しいのではないでしょうか。

 

私はここに、日本人の特性を見出します。それは、「PM力」を軽視する = 「PM力」が弱い ということ。日本企業、例えばSONYがどうして iPodを発明できなかったのか? それは、「スティーブ・ジョブズがいなかったから」 ではない! 推察にすぎませんが、私はSONY社内にも、スティーブ・ジョブズと似たような発想を持った人はいたのだと思っています。では、どうしてSONYはiPodを発明できなかったのか? それは、商品化を推進する 「PM力」 が欠けていたからなのだと思います。逆に、ウォークマンの時代には、「PM力」 が存在した、ということでしょう。学界、財界問わず、「独創的な発想」 とは、 「PM力」 という裏づけがあってこそ成り立つものなのではないでしょうか。

 

「地方大学出身者が頑張っている」論について

 

最後に1つコメントします。今回のノーベル賞報道では、「地方大学が頑張っている」たぐいの話もよく聞かれました。これは、大村先生が山梨大、梶田先生が埼玉大の出身であることを受けてのものでして、近年の受賞者を見ても、平成24年受賞の山中伸弥京大教授(医学・生理学賞)が神戸大、昨年の中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(物理学賞)が徳島大の出身であることも影響しています。これまでは、ノーベル賞といえば、東大や京大など、旧帝大の出身者が 定番 だったのに・・・ という論調ですね。

 

これについては、

 

「(有力国立大より)重圧が少なく、のびのびと学べる雰囲気があるのでは・・・」 

「受験勉強の優秀さと研究者としての素質は違う!」 

 

などといった、もっともらしい 意見 が添えられています。で、よく見ると、そのコメントをしているのは、旧帝大の教授や文部科学省の官僚などの、おそらくは 東大出身者のみなさん(笑)。

 

確かに、そのようなこともあるのでしょうが、それ以前に1つ言えること。それは、

 

18,19の頃の、ほんの一時点の偏差値で、何もかもが決まるわけではない!

 

ということです。

 

私の経験則では、卓越した 「PM力」 を持っているのは、旧帝大の人よりも、私大や地方国立大の人の方が多い。ま、どっちが偉いという話でもない。役割分担をすることで、着実な成果を上げることが重要なのでしょう。さて、来年のノーベル賞では、どんな 「独創的な発想」 と 「PM力」 に出会えるのか、今から本当に楽しみです。では!

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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