グローバル転職NAVI
(前回の続き) 「女性が体力的に劣ることが仕事に悪影響を与えるか、否か?」 今回のコラムでは、この問いかけに対する私なりの見解をお話しするとともに、性差(ジェンダー)とビジネス上の役割分担について話を進めたいと思います。
結論から言うと、女性が体力的に劣ることが仕事に悪影響を与えるか? という問いについては、“Yes” だと思います。 で、このような回答をすると、嵐のようなバッシングが来るのが目に見えているので、誤解を与えないように、真摯にご説明したいと思います。
なので、読者のみなさんも、そのように読んでください。
私が “Yes” と言っている条件として、以下の前提を置いています。それは、
① 「既存の男性優位社会において、男性と同じ評価基準しか与えられていない前提」
です。例えば、仕事の “成果” ではなく “労働時間の長さ” を評価基準とするような場合、当然のことですが、体力的に劣る女性は、男性に比して明らかに不利ですよね。
また
② 「家事・育児・親の介護は女性がするものだ、と旦那さんが考えている前提」
があると、①の前提をクリアするための労働時間を確保することすら、ままなりません。つまり、女性は、男性と同じスタートラインに並ぶことすら許されないわけです。
まずは、上記①②のような、時代錯誤も甚だしい前提を、多くの男性が改めることが必要です。
「そうはいうものの・・・、仕事がたまって、残業や土日出勤をしないと片付かないんだよ・・・」 そういう状況があることは理解しますし、ここぞというときには、土日出勤も必要でしょう。
しかし、その状況が常態化しているというのは、明らかにおかしい。会社の仕組み(プロセス)がおかしいか? 仕事のやり方がおかしいか? また、そういう状況が放置されるということは、「残業や土日出勤を評価する」 という考え方の土壌が根強く存在することを疑うべきです。
「残業や土日出勤をすることは、あなたの無能さを示していることと同じだ!」という考え方が浸透するよう、効率的な職場作り、性差を問題としない社風を作ることは、経営陣にとって最も重要な職務である・・・と、世の男性役員の何人が理解しているか? 私は日本人として、正直言って、自信がありません。みなさんは、いかがでしょうか?
以前、ロンドンで仕事をしていたとき、こんな経験をしました。クライアントのリーダーは、Pamela(Pamと呼ばれていました)という女性で、ケンブリッジ卒の才媛でした。頭のキレもさることながら、プライドの高さもハンパではなく、彼女への対応については、他のメンバーもかなり苦労をしていました。
ある日、私はたくさんの書類を両脇に抱えて、Pamと一緒に会議室に向かっていました(ちなみに、Pamは手ぶらでした)。会議室のドアに差し掛かったときのこと、彼女はドアを開けるでもなく、何もせずに突っ立っているのです。
私 「Pam、hurry up ! Meeting’s already begun !!」
私がいくら急かせても、彼女は何もしません。それどころか、私が “ある行動” をすることを、ずっと待っているのです。
(えーーー、そうくるか! マジかよ・・・。こんな状況なんだから、空気読んでくれよなぁ・・・)
“ある行動” とは何か? それは、私に 「会議室のドアを開けろ」 と言っているのです。私とて、英国流のマナーを理解していないわけではありません。普段なら、Pam様のために、鉄の扉でも、岩の扉でも開けましょうや。しかし、今は急いでいるのです! かつ、私は両脇に大荷物を持っているのです!!
私はPamに、「今回は勘弁してくれよーーっ(T-T)」と目配せして、懇願しました。しかし、Pamは動じません。仕方なく、私は両脇に抱えた大荷物をいったん廊下に置いて、Pamのために会議室のドアを開け、Pamを会議室に通し、ドアが閉まってしまわないようにドア留めをかまして、荷物を抱えなおしてから会議室に入りました。
会議終了後、私はPamを呼び止めて、話をする機会を設定しました。さきほどの出来事がどうにも納得いかなかったし、私だけでなく、他のメンバーも同じ思いをしているだろうということが容易に想像できたからです。つまり、Pamの個人的な問題なら、一言モノ申しておいた方がいいと思ったのです。
Pam 「タカシ、お疲れ様・・・。結構タフな会議だったわね・・・」
私 「あ、あぁ・・・ それはそうと、ボクの勉強不足で申し訳ないんだけど、どうしてもさっきのこと(Pamがドアを開けなかったこと)が理解できなくてさ・・・」
仲間が困っているときはマナーを多少無視してでも助けるべきだということ、プロジェクトの成功には、Pamの献身的な貢献が何よりも重要だということ・・・、拙い英語なので自信がなかったのですが、私は思いのたけを、Pamにぶつけてみたのです!
Pamは私の目を少しだけ見て、部屋に設置してある Tea Tableで紅茶を2つ入れ、1つを私に差し出しました。
Pam 「そうね、あれは失礼な態度よね・・・。イギリス人の私もそう思うわ・・・」
(なぬ?!)
Pam 「でもね、あれは タカシ のためにやったのよ!」
(にゃんですとーーーーーーーーーーーーーっ! 私のためーーーーーーーーーーーーっ!!)
次回のコラムでは、ヨーロッパ社会におけるマナーの本質をご説明するとともに、ダイバーシティのあるべき姿についてもお話したいと思います。ちなみに、このシリーズは次回で終わるつもりです・・・
(次回続く)
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1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。
みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。
書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