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タカシの外資系物語

思い出してみましょう、あなたの “通学路”2014.08.05

    思い出してみましょう、あなたの “通学路”

    いきなり私事で恐縮ですが、うちの娘、この4月から小学校に通っています。私立の受験も考えたのですが、本人の能力もあり、これだけはいかんともしがたく・・・ ま、仕方なく・・・、というよりは、男女共学で、お行儀にもうるさくなく、かつ、給食が出てモリモリ食べられる(本人的にはこれが一番大きいようです)ということで、前向きな気持ちで地元の公立校に通っています。 
    ただ1つ難点があるとすれば、めっちゃ遠い! そもそも、あまり人が住まない繁華街に自宅があるものですから、近隣に小学校がないのです。結果、JRで2駅近く、子供の足なら1時間程度かけて通っています。うちの娘、お世辞にも機敏な方ではない(朝日新聞に連載されている 『ののちゃん』 を想像してください。あのまんまです・・・)ので、往復2時間の道のりはキツイのでしょうが、今のところは文句も言わず頑張っているようです。通学途上の安全確保はもちろんのこと、何か嫌なことがあったとき、遠距離通学に理由を挿げ替えて、不登校にならないように気をつけてやりたいと思っています。


    先日、 『世界の果ての通学路』 という映画を観ました。内容は、4人の子供たちがいかにして学校に通っているかということを記録した映したドキュメンタリーです。下手な演出は一切排除し、淡々と事実に徹しているので、観ている側も、大きく感情が揺さぶられるわけではありません。しかし、大抵の人は、見終わった時点でウルウル来ています(実は私も・・・(T-T))。それほど、考えさせられる、深い映画だということです。


    映画に出てくる4人の小学生は、以下の通りです(映画HPより、筆者まとめ)。


    (1) ジャクソンくん(11歳 ケニア 片道15Km : 2時間) ・・・ サムブル族の少年。長男であるジャクソンは、毎日、6歳の妹のサロメを連れて、野生動物が出没するサバンナを小走りで学校に通う。ケニアでは毎年、4~5人の子供が象の襲撃に遭い犠牲となっていて、兄妹にとっても野生動物は恐るべき存在となっている。 

    (2) カルロスくん(11歳 アルゼンチン 片道18Km : 1.5時間) ・・・ 牧場で暮らすカルロスは、5歳年下の妹のミカイラと一緒に、馬に乗って学校に通う。ふたりが乗る馬のキベリトとは大の仲良しだ。危険な通学路も、冷静沈着なキベリトがいるおかげで安心できる。 

    (3) ザヒラちゃん(12歳 モロッコ 片道22Km : 4時間) ・・・ モロッコのアトラス山脈に住むベルベル人のザヒラは、家族の中で初めて学校に行く世代だ。ザヒラは毎週月曜日の朝、夜明けに起床して、友達のジネブやノウラと3人で22kmの道を歩き続け全寮制の学校「アスニの万人のための教育」へ向かう。金曜日の夕方、3人の少女は同じ道を歩いて帰宅する。 

    (4) サミュエルくん(13歳 インド 片道4Km : 1時間15分) ・・・ 未熟児で生まれたサミュエルは足に障害があり、歩行不能だ。そのため、サミュエルの通学には2人の弟が急ごしらえのオンボロ車椅子に兄を乗せて、引っ張っていく。毎朝トラブルの連続だが、3人兄弟には困難を笑い飛ばす強い絆がある。


    特に、(4)のサミュエルくんとその兄弟には、胸を打たれます。サミュエルくんは、2人の弟に車椅子を引かれながら、ああだこうだと、常に兄弟喧嘩をしながら通学しています。でも、2人の弟は、サミュエルくんを決して見捨てたりしない。車椅子のタイヤがパンクしたら、民家に入り込んで、おじさんに至急直してもらうように嘆願するのです。一方、サミュエルくんは、この学校で一番学力が優秀で、将来は医者になる夢を持って、頑張っています。 
    サミュエルくん以外にも、ジャクソンくんはパイロット、カルロスくんは大学で農業の勉強、ザヒラちゃんは学校の先生になるという夢を持っています。

    真っ暗闇の中、家に帰る方法とは?!

