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タカシの外資系物語

タカシの夏休み日記(その4)~カーリー・レイ・ジェプセンの売り方②~2015.09.01

“鉄板” の テイラー・スイフト

 

みなさーん、夏休みはいかがでしたかー? さてさて、前回のコラムで出題した、“宿題” はやっていただけましたでしょうか? まだ! という方、10分程度で済みますので、是非宿題をやってから、本文をお読みください。面白さが全然違うと思いますので・・・

 

【宿題】 以下のミュージック・ビデオをYouTubeで観賞し、感じたことをまとめておく

  • ● テイラー・スイフト “Shake it off”
  • ● カーリー・レイ・ジェプセン “Call me maybe” “I really like you”

 

彼女たちをあまり知らない方もいらっしゃると思いますので、先入観がバイアスにならない程度に、ごく基本的な情報を記載しておきます。

 

・ 今最も売れている女性アーティストのトップ2。テイラー・スイフトは、最新アルバム 『1989』 が、全世界で500万枚の売上を記録。一方、カーリー・レイ・ジェプセンの “Call me maybe” も、ビルボード9週連続1位、2012年年間ランキング2位を記録。 要は、両者とも申し分ない実績を上げている! ということ

 

・ テーラー・スイフトは、カントリー歌手としてデビュー。前作 「Red」 より、POP色を強く打ち出し、大ブレーク。『1989』も発売当初より爆発的に売れている

 

・ 一方、カーリー・レイ・ジェプセンは、非常に長期間かけてスターダムにのし上がった。彼女の母国であるカナダのチャートにおいて、“Call me maybe” は、なんと、17週かけて1位になっている

 

・ 彼女たちは、日本をはじめとするアジア地区でも根強い人気を誇る

 

さて、ここで問題です! みなさんは、芸能プロダクション、ないしは、広告代理店で、アーティストの売り込みを担当しているとしましょう。みなさんなら、テーラー・スイフト と カーリー・レイ・ジェプセン のどちらを担当したいですか? (ちなみに、私は彼女たちの大大大ファンでございまして、どちらか一方に肩入れしているわけでは決してありませんので、誤解なきよう。あくまでも、マーケティング論における教材・事例として、客観的にお話しますので、ファンのみなさんもムッとこないようにお願いします!)

 

あくまでもビジネスとしての実績を上げる観点でいえば、私なら間違いなく、テーラー・スイフトを選びます。だって、鉄板でしょ、彼女なら・・・ まず間違いなく売れる。社長賞間違いなし! 

実際に、テーラー・スイフトの売り方は 王道 といえるものです。ミュージック・ビデオも正統派の作り。彼女の抜きん出た歌唱力、ビジュアルの良さが際立っていますし、少しとぼけたエッセンスを入れることで、とっつきやすい印象も与えています。

 

カーリー・レイ・ジェプセン を売るために何をするか?!

 

さて、一方の カーリー・レイ・ジェプセン ですが、彼女を売るために、みなさんなら何をするでしょうか? 

 

結論からいうと、彼女を売るために、スタッフが取った行動・手法は、本当に多種多彩。現代マーケティング論における、まさに 活きた教材 を見ているようです。ミュージック・ビデオだけでも、以下の工夫が見られます。

 

・ “Call me maybe” “I really like you” とも、ビデオのストーリー立てが非常に面白い。彼女のコミカルで愛らしいキャラクターを際立たせている

・ 特に、“I really like you” のビデオは、以下の点で極めて秀逸。

 ─  世界的俳優である トム・ハンクス を起用。卓球をするシーンは、彼の代表作でアカデミー受賞作でもある 『フォレスト・ガンプ』 の有名なシーンを彷彿とさせる。ついでに言うと、卓球 をモチーフにすることで、中国・日本を意識していることは明白

 

 ─  最後のダンスシーンで、アイドルの ジャスティン・ビーバー も登場。彼のファンを取り込むとともに、流行の最先端をイメージさせる(トム・ハンクス と カーリー だけでは、全体的に野暮ったくなるかも・・・)

 

 ─  “I really like you” の別バージョンでは、日本のタレント、ローラ と共演し、日本マーケットに訴求

 

