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タカシの外資系物語

インド人CEOが続出する理由(その4)2015.10.06

ビジネスに “解答” はない! あるのは・・・?!

 

(前回の続き)昨今のグローバルビジネス社会において、なぜ インド人TOPが数多く輩出されているのか? 今回は、このテーマの最終回。と、本題に入るその前に・・・ 某ビジネス雑誌の 特集 について、軽く触れておきたいと思います。

 

先ごろ発売された日経ビジネス9/28号、その特集は 『インド人CEO世界を制す』 でした。フフフ、こういうの、うれしいんですよね・・・。え? 何がうれしいのか、って? しょーもない話なんですが、私の方が 先 だったでしょ、このテーマを取り上げたの! ま、後か先かはいいとして、変な先入観やバイアスなしに、一流記者の書いた記事 と 自分の考え を比較するのって、すごくエキサイティングなんですよ。 「ははーん、なるほどね、そういう観点もあるわな・・・」 「いやいや、それはないだろ!」 等々、納得したり、突っ込んだり、で めちゃくちゃ面白い!!

 

私は コラム書き を副業としている手前、他の人より少しだけ物知りだと思います。もちろん、意識して情報収集もしています。でもそれは多分、「47歳のおっさんとしては・・・」 という但し書きがつくものであって、20代の諸君には、やはりかなわない。いわゆる 情報リテラシー に比例して、獲得できる 情報量 は増えていくのは間違いないでしょう。

 

しかし、こと “考える” ということについては、今の若手は、質・量とも、圧倒的に不足していると思います。

 

「なぜインド人TOPが数多く輩出されているのか?」

 

でググれば、山のように検索結果が出てきます。しかし、それはその記事やブログを書いた人の 意見・考え であって、解答 ではありません。ネットに存在する玉石混交の情報を 編集 して、自分なりの結論を持つ。そうすることで、思考力が育成され、生身の議論に耐えられるようになるのです。

 

1つ面白い話をしましょう。最近、私のチームに新人さんがアサインされました。彼は、某日本で一番偏差値の高い大学を出ていて、確かに、勉強はよくできるようです。その彼が、答えを返すことを 解答、解答、と言うんですね。いやいや、ビジネスの世界では、解答 なんてほとんどなくて、それを言うなら 回答 だよ、と言ったら、ちょっと戸惑っていました。若手諸君、解答 ではなく 回答 を。そして、回答 と 思考 を繰り返して、自分の軸を作らないと、薄っぺらい人間になっちゃいますから、ご注意を! (“解答” と “回答” の違い、わかりますよね???)

 

世界一、ネットワークの強い国民は?!

 

私の考えを述べる前に、日経ビジネス記事に関する 書評 をしておきます。

 

やはりプロの記者が取材しているだけあって、実例が豊富で迫力があります。私も知らなかった事例も多く、特に 牧野フライス製作所 という工作機械の会社の話は面白かったです(みなさんも是非一読ください!)。

一方で、「なぜインド人TOPが数多く輩出されているのか?」 については、明確な回答がされていません。“インド人CEO Why?” という囲み記事がいくつかあるのですが、そこでも事実が書かれているだけで、深い考察はない。ま、ビジネス雑誌ですから、主な目的は 事実の提示 で、あとは読者自身が考えろ、ということなのかもしれませんが・・・

 

あと、少し誤解を与えそうだな、と思ったのは、“印僑” のネットワークはめっちゃ強い! のくだりです。確かに、それはそうなのでしょう。しかし、記事からは、「“印僑”のネットワークは、他の民族が入り込めないほど強い(≒排他的である)」というニュアンスで書かれています。

これはちょっと違うと思います。私の経験則では、インド人は個人主義で、全く群れません。インド人同士でビジネスのつながりができたのだとすれば、それは純粋に、是々非々で判断した結果だと思います。

 

ネットワークがめっちゃ強い! のは、中国人、つまり “華僑” でしょう。 これは相当排他的だと思います。

 

では日本人は・・・? 世界一群れますけどね、ネットワークが強いかどうか・・・。自虐的ですが、単に自信がないから集団で行動しているにすぎないようにしか思えません、トホホ・・・(T-T)

 

東大がTOPでなくなる日

 

なぜインド人TOPが数多く輩出されているのか? 私の回答は、インド人の 「極めて論理的、合理的に判断しつつ、意思決定は大胆にスピード感重視で進める」 という特性が、現在のビジネス環境にマッチしたから、というものです。これは、証明なしに数多くの公式・定理を発見した、インド人数学者 ラマヌジャン により例示されます。かつて、ラマヌジャンは西洋式評価のアカデミズムにより、学界から排斥されてしまいました。彼が今生きていたら・・・ 本当に残念でなりません。

 

教育 という観点では、IIT(インド工科大学)などのレベルの高さが有名です。IITにおいては、今や MIT(マサチューセッツ工科大学)を超えた! とも言われています。実際に、MBAの最高峰といわれる ハーバード・ビジネス・スクールの第10代学長を務める ニティン・ノーリア(Nitin Nohria)氏 は、IITを卒業後、MITに留学されていますから、IITが世界トップレベルであることは間違いないでしょう。

 

しかし、インドを見るときに、IITはすごい! と言っているだけでは、あまりに表面的すぎます。重要なのは、国がとった教育政策 が、うまくハマッた という点です。

インドの教育政策を一言でいうと、高等教育重視=エリート重点投資 ということでしょう。極めてレベルの高い大学を作って、そこで限られた少数のエリートに対して英才教育を与える。結果、そこで教育を受けた人材が、インドの政財界をリードする・・・ という仕組みです。戦後、多くの途上国はこのモデルを採用しましたが、成功したのは、インドや中国など、非常に限定的です。インドの場合は、初代首相のネルーがうまい舵取りをしたということ、中国の場合は、民主化後の急成長が制度を後押ししたという点が大きいと思います。

 

一方、日本の教育制度の大前提は、国民 “皆” 教育、つまり 義務教育の徹底 です。これによって、“一億総中流” といわれるとおり、国民全体の底上げをはかったわけです。日本の場合、識字率の高さなど、国民全体に基礎教育の素養があったことが大きいのと、インドのように10億人規模の国を運営する場合、日本と同様の政策は難しかったのでしょう。 しかし・・・ 私は日本に生まれて良かった、と思います。おそらくインドに生まれていたら、“一握りのエリート” に入ることはできなかったでしょうからね・・・。

 

昨年、日本屈指の進学校として有名な 灘高 を卒業した学生が、IIT(インド工科大学)に入学した、というニュースがありました。東大でもなく、MITでもなく・・・ というところがカッコいいですね。 『日本人CEO世界を制す』 という記事を読むのを楽しみにしながら、もちろん、私自身も 狙いたい と思っていますよ! では!!

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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