    作家の曾野綾子さんが、講演会でこんなことをおっしゃっていました。曾野さんは、アフリカの途上国に学校を建てるというNPOの代表をされていて、ある日、実際に完成した学校を訪れたそうです。その際、教室に照明がなく、曇りの日などはあまりにも暗いので、担任の先生に、次のように言われたそうです。


    曾野さん 「先生、これではあまりにも暗いので、電気スタンドを購入されてはどうですか?」 
    アフリカの先生 「暗いですって? 明るすぎるくらい、これで十分です」 
    曾野さん 「でも、私はこの程度の明かりでは、字が読めませんよ。そして、視力も下がります」 
    アフリカの先生 「曾野さん、この子たちの視力は、4.0以上ありますし、休日は狩りの手伝いをして、遠くを見ているので、視力が下がることはありません。ご安心ください・・・」


    授業が終わると、外は日が落ち、既に真っ暗闇。街灯があるわけでもなく、家庭に電灯があるわけでもなく、自動車が走っているわけでもなく・・・、本当に漆黒の暗闇なのです。曾野さんは不安になって、再度、担任の先生に聞きました。


    曾野さん 「先生、外は本当に真っ暗闇です。恥ずかしながら、私は一歩も歩くことができません。この子たちは一体どうやって、家まで帰るんですか?」 
    アフリカの先生 「実は、この暗闇ですから、この子たちにも、どこに道があるのか、ほとんどわかりません」 
    曾野さん 「ええっ?!」 
    アフリカの先生 「でも大丈夫。曾野さん、空を見上げてください。星が見えるところと、見えないところがあるでしょう? 見えるところは、木が生えていないので、道です。見えないところは、木が生えているので、道ではない。そこまでわかれば、この子たちなら、家まで帰ることができます・・・」

    Big Issuesを解決できる子供たち

    みなさん、いかがでしょうか? 普通に学校に行って、勉強ができるということが、いかに幸せで貴重なことか・・・。


    誤解いただきたくないのですが、私は今回の話の結論として、


    「世界には通学するだけでも命がけの子供たちがいるのだから、日本人はもっと頑張らなければならない・・・」  
    「おちおちしていると、発展途上国の連中に追いつかれ、追い越されてしまう・・・」 


    といった、陳腐なことを言うつもりはありません。もちろん、そういう感情も湧いてくるわけですが、私はむしろ、上記で紹介した彼ら・彼女らの可能性に期待したいのです。


    戦後、民主主義(≒資本主義) vs 社会主義 という対立構図の中で、とりあえず、社会主義は失敗に終わったということになっている。しかし、勝者であるはずの、民主主義・資本主義は、果たして本当に成功しているのか。中国の爆発的な発展、それに続く新興国の隆盛は、結局のところ、欧米アングロサクソン的資本主義の後追いに過ぎません。本来、超長期的かつ組織的に対応すべき、環境問題や原発問題も、国レベル(下手すると、国レベルでも取り上げていない)に留まっています。人類の存亡がかかる問題にもかかわらず、だれも手を出さない。依然として、即物的なことばかり追い求める。 
    私は、現代資本主義に浸りきった人には、環境問題や原発問題のようなBig Issuesは解決できないと思っています。それができるのは、片道4時間かけて通学している子供たち、漆黒の闇の中、夜空の星を頼りに家に帰る子供たちではないでしょうか。戦後、かつての日本がそうであったように、天安門事件以降、開放策をとった中国がそうであったように、上述の小学生たちの “なにくそ、今に見てろ!” パワー が、きっと難題を解決してくれる。そのために、すでに成熟化した先進国は、目に見える形で、実効的な援助をすべきなのです。工業化を対象にしたODAではなく、教育に対して、援助する。これこそ、われわれ成熟国家の役割ではないでしょうか。人への投資、それこそ、人類にとって最もリターンが期待できるように思えてなりません。


    今回のコラムは、いつもとは違う雰囲気で、ちょっと雑感めいたお話をしました。『世界の果ての通学路』、みなさんも是非ご覧ください。では!

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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