 ─  これまた別バージョンの lyrics編 では、ビデオに歌詞の英文字が延々と出てきます。そもそも、この歌の歌詞は非常に易しい英語(日本の中学生にも十分わかる)なのですが、このlyrics編 を見ることで、英語ネィティブではない人が歌詞を覚えるのに有効なツールを提供している。対ヒスパニック、中国、日本などのマーケットに訴求

 

ビデオ以外でも、カーリーが来日した際、日本のTV番組にゲスト出演しまくるわけですが、この戦略もすさまじいものでした。朝の人気情報番組である 『スッキリ!』 を皮切りに(『スッキリ!』には、テイラー・スイフト も出演しました)、なんと、『バズリズム』という深夜番組(金曜24:30!)にまで登場する徹底ぶりでした。私は、ここまで露出にこだわる全米No.1歌手を知りません。これが功を奏したのか、カーリーによる日本のTV電波ジャック後、カーリーの新曲 “I really like you” および NEWアルバム 『E・mo・tion』 が日本で爆発的に売れることになるのです。

 

カーリー・レイ・ジェプセン のヒットを支える日本人アーティストとは?!

 

カーリー・レイ・ジェプセン は、アジア、とりわけ 日本 のマーケットを非常に重視しています。というか、多分、売りたいのは 中国 なんだと思います。いまや、日本以上のマーケットですからね。中国で売るためには、どうすればいいか? それは、「日本で売れるようにする」、これにつきます。エンターテイメントを中心とするコンテンツ・ビジネスにおいて、中国の若者が 「日本のものは、何でも、とにかく、カッコいい!」と考えてくれるフシがある。これも、クールジャパンの一種なのだろうと思います。

 

では、カーリーのスタッフは、日本で売るために、電波ジャック以外に何をしたのでしょうか? フフフ、ここからは相当な私見に基づく話なので、あまり突っ込まないでくださいよ・・・ ただ、アメリカ人、中国人の同僚・部下にこの話をしたら、「その通りだ! タカシはすごい!!」 と言ってくれました。よって、自信を持って話します! (「このおっさん、仮にもパートナー(役員)だろ・・・ 仕事しろよ・・・」と思われたかもしれませんが・・・。気にしないっ!)

 

それは、日本で実績のあるアーティストを ベンチマーク し、その人を徹底的に 真似る ということです。では、そのベンチマークとなったアーティストとは・・・?

 

aiko です

 

これ、間違いない! かなり、自信あります!!

 

【カーリー・レイ・ジェプセンが、aikoをベンチマークしたと言える根拠】

 ・  前提として、背格好が似ている カーリー=157cm、aiko=152cm (参考まで テイラー・スイフト=178cm)

 ・  ビデオでよく似たシーンがある ・・・ “Call me maybe” のビデオ中、 ガレージのようなところで、バンドをバックに歌うシーン が、aiko “ボーイフレンド” と酷似

 ・  衣装が似ている ・・・ 金太郎さん みたいな タンクトップの衣装が非常に似ている

 

私の自説はどうでもいいのですが、少なくとも、カーリー・レイ・ジェプセンを売るために、チームが必死になっている様は痛いほどわかる。結果、“女王” テイラー・スイフト と互角に戦っているわけですから、素晴らしい!

 

いいものを作れば、放っておいても売れる・・・ それはある意味正しいでしょう。例えば、大画面テレビにおいては、日本のメーカーは間違いなく、世界一の性能と品質を誇っていました。しかし! いくらいいものを作っても、それが売れる販路を作って、現地のマーケットに受け入れられる体制を整えなければ、世界の消費者は、買いたくても買えない。そもそも、その製品の存在を知らなければ、買えない。それをやったのが、SAMSUNGやLGだったわけです。結果、“王者” であったはずのシャープやパナソニックは、世界一の性能・品質を誇っていながら、凋落の一途をたどった・・・。本当に、皮肉なもんです。

 

“いいものを作る” こと以上に、“売る” ことを重視する。その観点で、アメリカのミュージック・シーンは、非常に示唆的な事例を提示してくれています。 ということで、このシリーズは、これにて閉幕といたします! では!!

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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